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これまでの活動

フォーラム「認知症カフェからの出発2020」を開催

2月2日(日)、朝日新聞東京本社・読者ホールで、フォーラム「認知症カフェからの出発2020」を開催。遠くは北海道や長崎県五島列島から約120人が集まりました。

このフォーラムでは、「『認知症カフェ』のありようを『認知症になっても安心して暮らせる地域』に広げていくために」ということをキーワードに、認知症カフェの意義を確認するとともに、活動を継続するうえで大切にするべきことや、今後の可能性、地域づくりに必要なネットワークを、講義や対談、グループディスカッションなどを通して考えました。

プログラムは、以下の通りです。

オリエンテーション
オープニング ●「認知症カフェについて考えること」
矢吹知之さん(認知症介護研究・研修仙台センター研修部長)
●「よりよい暮らしをつくっていくために」
平みきさん(レビー小体型認知症のある当事者)のメッセージ 代読・鈴木和恵さん(株式会社ゆずり葉の会代表取締役)
話題提供 「本人会からヒントを得る~本人の社会参加と発信する力」
浜井秀子さん(相模原市若年性認知症家族の会じゅりの会事務局長)、中島珠子さん(渋谷区若年性認知症の会マリエ代表)/進行:中澤まゆみさん(ノンフィクションライター「認知症カフェ」主宰)
対談 「武地さん、矢吹さんに聴く『認知症カフェ』のありようを、『認知症になっても安心して暮らせる地域』に広げていくために」
武地一さん(藤田医科大学医学部認知症・高齢診療科教授)、矢吹知之さん/進行:中澤まゆみさん
ワークショップ① 「『認知症カフェ』で大切にしたいこと」
武地一さん、矢吹知之さん
ワークショップ② 「認知症カフェからの出発~ネットワークを考える」
● 話題提供
● グループディスカッション

中澤まゆみさん
クロージング 武地一さん、服部万里子さん(服部メディカル研究所所長)

オープニングでは、認知症介護研究・研修仙台センター研修部長の矢吹知之さんが、「認知症カフェ」の課題にも触れながら、地域の中で認知症のある人、その家族、地域住民、専門職が同じ場を共有し、語ることはなぜ重要なのかを問題提起。認知症カフェの独自性と多様性のバランスを見つけられれば、とフォーラムの目標を述べました。

その後、認知症のあるご本人の声や、「本人会」を運営している、相模原市若年性認知症家族の会じゅりの会事務局長浜井秀子さんと、渋谷区若年性認知症の会マリエ代表中島珠子さんのお話しをもとに、「認知症になっても安心できる地域」について、参加者とともに考えました。

レビー小体型認知症のある当事者でもある平みきさんは「迷うことを恐れずに外に出られる地域にしてほしい」「認知症カフェに出ていくには準備がいる」とのメッセージを、フォーラムに寄せてくださいました。矢吹さんも「認知症カフェにお誘いするからには、安心して外出できる提案も一緒にすること」が必要だとコメントし、「認知症カフェ」の中だけのことではなく、環境づくりも一緒に行っていくことの大切さにあらためて気が付いた時間となりました。

ノンフィクションライターで、認知症カフェを主宰している中澤まゆみさんの進行による、武地一さん(藤田医科大学医学部認知症・高齢診療科教授)と矢吹知之さんの対談では、「サロン」と「認知症カフェ」の違いや、認知症カフェの役割について、武地一さんは、「敷居が低いことは大事」だとしたうえで、「なんでもありではない。『認知症カフェ』という形、理念がきっちりしていることが大事」と述べ、認知症への理解がきっちりあるかどうかをポイントにあげました。

矢吹さんは、「診断前の不安な時に、専門職につながれる場所であることも役割のひとつ」とし、形やビジョンについて、「認知症に対する偏見や暮らしにくさを解決していく場所。認知症のある人や家族介護者、地域の中にある課題を解決していく方向性がビジョンになるのではないか。目的が明確であれば、形も決まってくる」「ここに地域の人が入ることで、地域が変わっていく」と述べました。

武地一さん
矢吹知之さん

認知症になっても安心して生活できる地域をつくっていくための、「認知症カフェ」の意義や理念、独自性について、考えを深められたところで、次のワークショップに入り、自分たちが運営する「認知症カフェ」が、今後、どのような役割を果たしていけるのか、個人での振り返りとグループでの意見交換を通して考えました。

出された様々な意見の中から、グループの中で共通していることを見つけ、認知症カフェがどのようなものであったら良いか、そして、それを実現するために、何を大切にしていくのか、グループごとに明文化し、19の宣言がうまれました。

その「認知症カフェ」のありようを、社会に広げていくために必要なことを探っていく、次のワークショップでは、中澤まゆみさんに、「認知症カフェとネットワーク」というテーマで、中澤さんが共同代表を務める、「ケアコミュニティせたカフェ」の例をお話しいただいた後、各地域の中で、どのようなネットワークをつくり、どのような地域をつくっていけるのか、グループごとに考えていきました。

「地域の困りごとを発信していける環境を学生が主体となってやっていきたい。学生は地域に入って困りごとを聞いていくことで、ネットワークができていくのではないか」などの意見が出されました。中澤さんからは、「支えあう共生社会の一歩を認知症カフェがつくれれば」とのメッセージをいただきました。

