~支え合う安心社会の実現に向けて~
朝日新聞厚生文化事業団は「福祉を支える地域づくり」「福祉を担う人づくり」「支援の輪づくり」を軸に社会福祉事業に取り組んでいます。

朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 社会的養護で暮らす中高生へ。先輩学生からのメッセージ③

これまでの活動

社会的養護で暮らす中高生へ。先輩学生からのメッセージ③

分科会①-B「海外で仕事がしたい!」

講師:伊藤ヒロさん(米国Kids Hurt Too Hawaii)

ヒロさんってどんな人?

2歳の時に日本人とインドネシア人のハーフだった母と死別。3歳から15歳を養護施設で過ごしました。その後、全寮制の男子校に進み、スポーツに打ち込みます。大学時代にマイアミに住んでいた親戚にスポンサーとなってもらい、海外体験を重ねてアメリカ移住へ。現在は、アメリカ人の妻と喪失体験をした子どもたちをサポートする団体を立ち上げて活動しています。

ヒロさんからのmessage

自分の喪失体験と向き合うこと、グリーフケアをすることが大切です。社会に出てから、死別体験や喪失体験などとまた出会ったときに前向きに乗り越えられるし、喪失体験をしている人の支えになれます。また、夢を持つ、妄想することがとても大事。それは、大きければ大きいほどいいし、紙に書き出したり壁に貼ったりするのもいい。人に話して公言するのもいい。5年10年かかっても、いつの間にか達成していることがあります。

どうしてもポジティブになれない時は、ネガティブなものはシャットダウンして、人でもいいし、Youtubeでもいいし、ポジティブなものに触れることです。嘘でもいいから、自分はポジティブだと言い聞かせる。自然に触れるのもオススメです。大自然には、ネガティブな感情を解放してくれる力があります。

応援生に聞いてみよう!

Q1 将来は英語に関係する職業に就きたい?

A. 得意の中国語を活かして海外を拠点に観光業か、地元で地域を盛り上げる公務員に!

回答者:応援生Rさん/7〜19歳まで児童養護施設。中国語専攻の大学2年生。

A. システムエンジニアを目指していますが、海外の人とのお仕事がメインになると考えられるので英語を学んでいます。

回答者:応援生Nさん/16〜18歳まで児童養護施設。経営情報科学専攻の大学1年生。

A. 英語にも教育にも関心があるので、将来の夢は小学校、もしくは中高の英語教諭です。教壇に立つ前に民間企業で経験値を高めてから、先生になりたいと考えています。

回答者:応援生Kさん/1歳半〜高校卒業まで児童養護施設。語学、教育学専攻の大学1年生。

A. 高校時代にESSという英会話の部活に所属していて、イベントの翻訳などで人の役に立てた経験から、英語を使って人の役に立てる職業につきたいと考えています。

回答者:応援生Aさん/12〜18歳まで養護施設。英語専攻の大学1年生。

Q2 学生時代、英語は得意だった?

A. 中学時代に英語に関心を持ち、一番得意な科目だったので、高校で国際科に進学しました。周囲のレベルが高すぎて、ついていけず、一度は嫌いになりましたが、大学受験の時に関心があるのがやはり英語だったので、頑張って勉強をして、今また国際関係を専攻しています。

回答者:応援生Kさん/1歳半〜高校卒業まで児童養護施設。語学、教育学専攻の大学1年生。

A. 英語は唯一得意な科目だったので、大学も英語だけで受けられるところを選びました。倍率も高かったので、勉強を頑張りました。

回答者:応援生Aさん/12〜18歳まで養護施設。英語専攻の大学1年生。

Q3 大学進学にあたって一番苦労したことは?

