これまでの活動
社会的養護で暮らす中高生へ。先輩学生からのメッセージ⑤
分科会②-B「アーティストになりたい!」
講師:松本哲也さん(シンガーソングライター)
- 哲也さんってどんな人?
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祖父母宅で暮らしていましたが、小学1年生の時に保護されて、養護施設へ。ギターとの出会いは、施設の保父さんが弾いていたフォークギター。中学1年の時に家庭に戻るも、母とは一緒に暮らせず、またも祖父母宅に預けられました。3000円くらいの壊れかけのギターを買って、独学で弾きまくりました。感情を表してくれるギターにどんどんのめり込んでいきました。施設では日記を書かされていたので、その習慣が続いていたのですが、日記に綴ったことを音に合わせたら、いつの間にか曲ができていました。
念願叶って中学2年生の時に母親と住めることになったものの、うまくいかず、傷害事件を起こして、家庭裁判所へ。中学卒業まで児童自立支援施設にいましたが、そこにもギターがありました。施設のイベントでも自分の作った曲を歌って、みんなに聞かせているうちに、音楽を通じて、先生たちとも通じ合えるようになり、悩みも打ち明けられるようになりました。音楽を通じて、みんなの居場所ができた。自分の居場所ができた。いろんな気持ちが救われました。
東日本大震災で被災地支援に行った時にも、音楽ってすごい!自分がやってきたことは間違っていなかった!と、音楽の素晴らしさを実感しました。自身の人生を綴った『空白』という本も出版し、鈴木砂羽さん主演で『しあわせカモン』と映画化もされています。
- 哲也さんからのmessage
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夢を邪魔する人はいなかったけど、「本当にミュージシャンになれるの?」と笑う人ばかりでした。独学なので、譜面が読めない、楽譜は書けない、音楽理論もわからない。でも曲はかけます。人前でライブもできます。2001年に事務所と契約して以来20年間、決して裕福ではありませんが、音楽だけで食べています。
音楽は、売れなくて当たり前。年間400〜500組くらいデビューをしていて、その中で生き残れるのは10組くらい。今はもっと厳しい。でもみんなメジャーなレコード会社やレーベルに頼らないという流れになってきています。自分で発信したいものは自分で発信できる時代。音楽は、売れる売れないなんて、そんなちっぽけな次元のものではないですよ。もし本気で目指しているなら、自分の発信したい音楽を追い求めて、頑張って!
応援生に聞いてみよう!
- Q1 何を目指して勉強しているのか?
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A. 小説やアニメなどのイラストを描くイラストレーターになりたいという思いからグラフィックデザインを専攻しましたが、今はグラフィックデザインを教える教員になりたいという思いが強くなっています。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
A. 地方公務員を目指しています。高校の時に生徒会副会長をやって、裏方で支える喜びを知ったことが目指すきっかけになりました。大学では脱炭素について学んでいるので、脱炭素に基づく地方経済の活性化に尽力できたらと考えています。
回答者:応援生Yさん/1〜5歳まで児童養護施設、5歳から現在まで里親家庭。経済学専攻。
A. 現在は、ゲーム制作の中でも3Dに力を入れて学んでいます。将来はゲームに関する職業に就きたいと考えています。
回答者:応援生Mさん/児童養護施設での一時保護を経て、現在は自立支援ホーム。ゲーム制作に関して専門学校を学ぶ。
- Q2 将来の夢のために学校以外でやっていることがあれば教えてください。
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A. 大学の先生から学んでいること以外の知識が役に立つこともあると言われたので、たとえば音楽だったらいつも聴いている音楽を聴き続けるのではなく、オススメされた音楽を聴いてみたり、知識が偏らないようにする努力をしていますし、これからも継続していきたい。町の議員さんのところでのインターンシップなど、一見デザインとは関係がなさそうなこともチャンスがあればやってみるようにしています。実際にやってみると、デザインとつながるところが発見できて面白いです。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
A. お金のとてもかかる学校だったので、死に物狂いでアルバイトなどをしてお金を貯めていました。今は就職のために、アニメーション動画を作るなどポートフォリオを作ったりしています。
回答者:応援生Mさん/児童養護施設での一時保護を経て、現在は自立支援ホーム。ゲーム制作に関して専門学校を学ぶ。
- Q3 これまでの人生で大変だったことは?
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A. 高校卒業後の進路を考えている時が一番つらかった。こんなに自分と向き合ったことはないという経験でした。でも、しっかり向き合って、進学を決めたら、今とても充実しているので、みなさんもしっかり自分の進路と向き合ってほしいなと思います。
回答者:応援生Tさん/2歳から21歳になる現在まで児童養護施設。
A. 元々は高校を卒業したら就職を考えていました。面接の練習をしたりSPIを取ったり頑張って、これでいけるぞと思っていたら落ちてしまって、ファミリーホームの施設長さん始め周囲の大人が大学進学を勧めてくれました。就活に失敗した時が一番つらかったですね。
回答者:応援生Sさん/8〜12歳まで里親家庭、現在はファミリーホーム。大学での専攻は経営学。
A. 施設で過ごしていたので対人関係。グループができていたり、対人関係のゴタゴタしたりが絶えなかったので、そこは割り切って施設の職員さんに助けてもらっていました。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
A. 高校で、鬱症状に悩まされるようになりました。勉強も手につかないし、頭痛がして登校もできない。大学に入って、一人暮らしをするようになって落ち着いてきたように思いますが、つらい経験でした。
回答者:応援生Yさん/1〜5歳まで児童養護施設、5歳から現在まで里親家庭。経済学専攻。
A. とにかくお金に困っている家庭で育って、生活保護を受けていました。一時保護につながったのも経済的理由だったので、高校生になってアルバイトができるようになると反動のように働きました。今の学校に入るためのお金を工面するためにも本当に頑張りました。
回答者:応援生Mさん/児童養護施設での一時保護を経て、現在は自立支援ホーム。ゲーム制作に関して専門学校を学ぶ。
- Q4 施設の職員さんとうまく行かない時の対応は?
