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これまでの活動

社会的養護で暮らす中高生へ。先輩学生からのメッセージ④

分科会②-A「福祉・行政でみんなの生活を支えたい!」

講師:高橋未来さん(厚生労働省)

高橋さんってどんな人?

小学4年生〜高校3年生まで養護施設で過ごしました。幼い頃から大学へ行きたいと考えていたので、進学自体を悩むことはありませんでした。しかし施設には大学進学した人がいなかったため奨学金や給付金などの知見がなく、アルバイトで学費や生活費をまかなえるような大学を選ばざるをえませんでした。

大学へ進学し、家賃の安い大学の寮に入れたことはありがたいことでした。一方で、施設を出た後は、精神的に辛い時期でもありました。施設で暮らしていたことを周りの人に話すのが苦手だったため、友達などと家族の話になった際には、うまく話を合わせながら過ごしていました。

友達に小さな嘘をつき続けなければならないということは辛いことでした。友達に見せている一面も、施設で育ってきた私も、本当の自分。二面性のある自分に嫌悪感を抱くようになり、自分とは何者なのかがわからなくなりました。それを考え続けた学生時代。過去とも向き合う時間が多くなり、どんどん苦しくなり、孤独を感じていました。社会的養護で暮らす子どもたちが独り立ちをする前に、心の整理ができるよう、周りの大人がサポートをすることが重要だと思います。

就職活動でも、面接で家族や施設ことを聞かれることがあり、うまく話すことができず悩みました。内定が決まった後も親の承諾が求められ、生い立ちが就職活動に影響することに疲れてしまい、就活を辞めて、卒業前に休学することを決めました。すると、寮を出て、アパートを借りなくてはならなくなり、保証人問題にぶつかります。施設のスタッフが駆けつけてくれて、ようやく不動産屋さんも承諾してくれました。社会的養護であるがゆえに被った経験をポジティブに活かそう、制度を作る側になろうということで、公務員試験を目指すことに。

施設で過ごしていた時に嫌だったことの一つが、職員がすぐに辞めてしまうこと。解決するには、給料を上げて職場環境を変えるのがよいだろうと考えて、小学生の頃に厚労省に入って職員の給料を上げてあげるよと言っていたことを思い出しました。

2度目の就活では、社会的養護であることを敢えてアピールはしないけれどもありのままに答えられるよう対策を練りました。厚労省でもありのままを話して受け止めてもらえて、今があります。

高橋さんからのmessage

環境を理由に諦めることはしないでほしい。逆境に負けずに頑張っている人には応援してくれる人が現れます。社会的養護を対象とした給付金や制度など、意外と使えるリソースもあります。生い立ちや経験はたびたび枷(かせ)になることがあるけれど、武器にもなる。大人になって幸せに暮らすことが恩返しです。社会的養護で暮らしているみなさんの周りの大人にお願いしたいことは、子どもがこんなことをしたいなと選択をした時、叶えるためのリソースを探すなど、実現ためのサポートをしてほしい。

応援生に聞いてみよう!

Q1 学生生活を通じて学んでいることやコロナ渦で大変なことはありますか?

A. 今まで支援を受ける側の目線で福祉をとらえていましたが、大学で社会福祉を学ぶ中で、支援をする側はより広い目線で学んでいく必要がある、また、自身の経験は大事ですが、それに偏らないようにすることも大事であるということを強く感じています。寮に住んでいるのですが、コロナ渦で、寮生以外の友人ができないのがつらいところです。

回答者:応援生Eさん/12〜18歳までファミリーホーム。社会福祉専攻。

A. 大学に入るまでは福祉は人を助ける仕事だと思っていましたが、大学で学ぶうちに、福祉が人の生活をよくすることもあるけれど、悪くすることもあるので、福祉に関わる仕事はとても大変だと考えるようになりました。コロナ渦で友だちと会えないのはつらいですが、オンラインで時間ができた分、資格のための勉強を頑張っています。

回答者:応援生Mさん/15〜20歳まで自立援助ホーム。福祉専攻。

A. 福祉といってもいろいろな分野があり、いろいろな考え方や見方があるということを学んでいます。コロナ渦で人と会えないため、一人で頑張らなくてはならないので、人間関係をどう作っていったらよいのかということは日々考えています。

回答者:応援生Yさん/小学校から高校まで児童養護施設。社会福祉専攻。

Q2 今の進路を決めたのはいつですか?決める中で大切なことや大変だったことはありますか?

