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第5回 「当事者が変える、組織が変わる~行政・民間からの報告」

これまでの活動

連続セミナー 障がい児・医療的ケア児の親と就労
第5回 「当事者が変える、組織が変わる~行政・民間からの報告」

6月28日(日)に、連続セミナー「障がい児・医療的ケア児の親と就労 当事者が変える、組織が変わる~行政・民間からの報告」を開催しました。一般社団法人障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会(以下、親の会)との共催で、連続セミナーは今回で5回目。ハイブリッド形式で実施し、会場とオンラインを合わせ、約140人が参加しました。

セミナーの冒頭では、親の会の会長である工藤さほさんがあいさつをし、「育児と仕事の両立を実現するためには福祉制度と職場による支援制度の両輪が必要」と話しました。

1.都竹淳也さん「当事者としての現場主義に基づく行政支援」
岐阜県飛驒市長、全国市長会社会文教委員長、医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワーク会長

岐阜県飛騨市長である都竹さんは、重度知的障がいと自閉スペクトラム症を伴う次男を育てる父親としての経験を交えながら、行政における障がい児者支援のあり方について講演。

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都竹淳也さん

都竹さんは、次男が1歳半のときに発達の遅れを感じ、発達支援センターに相談したといいます。しかし「相談まで3ヶ月、診察までさらに半年待ち」と言われ、夜も眠れないほどの強い不安を覚えたといいます。岐阜県庁職員として働いていた当時、この「初診待ちの長さ」を県の政策会議で問題提起し、翌年度に発達障害専門外来設置のための予算(約630万円)を獲得。「自覚者が責任者である」という、びわこ学園創設者・糸賀一雄(注)さんの言葉に出会い、「課題に気づいた自分が率先して取り組むことで、障がいのある我が子が世の中の役に立った証にもなり、親としての務めを果たすことにもつながる」という信念を持つに至ったといいます。

(注)糸賀一雄(いとが かずお、1914年〜1968年)「日本の社会福祉の父」とも呼ばれる、戦後の障害者福祉の先駆者

飛騨市長に就任してからは、弱い立場の人を支援することを市政の最重点に掲げ、市直営の児童精神科の開設や学校作業療法室の設置など、全国初の取り組みを紹介。また、特別支援学校卒業後の「大人の療育」を目的としたC型就労継続支援や、老化防止を目的としたD型就労継続支援など、国への問題提起も込めた独自のネーミングによる実証事業に挑戦していることを話しました。

2. 民間からの報告1
マルイグループユニオン「労使共創による制度改定」
中央副執行委員長・上野瑛子さん、人事企画局・徳武空さん

マルイグループユニオンのお二人からは、2026年4月にスタートした障がい児育児支援制度について報告が行われました。

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マルイグループユニオンの上野瑛子さん(左)と徳武空さん

フルタイム勤務では「放課後等デイサービスの送迎(17時頃)に間に合わない」という切実な声を背景に、労使で実態を把握し制度を見直し。子どもが18歳を迎えるまで利用できる短時間勤務、早番固定のフルタイム勤務制度などを導入しました。当事者の離職防止だけでなく、制度説明会や職場での対話会を通じ、非当事者の社員にも課題の解像度が上がり、誰もが働きやすい環境づくりに対する前向きな意見が寄せられるなど、対話を通じた組織風土の変革にも大きく寄与してるとのことでした。

3. 民間からの報告2
荏原製作所「社内勉強会から始まる親の会の設立」
佐藤礼さん、赤津美樹さん

続いて、荏原製作所のお二人からは、社内の自主開催勉強会を活用した当事者ネットワーク構築の取り組みが報告されました。

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荏原製作所の佐藤礼さん(左)、赤津美樹さん

重度知的障がいのある子どもを育てる佐藤さんは、赤津さんのサポートを得て、「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会はどんな会?」というテーマで全3回のオンライン勉強会を開催し、延べ189人が参加。当事者のリアルな実態や「18歳の壁」を発信したことで、非当事者や管理職の理解が深まったといいます。これを機に社内に当事者ネットワークが発足し、生活の工夫や悩みを共有する場として機能するほか、事業部の垣根を越えた繋がりが仕事を進める上でのメリットにもなっているとのことでした。 

4. 「育児と仕事の両立支援ハンドブック」の紹介と法改正の意義

最後に、親の会会長の工藤さほさんより、新たに発行された「育児と仕事の両立支援ハンドブック」の紹介と、関連する社会状況についての説明がありました。

工藤さんは、障がい児や医療的ケア児を育てながら働く親には、「復職」「育休明け」「就学後」「18歳以降の居場所」の「4つの壁」と、当事者の就労は、税や社会保障費として約8,155億円の経済効果を生むとの試算も紹介されました。

2025年度施行の改正育児・介護休業法では、従業員に対し個別の意向聴取と個別の配慮が事業主の義務になりました。さらに、障がい児や医療的ケア児の親やひとり親には職場が設けている育児支援制度の上限を超えて、短時間勤務や看護等休暇などを付与するよう厚生労働省は指針で示しました。

介護支援制度は以前から利用できましたが、高齢者しか使えないと誤解されやすいため、利用期限はこれまで通り、短時間勤務は3年間などと変わりませんが、障害児や医療的ケア児も対象であるということを明記しました。工藤さんは、「法律が浸透するには時間がかかるため、当事者が労働組合等を通じて声を上げ、課題の見える化を進めることが鍵となる」と呼びかけました。

5. おわりに

本セミナーを通じて、当事者の声が組織や社会を動かす好事例が共有されました。会場参加者限定で開催された、セミナー後の交流会では「自分の職場でも相談してみる」と前向きな決意を語る参加者もおり、当事者の背中を押す場となりました。

今まで開催した5回のセミナーでは、当事者同士の交流により障がいのある子どもを育てながら働くことの課題を浮き彫りにし、課題の存在を知ってもらうこと、理解してもらうこと。そして、行政関係者、職域関係者らと対話を重ねることで支援者を増やすことなどを目標にしてきました。当事者、職域、行政の連携によって生まれたこの変化の輪が、今後さらに広く社会全体へと波及していくことを願っています。

アーカイブ

セミナーのアーカイブはこちらからご覧いただけます。

セミナーでご紹介した冊子、登壇者の資料はこちらからダウンロードしていただけます。

飛騨市長 都竹淳也 さん 資料

マルイグループユニオン 資料

株式会社 荏原製作所 資料

一般社団法人障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会 資料

ケアが必要な子×働く親 育児と仕事の両立ハンドブック

アーカイブ映像

第1回連続セミナー「障がい児を育てながら働く 綱渡りの毎日」

第2回連続セミナー「取り残される障がい児・医療的ケア児の親たち」

第3回連続セミナー「多様性を認め合う風通しのよい社会をめざして」