A. 私立に行くと決めていたので、金銭面での心配がより大きかったです。施設の先生方が親身に給付型の奨学金のことなど調べてくれたことで乗り越えられたと思っています。

回答者:応援生Rさん/7〜19歳まで児童養護施設。中国語専攻の大学2年生。

A. 一番困ったことは学費です。大学進学後のお金は自己負担なので、高校1年の時からバイト代はすべて貯金していました。それでも足りなかったので、高校3年生の時に給付型の奨学金にたくさん応募しました。

回答者:応援生Nさん/16〜18歳まで児童養護施設。経営情報科学専攻の大学1年生。

A. 高校へ進学した時から大学進学は決めていたので、1年生の時から奨学金について調べたりアルバイトをしたりしていました。費用面で国立を目指したものの、同じ施設から大学進学した子がいなかったので、プレッシャーは感じていました。でも高校の友人たちはみんな大学進学を目指していたので、一緒に進学を目指して頑張ることができました。

回答者:応援生Kさん/1歳半〜高校卒業まで児童養護施設。語学、教育学専攻の大学1年生。

A. 親からの支援が受けられないことがわかっていたので、施設の先生からは始めは進学を認めてもらえませんでした。でも勉強を頑張って点数を取ったり、英語の資格試験を取ったりすることで施設の先生にも認めてもらい、応援してもらえるようになりました。

回答者:応援生Aさん/12〜18歳まで養護施設。英語専攻の大学1年生。

Q4 海外留学経験はありますか?

A. 大学1年生の時に1ヶ月半スコットランドに行きました。英語しか通じないという環境に身を置けたことは、貴重な経験になりました。

回答者:応援生Nさん/2〜19歳まで里親家庭。英語と日本語を学ぶ大学3年生。

A. オンラインで中国の大学に留学をしていて、アーカイブに残って復習がしやすいのはオンラインならではのよさですが、オンラインのやり方にも中国語にも慣れていないので、やりとりが難しいと感じることがあります。

回答者:応援生Rさん/7〜19歳まで児童養護施設。中国語専攻の大学2年生。

A. 大学時代にイギリスに留学をしました。就職を考える際にも留学経験が役立ったので、経験できてよかったと思います。

回答者:応援生Iさん/2〜20歳まで養護施設。国際コミュニケーション専攻。

Q5 里親さんや施設の職員などとの関係が難しいと感じた時、どう対応していましたか?

A. 施設の職員さんとうまく行かないことは多々ありましたが、私が何を考えているのか、相手の解釈が異なることからすれ違いが生まれることが多かったです。話し合いを避けていると仲直りもできないので、とことん話し合うことがおすすめです。

回答者:応援生Nさん/16〜18歳まで児童養護施設。経営情報科学専攻の大学1年生。

A. 職員さんとうまくいかない時は、大人と子どもというよりは、一人の人間と考えて、一旦冷静になって、頭の中を整理してから、またコミュニケーションを取るようにするとうまくいくように思います。

回答者:応援生Kさん/1歳半〜高校卒業まで児童養護施設。語学、教育学専攻の大学1年生。

Q6 大学進学をして一人暮らしをするメリットデメリットは?

A. 誰にも何も言われず、自分の自由に時間が過ごせるようになるのはメリットですが、自炊をしなくなるので体調管理が難しいです。

回答者:応援生Rさん/7〜19歳まで児童養護施設。中国語専攻の大学2年生。

A. メリットは生活力がつくことで、デメリットはお金がかかるので費用を貯めておく必要があることです。

回答者:応援生Aさん/12〜18歳まで養護施設。英語専攻の大学1年生。

Q7 留学費用はどのように貯めましたか?

A. 里親家庭で育ち、1年長く延長して大学1年まで里親家庭で過ごしたので、里親に先に費用を出してもらい、アルバイトをして少しずつ返済していくというかたちを取りました。かかった費用は、1ヶ月半で70万くらい。貯めるのも大変だし、先に払ってもらうのも大変ですが、行く価値があるので、お金で留学をあきらめてほしくはないと思います。

回答者:応援生Nさん/2〜19歳まで里親家庭。英語と日本語を学ぶ大学3年生。

A. イギリスに半年留学して、130万。元々大学の学費も免除で1/4負担だったのですが、留学も30万の免除と給付型の奨学金で行くことができました。しっかり勉強をして準備をしておけば、返済不要の給付だけで留学できるということもみなさんに知ってほしいです。

回答者:応援生Iさん/2〜20歳まで養護施設。国際コミュニケーション専攻。

A. オンライン留学は月7万円くらいで、元々お金を貯めていたのと、朝日新聞厚生文化事業団や他の給付も使って、まかなえています。

回答者:応援生Nさん/16〜18歳まで児童養護施設。経営情報科学専攻の大学1年生。

Q8 施設や里親家庭などで育ってよかったと思うことは?

