~支え合う安心社会の実現に向けて~
朝日新聞厚生文化事業団は「福祉を支える地域づくり」「福祉を担う人づくり」「支援の輪づくり」を軸に社会福祉事業に取り組んでいます。

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寄付者様の横顔紹介

2016.6.6 大阪市阿倍野区の大阪深雪会

大阪深雪会合同展の安藤芳枝会長
(右から2人目)=大丸心斎橋店

布や針金などの素材を利用して造花を製作する「アートフラワー」。華麗な出来栄えは本物と見まごう。

大阪深雪会(安藤芳枝会長、会員数241人)では、毎年春に大阪市中央区の大丸心斎橋店で「大阪深雪会合同展」を開催している。今年の展覧会には143人の会員が製作した3300点の作品が展示され、会場はまるでフラワーショーに足を踏み入れたような華やかさだった。場内の一角には今年も「チャリティーコーナー」が設けられ、コサージュやアクセサリーなど150本の作品が出品された。売上のほぼ全額を1974年の会創設時から毎年、朝日新聞厚生文化事業団に寄付している。

アートフラワーは、故飯田深雪(いいだ・みゆき)氏(1903年~2007年)が考案したといわれている。夫が外交官だった関係から海外生活が長く、終戦直後の焼け跡の仮住まいで「何か日々の生活の励みになるものがあれば……」と、赤いガウンの切れ端を使ってコクリコ(ヒナゲシ)を作ったのがきっかけだった。これが友人たちに好評で、1964年には東京にアートフラワーを教えるスタジオを創設した。作品はすべて手作りで、布から花びらや葉の形を切り出して染色し、コテを使って曲げやしわなどを加える。バラ一本を作るのに花びらの染色から全体の形成まで丸1日かかると聞いた。

深雪会は東京をはじめ北海道、東北、名古屋、大阪、九州に会がある。会員数は約1600人。同会は、各深雪スタジオの卒業生が集まる「同窓会」的な組織で、会員同士の親睦を深め技術の向上を目指している。大阪深雪会は1974年に結成され、大阪市阿倍野区の「あべのキューズモール」にスタジオ兼支部がある。

飯田氏は生前、展示会を行う時は必ずチャリティ作品を出すようにと言っていたという。会長の安藤芳枝さんは「会員は展覧会用の作品だけでなく、必ずチャリティ作品も製作していて、いつも感心します。これからも飯田先生の精神を守っていきたい」と話した。

(大阪事務所・勝見文子)

2015.12.22 大阪市天王寺の近鉄タクシー

2015年末、大阪市天王寺の近鉄タクシー(平山晃社長、従業員約700人)から、朝日新聞厚生文化事業団に寄付金10万円が寄せられた。乗務員から寄せられた1年間の募金に、組合や会社からの寄付を合わせたものだ。

寄付は、大阪総合営業所をはじめ、南大阪、東大阪、南河内など4カ所の営業所に置いた募金箱で集めている。募金箱は、百円ショップに売っている金属製の缶(写真)。運転手さんや事務員たちが、飲料を買ったおつりなど小銭を折に触れて入れてくれるという。

業務部長の小谷和也さんは「ビニール袋にいっぱい入った小銭を持ってくる運転手や、たまにはお札を入れていく人もいます。みんな、何かの助けになれば、という気持ちで募金をしているのではないでしょうか」と話す。

今年5月には、近鉄グループおひざ元の三重県伊勢・志摩地方で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催される。グループ企業あげての取り組みが進むなか、近鉄タクシーも地域社会にさらに貢献できる企業を目指している。

(大阪事務所・勝見文子)

2016.1.13 橘ダンススクール チャリティークリスマスパーティー募金
東京・駒込 同スクールにて 橘 正幸(62)、弘子(59)ご夫妻

毎年年末に開く「チャリティークリスマスパーティー」で集めた募金を当事業団に寄付していただいている。パーティーの恒例イベントとして、番号札を買って参加するチャリティー抽選会を開いている。買った番号が当たると旅行券やグッズなどの景品がもらえる。その景品はスクール側で用意し、番号札を売った収益金を寄付に回す仕組みだ。

長年継続して寄付していただいていることへのお礼として事業団の感謝状を持って、東京都豊島区の駒込駅にほど近いビル9階にあるダンススクールを訪ねた。

当地に夫妻でダンススクールを開いたのは1992年。当事業団へ寄付を始めたのはその数年後のことだというから、もう20年近くになる計算だ。「こういうこと(寄付)をするのは当然だと思っていますから」。橘正幸さんは、あくまで謙虚だ。同ダンススクールでは、クリスマスのほか夏にも毎年パーティーを開いていて、こちらもチャリティーとして集めた募金を日本テレビへ寄付している。夫妻が日本テレビで社交ダンスを教えていたのが縁で、駒込にスクールを開いた直後から今まで続けている。当事業団への寄付も、スクールの生徒だった朝日新聞社の社員に当事業団を紹介してもらったのが始まりだという。

