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高次脳機能障害講演会「当事者が伝えたいこと」を開催しました

 高次脳機能障害講演会「当事者が伝えたいこと」を、7月20日午後1時から4時まで、岩手県盛岡市大通1丁目の県産業会館で、NPO法人いわて脳外傷友の会イーハトーヴと朝日新聞厚生文化事業団の主催で開催しました。NPO法人日本脳外傷友の会後援。120人が参加しました。

高次脳機能障害当事者は、受傷、発症前の経験もその後の後遺症もさまざまです。高次脳機能障害に対する一般の理解が進んだとはいえ、まだまだ家族や友人、学校、職場など人とのかかわりの中で、当事者がどのように悩み、感じているのかを十分理解できていないのが実情です。そうした中、当事者たちが話す言葉に耳を傾け、彼らが作った木工や手芸作品などに触れ、周りの人たちが当事者たちをどのように理解し手をさしのべればよいのかを考えるのが講演会のねらいです。

まず、国立成育医療研究センター・発達評価センター長の橋本圭司さんが「当事者との接し方」について、「高次脳機能障害は左脳にダメージを受けると、集中力が低下しうつ病のような症状が出ることがあるが、周囲の環境を整え、具体的な指示や提示をすることでできるようになることもある。とにかく本人が自主決定することが大事」と説明。

続いて、橋本さんと対談した河原和子さんは、1990年、結婚して1ヵ月後に、通勤途上交通事故に遭い、くも膜下出血、硬膜外血腫、脳挫傷を発症、後遺症として左脳萎縮、右半身のしびれが残りました。退院後、障害が軽度のため、本人も周囲の人たちも高次脳機能障害と気づかぬまま、出産、育児と家庭生活を続けてきました。自身が高次脳機能障害と知ったのは、診断を受けた2010年、3年前のこと。軽度の障害であるが故に、周囲の人たちに気持ちを理解してもらえず、生きづらさをずっと感じてきたそうです。それでもうまく家庭生活を続けてこられたのは、長女や夫が河原さんを「障害のある人」と見ずに対等に接してくれたことがよかったのではとふり返ります。

休憩の後、小学生の時、脳出血で失語、記憶障害、軽片まひが残る高山仁志さんが見事なバイオリン演奏を披露。その後、「輝いて生きるということ」をテーマにシンポジウムを行いました。栃内第二病院主任臨床心理士の山舘圭子さんをコーディネーターに、橋本さんもオブザーバーとして加わり、交通事故で重度の身体障害がありながらも歩くことに生き甲斐を見いだした堀間真さん、河原さん、高山さんがシンポジストとして参加しました。

山舘さんは「高山さん、堀間さんの2人のポジティブなエネルギーが周囲を変えている。誰もが輝き、またお互いの輝きを生かしあえる存在になれば、私たちの社会はもっとよくなるはず」と語り、橋本さんは「高次脳機能障害の当事者は支援を受けるばかりでなく、もっと発信していく存在にならなければならない」と締めくくりました。