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これまでの活動

社会的養護で暮らす中高生へ。先輩学生からのメッセージ②

分科会①-A「医療現場で人を幸せにしたい!」

講師:山本愛夢さん(看護師)

愛夢さんってどんな人?

母子家庭に育ち、高校1年生の時に保護され、15歳から里親家庭。将来のことを里親に相談すると一人でも生きていける看護師を勧められ、看護師になることを決めました。里親は初めての里子で奨学金のことはまったく知らず、自分で給付型の奨学金について一生懸命調べました。

アルバイトもたくさんしましたが、給付型の奨学金と、里親家庭を出てからお世話になった社会的養護の子どもたちのためのシェアハウスのおかげで、学費と生活費がまかなえました。シェアハウスのスタッフには、メンタル面でも支えてもらいました。

愛夢さんからのmessage

保護されてからは楽しかったけれど、楽しくてもいろんな大変なことがありました。将来のことが考えられないくらい闇で、足に絡まって動けない時もありましたし、今も精神的に落ちるところまで落ちることもあります。でも、落ちるところまで落ちたら戻ってくればいい。大丈夫、誰かが助けてくれます。

応援生に聞いてみよう!

Q1 いつ頃からこの道に進もうと思いましたか?また、なぜその道に進もうと思いましたか?

A. 中学2年から高校2年まで病気で長期入退院を繰り返していて、一番多感な時期に多くの時間を共有し、心身がつらい時も支えてくれたのが看護師さんでした。

高校に入りたての頃から、自然と看護師を目指すようになっていました。養護教員を目指し始めたのは、看護学校に入ってすぐで、児童虐待の早期発見に携わりたいと考えたからです。子どもたちを客観的に一番近くで見守っていける教育の現場で、心身の健康の基盤を作っていける養護教員として子どもたちに関わっていけたらと思います。

回答者:応援生Sさん/16~18歳まで児童養護施設。看護学校で学び看護師資格を取得した後、養護教員になるために教育学部へ編入。

A. 作業療法士という職業を知ったのは、母が小学生の頃に精神疾患にかかってしまった時で、日常生活に戻れるようにリハビリの支援をしてくださったのが作業療法士さんでした。高校の時に文系か理系かの選択で迷った時に、施設の先生が作業療法士は文系でもなれると教えてくれたことをきっかけに、目指すようになりました。

回答者:応援生OGのYさん/7~18歳まで児童養護施設。作業療法士。

A. 小さい頃から体が弱くて病院にお世話になることが多かったので、やさしいお医者さんは憧れでした。始めは医者を目指して勉強を頑張っていましたが、センター試験の結果、自分の家庭環境では浪人もできないので、医療職の中でも人と関わる看護師になりたいと、急遽進路を変更しました。

回答者:応援生Tさん/0~4歳まで児童養護施設、4~18歳まで里親家庭。看護学専攻。

Q2 進学する学校の情報などはどのようにして見つけましたか?

A. 情報収集のために、インターネットをよく利用しました。

回答者:応援生OGのYさん/7〜18歳まで児童養護施設。作業療法士。

A. 学校の先生や里親さんと進路相談会や面談が定期的にあったので、自分のやりたいことと照らし合わせながら、先生から情報をもらうことが多かったです。進学をする同級生がほとんどだったので、友だちから情報を得たり、赤本も情報収集の一つだと考えていたので、赤本に取り組んだりもしました。オープンキャンパスなどの大学が情報発信するイベントにも里親さんと一緒に参加して、直接大学生の話を聞いたり、学費や大学が力を入れていること、雰囲気などの具体的な情報を得たりしました。

回答者:応援生Tさん/0〜4歳まで児童養護施設、4〜18歳まで里親家庭。看護学専攻。

Q3 進路や学費面での相談は誰にしていましたか?