A. ファミリーホームで過ごし、児童相談員や職員の方など福祉に関わる大人が身近にいたので、福祉に関心を持つようになっていました。進学する上で大変だったことはお金のこと。大学卒業後のことを考えて、できるだけ給付型の奨学金を探したり、学費の安い大学を選んだりしました。給付型の奨学金は、何歳か上に進学した先輩がいたので参考にしたり、ファミリーホームのお母さんが情報をくれたり、作文を手伝ってくれたりして、得ることができました。

回答者:応援生Eさん/12〜18歳までファミリーホーム。社会福祉専攻。

A. 自立援助ホームの職員さんと話していた時に「大変な仕事ですよね」と言ったら、「でも、やりがいがある仕事だよ」と答えてくれて、やりがいがある仕事なのかと興味を持ったことが福祉を目指すきっかけになりました。大変だったことは、お金のことです。できるだけ貸与ではなく給付型の奨学金がほしかったのですが、当時はまだ給付型の奨学金の中に、自立援助ホームを対象としているところがなかったので、その中で応募して落ちて、大変でした。

回答者:応援生Mさん/15〜20歳まで自立援助ホーム。福祉専攻。

A. 施設にいたので、元々進学は考えておらず、就職一択で工業高校に通っていましたが、学んでいるうちに自分の学びたいことではないと職員さんに相談しました。その時に、人と話すことが好きであることに気がついたことと、職員さんに憧れている人がいたのでその人のようになりたいと思い、大学で福祉を学ぼうと、お金を貯めたり、勉強を始めたりしました。進学校ではなかったので、高校の先生には進学は無理だと反対されましたが、頑張りました。

回答者:応援生Yさん/小学校から高校まで児童養護施設。社会福祉専攻。

Q3 施設や里親家庭などで育って大変だったことはありますか?そのことをどのように感じていますか?

A. 友人に里親家庭であることを公表したくなくて、理解してもらえないこともたくさんあったので、それはつらかったなぁと思います。里親家庭でよかったと思うことは、ベテランの里親さんに育ててもらって、子育てがとても上手だったので、感謝しています。自分のことは自分でしなさいという里親さんでもあるので、料理や洗濯も一人でやるように育てられて、今、武器になっているなと思います。

回答者:応援生Kさん/2歳から現在まで里親家庭。児童教育専攻。

A. ファミリーホームだったので、家庭に近くて、あまり友人に施設出身だと悟られることはなかったのですが、家族のことを聞かれると笑ってごまかしたり、周囲と違うことをマイナスにとらえていた時期もあったりしました。でも今はよい人生経験だと思えますし、学習習慣のなかった私が自分の進みたい道に進めているのもファミリーホームで過ごしたおかげなので、とても感謝しています。

回答者:応援生Eさん/12〜18歳までファミリーホーム。社会福祉専攻。

A. 集団生活のルールがあるので、どうしても高校の友人との間には壁ができたりすることがありました。よかったことは、一人暮らしを始めると自分で掃除や食事の準備をしなくてはならないですが、ホームではやってもらえていたので、ありがたかったなぁと思います。

回答者:応援生Mさん/15〜20歳まで自立援助ホーム。福祉専攻。

A. 一番嫌だったことは、施設だとバレることでした。それをどうやって避けたりごまかしたりできるか。施設にはルールも多かったので、自分が生活しやすくするためにどうしたらよいかもよく考えていました。よかったことは、施設だといろんな経験ができることと、人間関係が広がることです。

回答者:応援生Yさん/小学校から高校まで児童養護施設。社会福祉専攻。

Q4 職員さんや里親さんなどとうまくいかなかったことはありますか?どのように対応しましたか?