A. 施設にいるといろんな奨学金情報が入ってくるので、自分で情報収集するよりも情報が集められるというのと、自立支援が充実していたので、すぐに一人暮らしに対応できました。

回答者:応援生Nさん/2〜19歳まで里親家庭。英語と日本語を学ぶ大学3年生。

A. 施設で過ごしてよかったと思うのは、人との出会いです。職員始め、イベントも多くて、一般家庭よりも出会える大人も多いし、応援してくれる人もたくさんいる。同じような境遇の子どもたちと年代を問わず過ごすので、つらいことも一緒に乗り越えていけます。

回答者:応援生Kさん/1歳半〜高校卒業まで児童養護施設。語学、教育学専攻の大学1年生。

A. 集団生活をする力がつくことです。

回答者:応援生Aさん/12〜18歳まで養護施設。英語専攻の大学1年生。

Q9 「展望」を抱き、それに向かう気持ちになったタイミング、きっかけなど。(終了後にメールで回答)

A. 私は中学生の初めの頃は英語が得意でしたが、中学三年の時の学校の英語の先生が合わず、定期試験で赤点を取ったり、高校に入ってすぐの模試で偏差値30を叩き出したりしました。私は学習面に熱を入れた里親家庭で育ったので、「進学は当たり前」の元、塾に通わせてもらっていました。その塾にいた英語の先生がとてもイケメンで、私の訳のわからない質問や普通は気にならない部分の疑問一つひとつに丁寧に答えてくれる先生でした。実際に、時間はかかりましたが英語が得意科目になったり、偏差値も60くらいまで上がったりと跳躍的に進歩しました。そんな先生みたいな人になりたいと思ったのと、その先生に「気になることは大学で英語を学べる学部に行くともっと追究できるよ」と言われたので、今の英語コミュニケーションという専攻に進みました。

A. 私は中学生の頃から将来の選択肢を広げるために大学進学することを夢見ていましたが、経済的な不安を抱えていて、進学に対して少し諦めていた部分もありました。しかし、そんな高校一年生の終わりごろ、自分を変えたいと思い、全国の児童養護施設の高校生が集まる人材育成プログラムに参加しました。そこでは、私と同じように虐待や親との死別など様々な困難や境遇を抱えながらも、逆境を活かそうとする前向きな人たちと出会いました。そしてその出会いを通して、夢見ていた大学進学を叶えたいと思い、自身で未来を切り開くことを決意しました。

A. 元々、英語や外国の文化が好きで、高校も国際交流が盛んな英語科に進みましたが、高校でいろんな文化や言語に触れ、さらに中国へ研修に行ったことがきっかけで、中国への興味が大きくなり、中国語を学ぶことを決めました。

A. 私は自分の境遇を受け入れることができたときに、今の夢が見つかりました。受け入れることができたきっかけは、児童養護施設に入所したことです。

Q10 近所の児童養護施設で、職員さんの声かけをしっかり聞いて遊ぶのを止める子どもたちを見て、聞き分けが良すぎて違和感を持ちました。児童養護施設などと直接関係のない一人のおばちゃんに、子どもたちのためにできることはありますか?またやらないでほしいことなどはありますか?(終了後にメールで回答)

A. 聞き分けがいいのは、施設など関係なく、どんな家庭でもありうることだと思います。その子どもの性格にもよるし、施設の職員さんを相手にしているからでもないと思います。そして「何かしてあげたい」と思っていただけるだけでとても嬉しいです。話しかけていただいたり、笑いかけてくださったりするだけでとても幸せです。過ごした環境は周りと違って特殊なのかもしれませんが、私たち自身はそれが当たり前の生活なので、周りとなんら変わりありません。