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A. ホームの施設長さんとはささいなことでよく喧嘩していました。思春期の頃が一番ピークで、コンニャローと(笑)うまくいかない時はあるかもしれないけれど、喧嘩できる相手、喧嘩できる大人がいるということも素晴らしいことです。
回答者:応援生Sさん/8〜12歳まで里親家庭、現在はファミリーホーム。大学での専攻は経営学。
A. 職員にも思ったことはすぐに言うほうだったので、職員もその時は喧嘩しても、引きずらずに対応してくれていました。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
A. 5歳以降は里親家庭で育っているので、許容範囲内の喧嘩は日常茶飯事ですが、どうやって解決しているかは時間です。時間を置いて、折り合いを見て、仲直りをしています。
回答者:応援生Yさん/1〜5歳まで児童養護施設、5歳から現在まで里親家庭。経済学専攻。
- Q5 大学や専門学校へ行くメリットは?
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A. 大学は選択肢の幅が広がるのがメリットだと思います。給付型の奨学金で全額まかなって、お金を借りずに大学に行くこともできるので、今やりたいことが見つかっていなくても、大学進学という選択肢を消さないで考えてみることは大切。
回答者:応援生Tさん 2歳から21歳になる現在まで児童養護施設。
A. 専門学校へ進むメリットは、自分の学びたい専門分野を2年間という短期間で学べることだと思います。大学はやりたいことがはっきりしていなくても、進路を決めるまでにいろいろな経験を積む時間があるところがメリットです。
回答者:応援生Sさん/8〜12歳まで里親家庭、現在はファミリーホーム。大学での専攻は経営学。
A. 大学はカリキュラムに時間的余裕があるので、自分の関心のあるほかのことを学ぶ時間が取れて、知識の幅を広げられるのがよいと思っています。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
- Q6 施設や里親家庭を出た後もお付き合いはありますか?
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A. 施設では数名に1人のスタッフがついていましたが、担当のスタッフさんがとても熱心で、お金の管理を丁寧にやって、教えてくれたので助かりました。大学に進学してからも書類関係など、とてもお世話になりました。
回答者:応援生Kさん/11〜18歳まで児童養護施設。グラフィックデザイン専攻。
A. 大学に入って一人暮らしを始めましたが、里親家庭は近いので、しょっちゅう頼っています。つらい時や困っている時に、話を聞いてもらうことで助けになることもあります。
回答者:応援生Yさん/1〜5歳まで児童養護施設、5歳から現在まで里親家庭。経済学専攻。
- Q7 施設や里親家庭を出た後もお付き合いはありますか?(終了後にメールで回答)
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A. 一人暮らしなど慣れるまでお金の管理の仕方や生活のサポートを手伝って欲しいです。また、自分から悩み事などを言い出すことが出来ない人が多いと思うので相談にのって欲しいです。定期的な連絡をくれて、施設で行っているイベントなどに招待して欲しいです。
- Q8 今の生活で1番楽しいことは何ですか?(終了後にメールで回答)
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A. 学校生活やアルバイトの友達と遊ぶのが楽しいです。実習がしんどいけど充実して楽しいです。
- Q9 今だから、職員さんや里親さんに言いたいことはありますか。(終了後にメールで回答)
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A. 1人で生きていく事の大変さを身に染みて実感しているので、卒業まで面倒を見てくれてありがとうございました。職員さんをはじめ沢山の方々に愛情を注いでもらいました。今とても幸せです。これからも暖かく見守っていてください。
- Q10 コロナになって生活に困っていることなどがあれば教えてください。(終了後にメールで回答)
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A. 学校がオンラインになったり学校での授業に切り替わったりなどして予定を立てても崩れたりしてしまうこと。
- Q11 大学や専門学校の先生は、将来の相談にのってくれますか?(終了後にメールで回答)
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A. 正直なところ、人によると思います。その時の環境次第と言ってしまえばそこまでになってしまいますが、唯一言えることは1人だけでもいいので先生に気に入ってもらえるよう頑張ってみてください。自分が良いなと思った先生で構いません。これは、中学、高校でも言えることだと思ってます。
児童養護施設や里親家庭などで暮らす中高生のみなさんへ
高校卒業後の進学について、講師からのメッセージの一部をご紹介しています。
①「社会的養護から進学するということ〜私の体験〜」蛯沢光さん、「社会的養護の奨学金」水野梨沙さん
みなさんが将来進みたい分野ごとに、講師や応援生の話をご紹介しています。
②「医療現場で人を幸せにしたい」みなさんへ(山本愛夢さん&応援生から)
③「海外で仕事がしたい」みなさんへ(伊藤ヒロさん&応援生から)