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事業のご報告

高次脳機能障害講演会「高次脳機能障害を生きる」~当事者と家族~(東京・大阪)

交通事故や病気で脳を損傷した高次脳機能障害の当事者は、様々な課題を抱えながら日常を暮らしています。当事者とその家族が障害とどのように向き合って行けばよいのかを、支援者とともに考える講演会を東京と大阪で開きました。東京では中央区の浜離宮朝日小ホールで10月30日に開催して153人が参加、大阪では9月4日に西区の大阪YMCA会館で開き201人が参加しました。

東京会場では、日本障害者リハビリテーション協会顧問の上田敏さんが、『「見えない障害」』を生きると題して基調講演を行いました。上田さんは「リハビリテーション」という言葉を語源にさかのぼって説明しました。中世には王侯貴族の地位の回復や宗教的な破門の取り消しなどを意味した言葉だったと指摘し、リハビリは「機能回復訓練」ではなく、「全人間的復権」を意味する言葉だと述べました。

またリハビリは、障害を減らすというマイナス面の減少を狙うより、当事者の潜在能力を見つけて伸ばすというプラス面の増大を図るべきであって、そうすることで「その人らしい生き甲斐のある人生の実現ができる」と強調しました。

実例として、地下鉄の駅から転落して高次脳機能障害を負った女性の例を紹介しました。この女性は、記憶や言語の面は問題がなかったのですが、障害で計算能力が小学生レベルまで落ちてしまいました。また、整理整頓ができず、服装もだらしなくなってしまったので、母親からは日常生活のことができないうちは、「仕事など無理だと言って欲しい」と言われてました。

しかし、この女性が自らの障害を受け入れて、障害者枠で単純事務に雇用されて働き始めたら、心に余裕が生まれ、服装や整理整頓もできるように変わりました。上田さんは、働くこと自体が訓練にもなるので、日常の生活といった「下部」だけにとらわれず、「上からよくなることもある」と述べました。

障害を持つ当事者として、東京大学先端科学研究センター「DO-IT Japan」リーダーを務める小林春彦さんと、高校で事務員を務める石黒順子が登壇しました。

小林さんは、11年前に脳梗塞を起こして高次脳機能障害になりました。小林さんには視野狭窄や左半側無視といった障害が今も残りますが、外見からは非常にわかりにくいので、あえて左手だけに白い手袋を付け、白杖も持っていると説明しました。しかし、白杖を持ったままスマートファンを覗いていたりすると、周りの人からは「本当は見えているのでは?」などと逆に疑われることもあると、分かりにくい障害の在り方の難しさを語り、「障害」の大小と「困難」の大小は必ずしも比例しないのでは、と問題提起をしました。

石黒さんは、犬と散歩中に後から車にはねられ、40日間意識不明の重体に陥りました。その結果、高次脳機能障害が残りました。しかし、「今の自分のためでなく、未来の自分のために頑張る」という気持ちで仕事に励んでおり、手を動かすリハビリを兼ねて始めた趣味の陶芸も、人から譲って欲しいといわれるほどにまで上達しました。講演会当日は、石黒さんの陶芸作品の写真を並べたコーナーも会場の脇に設けられました。

最後に、NPO法人高次脳機能障害支援ネット理事長の橋本圭司さんを交えて、小林さん、石黒さん、橋本さんの3人で鼎談「見えない障害と生きる」が行われました。

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