最後は、服部万里子さん(服部メディカル研究所所長)が1日を振り返り、「認知症に対する理解を深めたうえで、認知症のあるご本人の困りごと、家族が向き合っていく中での課題、そのことに地域みんなで向き合っていく社会にすることが共通のテーマである。認知症の人のネットワークは、隣近所、警察、医療機関、地域包括支援センター、生活支援コーディネーターなどあらゆる人が入り、横のつながりをもつことが必要だと再認識した」と話し、今後は「どのように継続させるか、ネットワークをどのように広げていくのかが課題。このフォーラムで論議したことを、地域に持ち帰り、それぞれが発信していってほしい」と、参加者へエールを送りました。

武地さんからは「認知症カフェは、認知症とともに生きていくこと可能にする役割を持っているのではないだろうか」とメッセージをいただき、フォーラムは終了しました。

また、2月1日(土)には、当事業団で2016年度、17年度に実施した「ともにつくる認知症カフェ開設応援助成」の贈呈団体のうち21団体が集まり、これまでの活動の実践発表と、大阪ボランティア協会理事長の早瀬昇さんによるワークショップ「市民が主役のまちづくり~参加と協働、継続のための‟資源"の活用」を行いました。

ワークショップでは、活動を継続していくたの「資金」に注目し「ファンドレイズ力を高めよう」をテーマにした講義のほか、自分たちのカフェの「ステークホルダー分析」を行い、周囲の関係者に働きかける「企画」を考えるワークショップを行いました。

早瀬昇さん

当事業団では、認知症になっても住みなれた地域で暮らせる、そんな社会の実現へ向けた取り組みを、これからも様々な形で行っていきます。

このフォーラムでは「フォーラム認知症カフェからの出発2020」実行委員会を立ち上げ、開催しました。参加してくださった、江部乙まちづくりコミュニティ行動隊女子部(北海道)、鳩山ぽっぽ会(埼玉県)、 うたせ認知症を考える会(千葉県)、住まい・まち研究会(千葉県)、青山1000人会(兵庫県)、ダイヤモンドクラブ(岡山県)の6団体とともに、企画から当日の運営までを行いました。

グループでまとめられた19の宣言

  1. 「偏見のない社会づくり」を目的に、「だれでもいつでも来られる場所であること」を大切にし、「認知症になっても安心できる場づくり」を行います。
  2. 「住み慣れた地域で安心して暮らすこと」を目的に、「一人一人の声」を大切にし、「多世代・異種混合の場づくり」を行います。
  3. 「地域とのつながりを持ち安心して生活できること」を目的に、「一人一人の想いと地域の力」を大切にし、「あらゆること」を行います。
  4. 「認知症のことをよく知ってもらい、認知症になっても安心して地域で暮らし続けられること」を目的に、「その人を大切にすること(尊厳)、気持ちに寄り添うこと」を大切にし、「安心して話せる・話しを聞く居場所づくり」を行います。
  5. 「誰にとっても住みやすい街づくり」を目的に、「想いに耳をかたむけること」を大切にし、「いつでも笑える場の提供」を行います。
  6. 「地域と本人、家族がつながる居場所づくり」を目的に、「誰もが参加したいと思える雰囲気づくり」を大切にし、「開催の継続」を行います。
  7. 「認知症に親しみ、本人が安心する場所」を目的に、「思いやりのあるコミュニケーション」を大切にし、「地域等への相互発信」を行います。
  8. 「だれもが安心して暮らせる」を目的に、「人と人のつながり、思い」を大切にし、「絶対なくならないカフェ」を行います。
  9. 「認知症の理解をすること」を目的に、「1人1人のつながり」を大切にし、「お互いさまの地域づくり」を目指します。
  10. 「誰でも自分らしく暮らせる地域づくり」を目的に、「認知症カフェの理念と協働の精神」を大切にし、「笑顔とやさしさを持った楽しい居場所づくり」を行います。
  11. 「ワンチーム(誰もが集える)」を目的に、「人とのつながり」を大切にし、「継続するカフェづくり」を行います。
  12. 「高齢者の生きがい」を目的に、「人とのつながり」を大切に、「楽しめる空間の提供」を行います。
  13. 「認知症になられても、なられなくても、安心できる場」を目的に、「笑顔と優しさ」を大切にし、「地域のつながり」を行います。
  14. 「地域で誰もが安心して暮らせること」を目的に、「本人、介護者の気持ちを大切にし、本音で語れる場づくり、人と人とのつながり」を大切にし、「行政への多職種提言、必要なサービスへつなげる、やりがいを支える、無理せず楽しい時間づくり、偏見が少なるなるような働きかけ」を行います。
  15. 「認知症の人の居場所づくり」を目的に、「人と人とのつながり」を大切にし「地域の人々の交流の場づくり」を行います。
  16. 「誰も来られる集いの場」を目的に、「笑顔」を大切にし、「何でも話せる雰囲気づくり」を行います。
  17. 「認知症になっても安心して笑顔で暮らせる地域づくり」を目的に、「本人と家族の思い」を大切にし、「誰もが楽しく生活できるサポート」を行います。
  18. 「誰もが安心して住み続けられる」を目的に、「想いや心」を大切にし、「信頼されるカフェの継続」を行います。
  19. 「認知症に対する理解と共生」を目的に、「本人、家族、地域との交流」を大切にし、「皆が対等に楽しめる居場所づくり」を行います。