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連載インタビュー
「保育の質」を考える~子どもにとって、より良い保育のために~
第6回:中田純子さん(前編)
文:勝見文子 編集協力:河井健
2024年の出生数は70万人を下回り、過去最低を更新する可能性がある――。厚生労働省が11月に発表した人口動態統計は、深刻な少子化の進行を改めて浮き彫りにしました。
一方で、子育て世代の女性の就業率は上昇傾向にあり、保育ニーズは依然として高いまま。社会問題化した「不適切な保育」や、資格があるのに現場復帰しない「潜在保育士」の存在も踏まえ、保育を預かる自治体にとって、「保育人材の育成や定着」は大きな課題になっています。
「保育士のキャリア形成」という視点からこれに取り組んできたのが京都府。全国初の「京都式保育人材キャリアパス」の策定に関わった同府保育協会副会長で、ひいらぎこども園(宇治市)の中田純子園長に話を伺いました。
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中田 純子 (なかた じゅんこ)さん
社会福祉法人心華会 ひいらぎこども園 理事長・園長、日本保育学会会員、一般社団法人京都府保育協会 副会長
1980年4月~2003年3月 京都市立小学校教諭(2001年4月~2003年3月 京都市作文教育研究会研究部長)。2003年4月~2005年3月 社会福祉法人心華会ひいらぎ保育園副園長。2005年4月~同園長。2013年9月~社会福祉法人心華会理事長。

目次
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1.「京都式保育人材キャリアパス」策定の背景
- 「不適切な保育」の背景には保育士の多忙や専門性の欠如があるとされます。また、出産・育児により保育士としてのキャリアを積んでいくのが難しいことが「潜在保育士」の一因だとの指摘もあります。京都式保育人材キャリアパスはどのようなもので、いかにこれらの課題に対応しているのでしょうか?
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保育人材のキャリアアップについてのモデルが京都式保育人材キャリアパスです。京都府が2017年度に策定しました。保育士と認定こども園の保育教諭に新設された役職に応じ、国が17年度から両者の待遇改善を図ったことなどが背景にあります。
保育士には長く、「園長」「主任保育士」「一般」の三つの役職しかありませんでした。国は主任保育士と一般の間に「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」を新設。一定の研修を受けるなどのことで、これらに就くことができるようにしました。さらに同年度、役職に応じて賃金を月額5千~4万円引き上げました。
一連の動きを踏まえ、保育士らに標準的なキャリアアップの道筋をわかりやすく示す狙いで策定したのが人材キャリアパスなのです。府保育協会なども検討に加わりました。
1.京都式保育人材キャリアパスモデルの内容は、京都市HPをご参照ください。
2.幼稚園や認定こども園においては、役職が保育所の場合と異なります。こども家庭庁HPをご参照ください。
2.「京都式保育人材キャリアパス・パスポート」の特色
- 国の制度改正で、役職がより段階的になり、研修で専門性を身につけることで、若手・中堅がキャリアアップや待遇改善を目指しやすくなったのですね。
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はい。府は役職ごとに「必要な研修」「知ってほしい専門知識、保育実践に必要な技術」「昇格条件」など8項目を、具体的に一覧表で示しました。この人材キャリアパスをモデルに、各園の運営法人は独自の理念などを加え、保育現場で活用しています。
- 待遇が改善され、キャリアアップの道筋が見えると、保育士らはやりがいをもって長く働いてくれそうですね。結果として、保育士不足や多忙感の緩和、専門性の向上などにもつながるように感じます。
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そうしたことを期待しています。
人材キャリアパスの策定時、府は「京都保育人材パスポート」というノートも作り、府内の保育士らに配りました。キャリアアップにつながる研修を受けた際、保育士らがそれを自ら記録・保存し、持ち運べるようにするためです。これは京都ならではの取り組みでしょう。研修は府から委託された協会が行ってきました。受講者にはその都度、修了証を渡していたのですが、パスポートにまとめることで、「自分はこういう研修を受けてきた。キャリアアップのためにはほかにこんな研修が必要なのだ」と理解しやすくなったと思います。
また、潜在保育士など一度離職した人が、別の園で復帰する際にも、過去の受講歴が就職先に伝わりやすい。キャリアに見合う賃金につながることも期待しています。
中田先生がご所属の、京都府保育協会のHPです!↓
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中田純子さんのインタビュー記事【後編】はこちら