A. 高校の先生や養護施設の先生などに、「こんな学校に行きたい」、「このくらい学費がかかる」、「バイトをしたいんだけどどう思う?」と、よく相談に乗ってもらっていました。

回答者:応援生OGのYさん/7〜18歳まで児童養護施設。作業療法士。

A. 学力面のことは恥ずかしくて里親さんにも打ち明けることができなかったので、メンタル面も含めて、学校の先生によく相談に乗ってもらっていました。学費面では不安に感じることはあまりなかったのですが、里親さんが、経済的なことや奨学金のことなど、担当の児童福祉司の方に聞いたり、勉強会に参加したりして、情報収集して、支えてくれたおかげです。

回答者:応援生Tさん/0〜4歳まで児童養護施設、4〜18歳まで里親家庭。看護学専攻。

A. 基本的には自分で調べて、自分で決めました。私が出た施設は進学者自体がほとんどいなかったことと、高校を卒業するまでパソコンも携帯もなくインターネットが使えない状況だったので、進学情報が限られてしまい、その中で選択しなくてはならなかったことは心残りです。だからこそ、進路は、自分の将来就きたい職業は何かを考える、その上で学校を決める、そのために何をやらなくてはならないのかを考えるという順番で進んでいってほしいと考えています。

回答者:応援生Sさん/16〜18歳まで児童養護施設。看護学校で学び看護師資格を取得した後、養護教員になるために教育学部へ編入。

Q4 施設や里親家庭などで育ったことで困難に感じることはありましたか?今も解決できていないことはありますか?

A. 乗り越えられていないと感じることは、学校の授業で題材が赤ちゃんポストや施設のことなどが出ると心落ち着かないし、クラスメイトの反応に心の中でショックを受けたりすることがあることです。 また、中学時代に一度自分の境遇を友人に打ち明けた時につらい経験をしたことで、友人に打ち明けたい気持ちはあるものの、今も打ち明けられないことが解決できない悩みの一つです。

回答者:応援生Tさん/0〜4歳まで児童養護施設、4〜18歳まで里親家庭。看護学専攻。

A. 心理面と金銭面でのバックアップが少なかったのが困難に感じたことです。高校2年生での入所で貯金ゼロからスタートしたため、施設の先生からは進学は無理とはっきり言われていました。その時は本当に悔しかったけれど、この朝日新聞厚生文化事業団の応援金に救われて、自分の夢を叶えるための手段だったり環境だったりを整えることができたので今があると思っています。

だから、「自分が目指すところは私大だから無理」とか「頭が悪いから無理」とあきらめてほしくない。私たちのために用意してくださっているものだから、自分の境遇を強みにして、勉強や生徒会、部活、施設や里親家庭出身だからこそ学んでいることなどの強みを見つけて、奨学金を得られるチャンスを増やしていってほしいと思います。

回答者:応援生Sさん/16〜18歳まで児童養護施設。看護学校で学び看護師資格を取得した後、養護教員になるために教育学部へ編入。

Q5 中高生へのメッセージ

A. 何か一つが正解なわけではない。進学も一つの選択だけれど、いろんな選択を考えながら他人に頼ってほしい。

回答者:応援生Tさん/0〜4歳まで児童養護施設、4〜18歳まで里親家庭。看護学専攻。

A. 施設ごとに先生たちの意識の差も大きいので、大人が子どもの可能性を狭めることがなければと願います。みんな平等に学ぶ権利があるから、どんな形であれ学ぶことを諦めてほしくない。人と比べる必要はないので自分らしく。

回答者:応援生Sさん/16〜18歳まで児童養護施設。看護学校で学び看護師資格を取得した後、養護教員になるために教育学部へ編入。

Q6 施設の職員や里親さんと上手くいかず悩んでいることへのアドバイス(終了後にメールで回答)

A. 私が上手くいかないと感じるときは自分の考えを否定される時が多いので、まずは話を聴いてほしいと言ったり、少しの間、違う部屋に一人でいて自分だけの時間を作ったりしていました。心の余裕があるときは今までの良かった思い出を想起することもありました。上手くいかない理由によって対処は変わりますが、信頼したい人であるなら、自分の思っている本音を打ち明けてしまうことも必要なときがあるのかなと思います。

言わないと伝わらないことはあるし、考えや感じ方が違ってすれ違うこともありますので、自分が上手くいっていないと思っていること自体を伝えることも一つの方法ではないでしょうか。上手くいかないことを当たり前と思ってみることもストレス減少方法の一つになるかもしれないです。