例えば、日本テレビの24時間テレビチャリティー委員会は、寄付を使って福祉車両を贈るのをメーンの事業の一つとしている。このように、寄付金が目に見える形になると分かりやすいのだが、当事業団は、いただいた寄付金を助成事業を始めとした社会福祉事業にいかしている。それだけに、どんな事業をしているか寄付していただいた方々へしっかり説明する必要がある、と自覚している。

昨年末のパーティーの席でも数分間時間をお借りして、当事業団の事業を簡単に説明したところ、約2百人の参加者は熱心に耳を傾けてくれた。スクールを訪ねた際も、事業団の活動を紹介するパンフレットをお持ちした。すると弘子さんから「ダンスで社会福祉に貢献できることはないか、考えているんです。アイデアがあったら教えて下さい」と聞かれた。その意志の高さに、本当に頭が下がった。

紹介が遅くなったが、夫妻はプロ競技選手として全日本オープン選手権で優勝した経歴を持つ。競技ダンスの世界最高峰とされる英国・ブラックプールの競技会へも10数年にわたり毎年のように出場した。実は、こうした競技ダンスの国際舞台に立ち続けるのは、金銭的な余裕がないとできないのだという。「これまで本当に良い経験をさせてもらった。それもダンススクールがうまくいっているからこそ。その感謝の意味でも、こうした寄付はこれからも続けたい」と正幸さんは話す。当事業団も、いつかご夫妻と一緒に社交ダンスを利用して社会に貢献する活動をしたい、との思いが胸に宿った。

(中塚 範之)

2015.12.16 高幡不動尊からの寄付
~川澄祐勝(ユウショウ)・貫主(84)に聞く

秩父の農家の出。僧侶の資格を取りたくてこの高幡山金剛寺の門を叩いた。2年くらいで終わると思っていた「修行」が、33年余り、先代貫主秋山祐雅(ユウガ)さんに叱られどおしだった。だが「それだけ叱られたからこそ、今の私があるんです」と川澄貫主。『叱られる幸せ』という著書もある。

朝日新聞厚生文化事業団へは、東日本大震災救援金として、この2年間だけで500万円ほどの寄付をいただいている。境内を歩くと、不動堂の前やお札所の中などに、「東日本大震災救援募金」と大書して寄付を呼びかける箱が置いてある。高幡不動は、本事業団だけでなく他の団体などを通じて寄付をしていて、同救援募金だけで昨年度までに16件、3千万円の寄付をしている。こうした募金活動は先代が、インドハンセン病撲滅のために始めた。平成9年以降、26種類の寄付、計96回、8370余万円の寄付を行っている。東日本大震災を始め阪神大震災、中越地震など国内の災害のほか、スマトラ沖地震大津波、アフガニスタン児童教育援助金、四川省大地震など海外にもよく目を向けているのが目をひく。

なぜ、このように寄付が集まるのか。川澄貫主は、檀家信徒とのふだんからの付き合い方が重要だ、と話す。先代からこう言われたことがあるという。

「なまじっかのお説教をするより、境内を綺麗にして、『お不動さんにお参りしたら気分が清々した』と言ってもらえるようにしなさい。それこそがほんとうの説教なんだ」。この言葉を川澄貫主なりに解釈して、一年中楽しんでもらえる寺、命の洗濯をしてもらえる寺、を目指している。3万坪余りの境内は、約25人の僧侶を始め、職員らの手で毎日掃除されている。「一年中楽しんでもらえる寺」の一環で始めたのが、境内に彼岸花を植える事業だ。高幡不動は300種類以上あるアジサイが有名。春の桜や晩秋の菊祭りでも知られるが、初秋の時期に観賞できる花がなかった。川澄貫主は彼岸花を植えることを思いつき、寄進を募ったところ、東京日野ロータリークラブから3万株あったほか、他の檀家信徒からも続々と寄進があり、すぐに6万株が集まった。今年8月5日に200人余りで植栽し、毎年お彼岸には見頃を迎えるだろう。

「浄財を浄所に」。先代が座右の銘としたこの教えを守り、これからもこうした募金活動は続けたい、と川澄貫主は話す。当事業団もその言葉に恥じない寄付先として、社会貢献につながる事業を進めるなど、より一層精進に励まなければ、と強く思った。