A. 児童養護施設の子ども達のために何かしてあげたいという気持ちを持ってくださっているだけでとても嬉しいので、どんなに些細なことでもありがたいです。しないで欲しいことはないと思います。

A. 稀にですが、施設というだけで嫌な言葉を浴びせてくる人がいたりして自分の生い立ちに負い目を感じてしまうことがありました。なので、帰り道に「おかえり」など話しかけてくださるだけで存在を認めてもらえた気がして嬉しかった記憶があります。

A. 児童養護施設にいる子を気にかけていただけるだけで、子ども達のためになっていると思います。私自身、施設の近所の方が挨拶してくださると嬉しかったです。やらないで欲しいこととしては、児童養護施設の中で、一部の子どもにだけ物を寄付することです。施設内でいじめの原因になる可能性があるためです。

Q11 将来への希望を持ち続けられた秘訣(終了後にメールで回答)

A. 私は学習面に熱を入れた里親家庭で育ち、里親がかなり計画的に勝手に私の人生設計をしており、よく分からなかったので、正直成り行きに任せていた部分が多くあります。楽しい時間もある一方で、精神的に我慢を強いられることも多々あり、多感な時期の高校生の頃は受験のプレッシャーも相まってかなり精神的に辛い時期ばかりでしたが、そばにいてくれる友人や周りの大人が支えになってくれました。話を聞いてくれる人の大切さは大学生になり、環境が変わった今も感じています。

A. 私の人生は大人の判断に振り回されることが多かったため、進路選択を機に、物事を自分で決めて未来を切り開いていきたいという強い思いを持っていました。また、英語が好きだったので、大学に行って専門的に勉強したいとか留学してみたいなど、やりたいことを常に思い描いていました。

A. 同じ歳の友人も夢に向かって努力しているのを見て、自分も頑張ろうと思えていました。

A. 私は将来を悲観したり、絶望したりすることがそもそもありませんでした。どんなに環境が変わっても、必ず助けてくれる人がいたからだと思います。

Q12 身近に相談できる人はいたか、その人はどんな声かけをしていたか。(終了後にメールで回答)

A. いました。里親があまり情報をくれる人ではなかったので、常に世界が閉鎖的だと感じていました。里親に自分の気持ちや考えの相談はしたくないし、何か言っても言いくるめられるのでできなかったし、周りに同じ環境で育った仲間はいなかったので、身近な距離感で信頼していた学習塾の先生や本当に仲のいい親友によく聞いてもらっていました。社会的養護の立場であることの悩みというよりも、里親への愚痴や不満、不安ばかりでしたが、みんな絶対に「あなたは悪くないから」と言ってくれるのが何よりの支えでした。

また、大学一年生の19歳の時は里親家庭にいるのがあまりにも精神的に辛く、養子縁組を勝手に考える里親への対抗策を練ろうと思い、2ヶ月に一回のペースで、一人で児童相談所の自分の担当の方とお話をする時間を設けてもらっていました。里親には言えない話ができる環境があるだけ、私自身ありがたかったです。個人的に、施設とは違い、里親家庭は家庭によって、相談しやすいと子どもが思える人が身近にいないことが多いのではないかと思います。

A. 最も身近な相談相手は、児童養護施設の担当の先生でした。具体的には、私は高校3年生の時、行きたかった大学に落ちてしまい、落ち込んでいた時がありました。そんな時に、担当の先生はいつもそばで私の話を聞いてくださりました。そして「自分で進んだ道なら、後で自分がこの選択をして良かったと思えるようにしていけばいいんだよ」と言ってくださり、立ち直ることができました。また、音楽が好きな先生で、受験期や一人暮らしを始めて寂しかった頃など、前向きになれる音楽をメールで送ってくださり元気付けられました。

A. 私は信頼できる職員の方と同年代の友達を相談相手にしていました。職員の方は、私が落ち込むと前向きな気持ちになれるように外に連れ出してくれたり、夜遅くまで話に付き合ってくださったりしていました。

A. 身近に相談できる人はいました。児童養護施設の職員さんです。その人から声をかけてくるより、私から話しかけに行くことが多かったです。特に、夜になると誰かと話したくなることが多いので、その時に「最近何かあった?」など聞いてくれると話しやすかったです。