A. 里親家庭で10年間育ちましたが、うまくいかないこともあって、本音が言えなかったり、自分を出せなかったりすることがありました。でも必ずしも自分を出す必要はなくて、出せる人に出す、どの自分も本当だと思うので、出せる自分を出せる人に出していくのがいいのかなと思います。

回答者:応援生Rさん/9〜18歳まで里親家庭。15歳で一度里親が変わる。社会福祉専攻。

Q5 福祉は幅広いですが、自分のやりたい分野を決めておいたほうがよいですか?

A. 私は保育を学びたかったので、最初から保育を選びましたが、保育でも福祉のことは学びます。福祉といっても本当にいろいろとあるので、今のうちから、どの分野を学びたいのか考えておくのがよいと思います。

回答者:応援生Kさん/2歳から現在まで里親家庭。児童教育専攻。

A. 私の通う大学では1年の時に学びたい分野を選択して、2年生から過程がわかれていきますが、取得できる資格なども変わってしまうので、自分が福祉のどの分野に関わりたいのかは早い段階で決めておくのがよいと思います。

回答者:応援生Eさん/12〜18歳までファミリーホーム。社会福祉専攻。

Q6 社会福祉の勉強は大変ですか?

A. 教科書で学ぶことだけでなくて、道徳観や倫理観、感情などが大切になるかと思うので、施設や里親家庭などでの経験は強みになります。

回答者:応援生Rさん/9〜18歳まで里親家庭。15歳で一度里親が変わる。社会福祉専攻。

A. 資格を取るための勉強は、多岐にわたるので、大変だと思います。

回答者:応援生Yさん/小学校から高校まで児童養護施設。社会福祉専攻。

Q7 社会的養護であることを大学の友人に打ち明けたほうがよいですか?

A. いろんな考え方の人がいて、偏見を持ったり、特別扱いしたりする人もいるので、個人的にはあまり打ち明ける必要はないと思っています。

回答者:応援生Kさん/2歳から現在まで里親家庭。児童教育専攻。

A. 大学は同じ人といつも一緒にいるわけではないので、仲良くなった人には言ってもよいかと思いますが、片っぱしから言う必要はないかと思います。

回答者:応援生Mさん/15〜20歳まで自立援助ホーム。福祉専攻。

Q8 里親をしてます。中3年娘が自分の境遇から、自分を卑下して、進路に投げやりです(反抗期か)司会の方が「自分が施設に居た事に対して隠す気持ちは無かった」とおっしゃいましたし、皆さんは前を向いていらしゃるのを拝見し、里親としての私母親を責め始めています。今回のセミナーも勧めましたが絶対嫌だ!と(終了後にメールで回答)

A. 私は、司会をしていた者です。私も里子で中学生の時は反抗期でもあったため、里親の言うこと全てに逆らいたくなっていました。必ずそんなときがどんな子どもにもあると思います。逆に言いたいことを里親さんに言えていることは信頼している証拠でもあると思います。私が里子だったときはそっとしておいてもらえるのが1番ありがたかったです。やりなさいと言われるよりもやってみたら?と提案される方が前向きになれるような気がします。一生懸命に何かしてあげたいという気持ちもあると思うんですけど、話をいっぱい聞いて肯定してもらえると私はとても嬉しかったです。今こうして前向きになれるのは、立ち止まった時や投げやりになったときにそっとそばにいてくれる人たちがいたからなんじゃないかなと思います。

私は、こんなこと言ったら怒られるかな?否定されるかなと思うとなかなか本音を里親に話せませんでした。今もそれは感じています。だからこそ、社会的養護を少しでも良くしたいとこの活動をしています。私もなかなか本音を里親に言えないので私みたいに想いを伝えられない里子が本音を言える環境を作りたいと私は思っています。なので、今回このような質問を里親さんからいただいてとても嬉しく思います。きっと里子さんは幸せだと思います。だから、どうか自分を責めないでください。参考になれたかはわかりませんがぜひ娘さんを受け止めて欲しいと思います。

