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これまでの活動

オンラインフォーラム「認知症カフェからの出発 Next」を開催しました。

2月27日に、オンラインによるフォーラム「認知症カフェからの出発 Next」を開催しました。当事業団が2016年度から3年間にわたって行った「認知症カフェ開設応援助成」の助成団体や、認知症カフェの運営に携わる約30人が参加。「認知症カフェ」の取り組みを通し、「認知症になっても安心して暮らせる地域」を実現できるよう、カフェが果たす役割に立ち返り、今後の可能性や、今後必要な連携を探る機会としました。

プログラムは3部構成。第1部では当団からの助成をきっかけに誕生した「認知症カフェ」の3年間にわたる活動報告、第2部では武地一さん(藤田医科大学教授)による講演、最後の第3部では南伸太郎さん(ラボラトリオ株式会社代表取締役)をファシリテーターとするグループワークを実施しました。

第1部

第1部で活動報告をしてくださったのは3団体。トップバッターは、NPO法人住まい・まち研究会の夏目さんご夫妻(千葉県成田市)が務めてくださいました。夏目さんの開催する「ももとせ・サロン」は開設当初は隔週開催でしたが、参加者の要望により毎週開催に変更。男性の参加者が多いことを特徴に挙げました。「世話をする人」と「世話をされる人」に分けないことで、誰からともなくイベントが発案・開催され、例えば、言い出しっぺ不明のお誕生会が開かれたり、パラリンピック競技種目でもある「ボッチャ大会」が行われる、活気あるカフェの様子が報告されました。

続いての活動報告は、「青山1000人会」の岸岡さん(兵庫県姫路市)。民生委員や児童委員を務めるメンバーが立ち上げたサロンで、月替わりで理学療法と音楽療法を取り入れたプログラムを実施しているそう。コロナ禍において、やむを得ずカフェの開催を断念している団体が多い中、専門家による指導に基づいた感染予防対策を実施したうえで開催を続けている、数少ないカフェでした。また、会の地元である姫路市に対しても政策提言を行うなど、行政も巻き込んで「より良い街づくり」をしようという熱心な姿勢を発表しました。

最後の活動報告となる、「うたせ認知症を考える会」からは黒澤さんら6人(千葉市)が登壇。同会からは、「認知症カフェ」の活動で見つかった新たな課題に対処するべく、数々の活動が誕生。介護に時間を費やし、自らの食事に配慮が行き届かない参加者のために始めた、栄養バランスの整った食事を楽しむ会や、孤食を解消するため、複数人で食事を囲むことを目的とした会などが紹介されました。また、シャッターを閉めている商店街の店舗を活用するため、持ち込み自由の「集い場」の提供も行っているという同会の話からは、地元に溶け込み、また地元に期待されて活動している様子が伝わってきました。

第1部「認知症カフェ」の3年間にわたる活動報告の様子

これら3団体の報告を受け、藤田医科大学医学部認知症・高齢診療科教授の武地一さんが総括。地域の特性やカフェの主催者の個性によって、表情が異なるカフェでありながら、それぞれのやり方で地域に溶け込み活動している様子に賛辞を送りました。また、武地さんは参加者から募った、「3年間の助成期間を終えた後の活動資金をどうするか」や「ボランティアをどのように集めているか」などの質問を報告団体に投げかけました。

第2部

続いての第二部では、武地一さんが「今、あらためて考える認知症カフェの役割」をテーマに講演。武地さんは、コロナ禍で活動が思うように進まない現在の状況を「自分たちのこれからの活動を考え直す時期」と捉えており、どの程度利用するかは別として、「オンラインツールが選択肢に加わったことは、カフェ運営をする上での一つの収穫」と話しました。また、1月30日に開催した当団主催の交流会であがった課題4点、①認知症カフェを運営する他団体との横のつながりの持ち方、②コロナ禍で途切れかかっている地域とのつながりの持ち方、③オンラインを利用しての「居場所」の作り方、④人材の確保(仲間づくり)を挙げ、課題解決のヒントともなりうる自らの調査結果と、武地さん自身が運営するカフェでの実例を交えながら講演は進みました。

第2部 武地一さんによる講演の様子

第3部

フォーラム最後のプログラムとなるグループワークでは、ラボラトリオ株式会社代表取締役の南伸太郎さんに進行をお願いしました。ここでは、参加者が5、6人ずつの5グループに分かれ、「認知症カフェからの出発」をテーマに、認知症カフェのこれからについて意見を出し合いました。初対面の人同士での話し合いを円滑にするため、まずは自己紹介で緊張をほぐします。名前と、「自分を道具に例えると」を紹介。本題となるワークでは、カフェが「こんな風になったらいいな」を一言キーワードで表現し、続いて、イメージの実現に近づくために「すぐにできそうなこと」を意見交換。出された意見は、ホワイトボードのように使えるオンラインツールを利用して付せんに書き込み、グループメンバー全員で共有しました。このグループワークでは、テーマに沿った話し合いが活発に行われたのはもちろん、活動している地域についてや、オンラインカフェの話題に触れたメンバーに対して、より突っ込んだ質問をするなど、他のカフェの取り組みからヒントを得ようとする熱心な様子が感じられました。

第3部 南伸太郎さんの進行によるグループワークの様子

各グループで話し合った内容の発表を受け、南さんは、「気軽な参加」の関係づくりや、ほかの活動をしている人を巻き込むのには戦略が必要だが、今日の参加者の皆さんは、それぞれが実践から得たアイデアをいくつも持っていると感じた。今回のような機会にアイデアを共有し、でそのバリエーションが増えることで、カフェがより良くなると思う、などと話しました。

最後に、今回のフォーラムを武地さんに総括していただきました。武地さんは、認知症カフェが日本に根付くためには、認知症カフェには「行ったら〇〇ができる場所」、「〇〇の情報が得られる所」といった共通項が必要。しかし他方では、フラットな関係づくりを実現するためにどのような内容のカフェにするか、また、地域をまとめていくために、どう周りを巻き込んでいくか、といった点は地域性や開催者の個性によってバラエティに富むのだと実感した、と話しました。今日の参加者のように熱心な人々が集まって「認知症カフェ」の今後を話し合うことで、運営の新たなヒントになることを願っていますと締めくくりました。

アフタートークセッション

同フォーラムの終了後、希望者による「アフタートークセッション」を開催。「ほかの団体に聞いてみたいこと」をテーマに、時間いっぱい質問が飛び交いました。

参加者からの意見、感想として、参加者と今後も連絡を取れるように連絡先を交換したいといった意見や、今後も認知症カフェを「熱心に」運営する人たちと意見交換の場を持ちたいといった感想が寄せられました。当事業団としても、今後も、皆さまが意見交換できるネットワークを構築していけるよう取り組んでいきたいと考えています。