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これまでの活動

高齢期の豊かなくらし研究会
講演会「認知症はこわくない」報告

6月7日、大阪市北区中之島1丁目の朝日新聞社アサコムホールで、高齢期の豊かなくらし研究会、当団主催の講演会「認知症はこわくない」~からくりを学んで笑顔で暮らす~を開催しました。

出雲市で「認知症をタブーにしない」を合言葉に、支援・啓発活動に取り組んでいるエスポアール出雲クリニックの高橋幸男院長に、認知症はどのような経過をたどり家族など周囲とどのように孤立していくのか、また認知症は中核症状と行動・心理などの周辺症状(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の二つに分かれるが、どのようにBPSDが悪化し不幸なパターンに陥るのか、そうなった時家族や周囲はどのような対応をすればよいのかをお話しいただきました。

なぜ誰もが「認知症はこわい」と思うようになったのか。1972年の有吉佐和子さんのベストセラー小説「恍惚の人」ではないかと高橋さん。認知症の人の異常な行動が描かれ、世話する家族は大変という認識が一般に広まったと推察。

今は認知症当事者が発言する時代になり、だいぶ認知症のことが当時に比べ解明されてきており、実は認知症の人は悩んでいるということがわかりました。認知症になるということは、自分と配偶者との関係、自分と子どもとの関係が薄れ、つながりを失い、家族に囲まれていても「いつも一人ぼっち」と感じてしまうとのこと。

認知症になるということは、周囲との会話が減り、不安で孤独な世界に追い込まれ、「よるべない」存在になる。家族に症状を受け入れてもらえず、日常的に「しかられている」というストレスをかかえてしまうようです。

記憶障害などの中核症状から二次的に起こるBPSDをさらに悪化させ、結果的に家族を苦しめる悪循環に陥る、これを高橋さんは「認知症のからくり」と名付けます。このからくりを知り、家族は認知症の人のよるべなさに寄り添い、その症状を受け入れることが大切と語りました。

第2部は、高齢期の豊かなくらし研究会の佐瀬美恵子代表が入場者を代弁し、高橋さんに質問を投げかける形で進められました。

まず、本人への告知はどうすればよいのかという質問に、高橋さんは「長生きすれば大半の人が認知症になる。日常の会話の中でじょうずに本人に伝えることが大切」と説明。それでは「告知」の後、どのように本人や家族を地域で支えるのか。高橋さんから行政と医療、福祉がうまく連携が取れている出雲市の状況をうかがい、「出雲がいいなで終わらせず、自分たちの地域のこととして、どう行政に声を届けるかが大切」と佐瀬代表がつなぎました。最後に高橋さんは、自分自身が認知症になる前に、一人ひとりがつながりのある人間関係を築き、家族とも対応を考えておくことが大切と結びました。