~支え合う安心社会の実現に向けて~
朝日新聞厚生文化事業団は「福祉を支える地域づくり」「福祉を担う人づくり」「支援の輪づくり」を軸に社会福祉事業に取り組んでいます。

朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 高次脳機能障害講演会 「医療と連携、リハビリから就労へ」事業報告

これまでの活動

高次脳機能障害講演会
「医療と連携、リハビリから就労へ」事業報告

高次脳機能障害の人たちの社会復帰に向けて、医療と福祉が地域の中でどのように連携し、リハビリから就労へ向かうのかを学ぶ講演会を9月30日、東京・浜離宮朝日ホールで開催しました。折から台風24号の影響を受け、午後1時から4時までの予定を30分繰り上げて実施。160人が参加しました。

まず、橋本圭司・はしもとクリニック経堂院長が「高次脳機能障害のリハビリテーション」と題し、高次脳機能障害とは、中枢神経系、特に大脳の損傷により、言語、記憶、思考、行為など広範囲に及ぶ障害をいう。高次脳機能障害はよくなるのかについては、症状が似ている発達障害とは違い、改善には1、2年など年単位で回復し時間がかかるとのこと。

高次脳機能障害の特徴としては、さまざまな症状が一人ひとり違って表れるオリジナルブレンドであるが、回復の道筋には共通点があると指摘しました。

次に、神経疲労や意欲発動性の低下、注意障害、記憶障害、遂行機能障害などの諸症状をあげ、対応策についても説明。就労をめざす包括的なリハビリの考え方として①リハビリについての明確な方針をもつこと②家族に対するフォローを含めた家族と環境への対応の工夫③地域の人たちへの啓発④居場所づくり⑤当事者とともに生活をする人が、地域の専門職とともに問題を共有することが大事と述べました。

その後、橋本さんと、北京パラリンピックの金メダリストで、高次脳機能障害当事者の石井雅史さんが対談しました。北京、ロンドン、リオパラリンピックに出場した当時の写真を見ながら「これまでの長い間のリハビリで感じたことは」とたずねると「好きな物や、外に目を向け、楽しいと感じると苦にならない」と述べ、また「就労したということにどう思ったか」という質問に「今の仕事をすることで、所属先ができ、社会的信頼が生まれた。それに伴う責任感も生まれた」と語った。石井さんの「東京パラリンピックに挑戦する」という言葉に、「マイナスをプラスに変える男」と橋本さんも絶賛しました。

休憩をはさみ、瀧澤学・神奈川県リハビリテーション支援センター・地域支援室統括主査の進行で、シンポジウム「医療と連携、リハビリから就労へ」を開催。あいにくパネリストとして予定していた納谷敦夫・なやクリニック高次脳機能障害担当医が台風の影響で参加できず、橋本さんが代役、野々垣睦美・クラブハウスすてっぷなな統括所長、深津玲子・国立障害者リハビリテーションセンター企画・情報部・高次脳機能障害情報・支援センター長が登壇しました。

まず、橋本さんが「重度な人の中には驚くほどの回復を見せる人がいるが、家族や職場の理解、支えが大切」と、野々垣さんが、生活支援の立場から「高次脳機能障害の人の中には、障害の特徴で疲れ切って何もできない人がいる。その人の能力を高めるだけでなく、仕事時間の短縮、効率を考えることも必要。家族が当事者の諸ケースを共有し、専門職につなげることが大切」と語り、深津さんは、これまでの高次脳機能障害の国の取り組みの経緯と事業内容、就労への道筋を述べました。最後に瀧澤さんが「当事者が就労に向けてリハビリをする努力も大事だが、企業も社会も障害者の就労をきちんと受け入れる体制づくりが必要」と結びました。