A. 他の施設職員に悩みを伝える。

A. 自分の趣味に没頭してストレス発散する。

Q7 周囲の同世代との環境の違いにモヤモヤをどのように受け止めたか(終了後にメールで回答)

A. 私自身同世代の人との環境の違いへのモヤモヤは今でもずっとあります。どのようになれば受け止めたことになるのかは人それぞれかもしれないですが、自分の境遇について悩んだり、悲しくなったり、複雑な気分になりながらも普段の生活を送っていることが自分なりにモヤモヤに対処しているのかなと感じることがあります。

私は時々自分の境遇へのモヤモヤを里親さんに打ち明けたこともあります。正直、自分の複雑な気持ちを完全に理解してもらえることは難しいですが、モヤモヤするときは誰かに辛さなどを聴いてほしい時かもしれないです。誰かに思いを打ち明けることで気分転換を図ることも大切になることもあるかと思います。

A. 「卒園して独り立ちすれば同年代の人と同様に生活していける」からそれをモチベーションにしていました。

Q8 将来の夢を叶える為にどのような努力をしたか。勉強は?難しかったか?(終了後にメールで回答)

A. 自分で胸をはって努力したと言えるのか分からないというのが正直な感想です。その時は周囲のクラスメイトが皆勉強しているという環境だったので、勉強が当たり前で自分から必死になることをしなかったと感じていました。しかし、今思えば他の学生が遊んでいるときにも自分は机に向かっていたことが努力なのかなと思います。

勉強は一言でいって難しかったです。どのような勉強かは伝えるのが難しいですが、宿題をこなし、問題集を解いて、赤本を解いての繰り返しという感じでした。例えば、沢山の問題ではなくて数問解くことを毎日するといったようにして解く回数を増やしたり、同じ単元や分野だけでなくランダムで様々な問題を選択して解くことで苦手分野をなくそうとしたりすることを勉強方法で教えてもらい実践したこともあります。

A. 自分の進みたい道を自分で決めて、情報収集して、そのために何を頑張らないといけないかリストアップして一つひとつ達成していくという努力をしました。

A. これは中学生くらいのときから今でも意識していることですが、 当たり前のことを当たり前にすることです。 例えば、 課題を一定レベルまで仕上げる、 提出する、 求められている学力レベルで試験をパスすることなどです。当たり前だけど、 それを毎回、 継続してやるのは結構、 気合と忍耐力がいるなぁと感じているので、 何か特別なことをしなくても、今、目の前にあるやるべきことや求められていることをしっかりととらえて、こなすことに視点を置くと、目的を見失わずに勉強できるかなと思います。

Q9 高校卒業後の生活に対しての気持ちや不安はどのようなものか。(終了後にメールで回答)

A. 私は高校生の時はとにかく大学受験に合格するかどうかの不安が大きく、大学入学後の生活まで考えることはあまりありませんでした。卒業後は大学での勉強についていけるのかが大きな不安でした。また、18歳を過ぎると里子なので本来なら里親宅を出なければなりませんが、申請して20歳まで里親宅にいることが出来たので、里親さんに頼ることができる環境を作ったのが不安解消につながりました。

A. 環境に馴染めるか、勉強・実習についていけるか不安でした。

Q10 将来への希望を持ち続けられた秘訣はありますか。(終了後にメールで回答)

A. 私の場合は将来への希望を持っていたというより、医療系の大学に進学すると決めた時からそれ以外の選択肢を考えたことがなく、今やめたら自分に何が残るのかと思いながら頑張っていたと思います。希望を持ち続けるというのは大変なことかもしれないと感じることがあり、途中で投げ出したくなったり、何もしたくなくなったりすることもありました。

大学生のある時期までは選択肢を一つに絞りすぎたせいなのか、今までやってきたことをやめたり、失敗したりしたらすべてが終わったような気分でした。しかし、何事もなんとかなると少し心に余裕を持ったり、将来の道の選択肢を増やすための経験を積んだりすることが必要だと思うようになったことが大切な気づきなのかもしれないと感じています。