A. 2歳の時から里親家庭にいる大学1回生です。私の里親は「自分のことは自分で決めなさい。あんたのサポートは全力でするから」と、進路のことは全て自分で決めさせてくれました。そして、いろんな奨学金を調べて、推薦書を書いたりするなど、私のサポートを全力でしてくれました。進路のことを一から十まで自分で決めたことで、受験勉強にも奨学金の作文にもやる気が湧きましたし、何より今自分で決めてきたことにすごく満足しています。おこがましいかもしれませんが、里子さんに「あなたが決めたことを全力でサポートするよ」と伝えてあげると、里子さんも徐々に進路について考えてくれると思います。里親さんは何も悪くないので、自身を責めることなく、里子さんと一緒に進路について考えてあげてください!

A. 自分の境遇からできないと思うことは、自分も沢山ありました。なぜなら、情報が少なく将来のビジョンが見えなかったからです。反抗期で里親さんと上手くコミュニケーションが取れないのもあると思います。会話の中でその子が何を考えて、将来どんなことがしたいのかを知りながら、少しずつ情報を開示してあげるのも一つの案としていいと考えます。また、その子に会った支援方法があると思うので、焦らず考えてあげることが大切なのではないでしょうか。

A. 私も自分の境遇に嘆いて、何もかも諦めていた時期がありました。ですが、過去はもうどうにも出来ない一方で、未来は自分の行動しだいでいくらでも変えられます。私はファミリーホームにいたのですが、そこのお母さんとは良く将来のことについて話をしていました。その時々で、やりたいこと・なりたいことが違ったりしていたのですが、全部否定することはせず、「やってみたらいいんじゃない?」と言ってくれていました。まずは小さなことからでもいいので目標を立ててみることが大事だと思います。その小さなことの積み重ねが、後に自信となって自分の力となるはずです。里親さんは、里子さんの夢を応援したいですよね。自分を責める必要はないと思います。まずは何に興味があるか等聞き出してみて、そこから将来のことや勉強のモチベーションに繋がるよう、コミュニケーションを通して支援方法を考えてあげたらよろしいのではないかと思います。

A. 自分は里親家庭で生活したことが無いのでどの様な生活を送っているのかわからないのですが、自分の境遇から進路を投げやりにしてしまうことの原因として私が思うのは負担をかけたく無い感情です。例えば進学する為には少なからずお金がかかりますが、金銭面の負担をかけてしまうという考えから進路を投げやりに考えてしまっている可能性なども考えられると思います。自分の境遇から自分の進路を決める不安があるかもしれません。進学や進路に対して思っている不安を一つずつ取り除いてあげることで進路に前向きになれると思います。

Q9 今だから、職員さんや里親さんに言いたいことはありますか(終了後にメールで回答)

A. 私は里親家庭で育ち19歳で自立しました。その時、感謝の言葉を里親に素直に伝えられませんでした。今もなかなか恥ずかしく伝えられていません。しかし、本当は感謝の言葉でいっぱいです。ありがとう!という気持ちでいっぱいです。しかし、一緒に暮らしていた時は正直気を使うことがストレスでもありました。今は、定期的に会う関係なのでとても良い関係を築けているような気がします。

A. 私は2歳の時から里親家庭にいます。里親に対しては本当にありがとうの一言しか出てこないです。私の里親は私を家族の一員として見てくれていました。反抗期の頃はありがとうなんて全く思っていなかったけど、たくさん支えてくれた大学受験が終わった今こそ、ありがとうを伝えたいです。

A. ありがとうの気持ちですいっぱいです。育ててくれてありがとう。支えてくれてありがとう。

A. 当時は「どうしてこんなこと言われなきゃいけないの!?」と思っていたことも、今となっては自分の成長にとって必要な言葉であったと思えるようになりました。本当に感謝してもしきれないです。今まで育ててくれて、支えてくれてありがとう。

A. 生活している時は、ほっといて欲しいと思っていましたが、一人暮らしをする様になって違う環境から見ると自分の為にしていてくれたことなんだと思うようになり感謝しています。