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これまでの活動

フォーラム「認知症カフェからの出発2019」を開催しました

3月17日(日)、東京・浜離宮朝日ホールで、フォーラム「認知症カフェからの出発2019」を開催しました。

認知症のあるご本人やご家族のつどいの場という機能だけでなく、認知症のある人が地域で豊かに暮らすためのコミュニティづくりなど、様々な意義・目的が考えられる「認知症カフェ」。その活動を通して、認知症がある人も暮らしやすい地域づくりを考えるこのフォーラムには、約150人が集まりました。各地で様々な取り組みを実践している参加者のアイデアを持ち寄り意見交換をしながら、「認知症カフェ」の「継続」「発展」「連携」を切り口に、今後の可能性やこれから地域の中で果たしていくべき役割を考えました。

また、開催においては、「当事者の視点」を柱に据えました。認知症のあるご本人の声を大事に今後の活動を考えていくために、オープニングでは、認知症のあるお二人の方にご登壇いただきました。一人目は、50代で若年性認知症と診断されたピアノ教師の三川泰子さんに、夫の一夫さんとお二人が参加している「若年認知症交流会小さな旅人たちの会」理事長の高橋恵美子さんとともにご登壇いただきました。三川泰子さんは長年ピアノを教え、プロのピアニストとしても活動をしていましたが、病気の進行に伴い、以前のようにピアノを弾くことは難しくなりました。しかし、大好きなピアノを「もう一度弾きたい」という思いを強く持っておられ、少しずつ練習を再開するようになったと言います。一夫さんは趣味でチェロを長く続けておられ、お二人で練習をするようになり、様々なイベントでのお二人での共演も実現しました。このことが、一時は「生きていてもしょうがない」と思ってしまっていた泰子さんの自信につながったことや、日々の生活の中で実施している工夫について一夫さんが語りました。

続いて、東京都町田市在住の生川幹雄さんがNPO法人「ひまわりの会・まちの保健室」室長平田容子さんと一緒に登壇しました。生川さんは「ひまわりの会」が開催している、認知症のある人の「本人会議」に参加し、認知症の人と一緒に住みやすい地域をつくる町田市のまちづくりにかかわっておられます。また、講座や講演で自らの体験を語る活動にも力を入れています。当日は、認知症カフェの存在や、地域社会に望むことを、平田さんとの対談形式でうかがいました。生川さんは、「認知症のある当事者が聞きたいこと、話したいことはいっぱいある。認知症カフェは率直に相談できる場である」と話し、平田さんは「町田市のDカフェ(認知症カフェ)のようなオープンな場所で認知症のことを話していても、何の苦情もない。それがカフェを続けていることの成果だと思う」とまとめました。

その後は参加者同士の意見交換から新しいアイデアを得ることを目的に、ひとづくり工房ゑすこ代表、ワークショップデザイナーの浦山絵里さんの進行のもと、グループディスカッションを中心としたプログラムを展開。

「認知症カフェの継続と発展、地域での連携を考える」ワークショップでは、武地一・藤田医科大学教授と服部万里子・服部メディカル研究所所長による話題提供を受けて、認知症カフェの果たす役割やこれからの可能性をイメージした後、グループごとに、参加者が関心のあるテーマについて意見交換をしていきました。テーマは「①資金②人③場所④情報共有⑤プログラム⑥認知症のある人やその家族の参加⑦行政や他の地域資源との連携」。それぞれで出た意見を、「認知症カフェの活動を良い形で継続するための方略」として武地一さんがまとめ、これからの活動の土台となるアイデアがいくつも生まれました。

最後は、「認知症カフェ」の活動が地域に定着していくことで、それぞれの地域社会にどのような影響を与えられるかなど、「認知症カフェ」の先にあるものに目を向けたワークショップ。より良い地域社会をつくるために自分たちは何から始めるか、グループごとに宣言をつくり、次のステージへの出発となりました。

会場ロビーでは、事前に参加者の皆さんを通してお寄せいただいた「認知症のある人、そのご家族からのメッセージ」と各カフェで行っている工夫を一言でまとめていただいた「私の認知症カフェネタ自慢」のカードをひとつのポスターに貼り付け、桜の木をつくり、展示しました。全国各地の皆さんの思いがつまった桜の木が完成しました。

また、特別プログラムとして、「お試し認知症カフェ」を会場隣の築地浜離宮ビルの「フルーツパーラー コリント」で開催。
認知症に直面している当事者に利用していただける本格的な「認知症カフェ」を目指しながら、カフェの居心地の良い雰囲気と入りやすい開かれたカフェにするために、街中の店舗での開催にこだわりました。昨年に引き続き、「コリント」に多大なご協力をいただき、18年度も実現することができました。

東京都中野区の若年認知症交流会「小さな旅人たちの会」が開催している若年認知症カフェ「ちーたー広場」の出張版として、認知症のある方やそのご家族、ケアの専門家など、同会の皆さんが運営してくださいました。フォーラムのオープニングでもご登壇いただいた三川泰子さん、一夫さんご夫妻からもメッセージをいただき、お二人の温かさを感じた時間になりました。

このフォーラムは、当事業団が16年度17年度に実施した「ともにつくる認知症カフェ開設応援助成」の贈呈団体の皆さんと一緒につくってこうと、実行委員会を立ち上げました。江部乙まちづくりコミュニティ行動隊女子部(北海道)、鳩山ぽっぽ会(埼玉県)、うたせ認知症を考える会(千葉県)、青山1000人会(兵庫県)、甲佐オレンジカフェ連絡会(熊本県)の5団体にご協力をいただき、企画から当日の運営までを行いました。

フォーラムの前日、3月16日(土)には、当事業団の助成金贈呈団体を対象にした研修会を開催。社会福祉法人大阪ボランティア協会常務理事の早瀬昇さんを講師に招き、ミニ講座「『参加の力』を活かして活動の輪を広げよう」と、「認知症カフェ」を継続、発展させていくうえで「大切にしたいこと」を掘り下げるワークショップを行いました。21団体の36人が参加し、活発に意見交換を行い、グループごとに、目指すべき方向と、それに向かって大切にしていきたいことをまとめました。

例えば、「参加者が誰でも主役になれるようにする~参加者の声を聴き運営に活かす」「地域の既存団体との連携を大切にする~広く地域の協力を得る」「認知症への抵抗感を和らげ、理解を広める~小中学生と共に学ぶ、まちのみんながサポーター」「継続する努力、工夫を重ねる」などの意見が出されました。

当事業団では、認知症になっても住みなれた地域で暮らせる、そんな社会の実現へ向けた取り組みを、これからも様々な形で行っていきます。