A. 正直言うと挫折して諦めてしまう時もあります。でもそれまでに費やした時間やお金、周りの人からの支援を振り返るとそれに対してしっかり貢献しないといけないという気持ちがあるから夢を諦めませんでした。

A. 杖言葉と志を立てていました。例えば、 杖言葉は、私の場合だと 「凡事徹底」 という四字熟語で、 当たり前のことを当たり前にする、 ということ。志は、養護教諭になって、子どもたち が自分らしく幸せに生きていくための支援をしたいということにしていました。 そうすることで、自分の人生の軸みたいなものができて、 それに近づく過程で少しずつ、その軸が太くなるイメージでやってきました。

Q11 来年巣立つ子どもに対して出来る里親の支援は何だと思いますか。(終了後にメールで回答)

A. 私は巣立ったとしてもその子にとっての信頼出来ていつでも頼っていい大人であることを本人に直接伝えることかなと思います。どのような関係性や家庭か分からないのですが、心理的につらくなった時に頼れる人がいることが社会的養護を受けている、受けてきた人には特に大切になるのではないかと思います。

Q12 看護の学校を目指していて、学校の選び方 社会的養護を受けていたことによる困難(終了後にメールで回答)

A. 私は目指していたことを断念して、センター試験の後に進学する大学を決めたので、学校を吟味して決めたかと言われればそうではないと思います。選択基準は合格できるだろうと言える学校と過去問で苦手な英語が解きやすかった学校と関西圏であることでした。社会的養護を受けていたことによる困難はいつの時のことかによって少しずつ違ったかなと思います。

中学生、高校生の頃は(大学生の現在も)周囲の友人には社会的養護を受けていることをほとんど伝えていなかったので、周囲から特に何か言われることはなく、自分の心のなかの「モヤモヤ」がほとんどでした。大学に入ってから一つ経験したこととしては社会的養護を受けていることを奨学金等の手続で事務の方に伝えたときに、相手が社会的養護のことを知らずに、意思疎通が出来なくて冷たく返された時に辛かったことがありました。

私が社会的養護について大人は知っていると思っていたのかもしれないですが、大学進学後に自分の状況を説明しないといけない時に相手に伝わらず、もどかしい思いをしたことはあります。自分の境遇が他人とは違うとわかっていても、いざ実感すると気分が落ち込むことがあるのだと思います。しかし、大学に進学するにあたって社会的養護を受けていることで奨学金や授業料の金銭的な支援があることを実感するようになり、それが特権にもなりうるのだと感じるようになりました。今でも境遇への心理的な辛さがなくなることはないですが、困難だけでもないのかもしれないと思えるようになったことは良かったと感じています。

A. 学費、国家資格合格率、学校の雰囲気をネットやオープンキャンパスに行って実際に自分の目で確かめて選びました。

A. 学費は応援金、生活費はアルバイトと学生支援機構という国からの給付金。進路は、なんとなくでも将来就きたい職業を考え、なるために行きたい学校を決める。私は早く働いてお金を貯めなくちゃという焦りが強くて、 学費が安くて、最短で免許が取れるというメリットから、3年制の専門学校を選びました。正直、そんな安易な選び方しなければよかったなぁと思うので、模試についてくる進路系冊子と学力レベルを比較したり、オープンキャンパスに参加したりするのがいいのかなと思います。

Q13 施設の方に相談しにくかったのはなぜ?(終了後にメールで回答)

A. 高校からの入所だったため、 自分より学齢が 低い子たちに手がかかっていたから、気を遣ってしまったためです。「高校生だから大丈夫だよね」という雰囲気があり、 頼るのをためらいました。

Q14 大人にして欲しかったことはなんですか?(終了後にメールで回答)

A. ここに参加されている皆様は意識が高いです。欲しかったのは情報。施設ごとの進学に対する意識の格差をなるべく縮めてほしいなぁと思います。施設の子に関しては、 施設の先生が親代わりです。大人が子どもの可能性を狭めることがないようにしていただけると、ありがたいなぁと思います。