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連載インタビュー
「保育の質」を考える~子どもにとって、より良い保育のために~
第5回:野上美希さん(後編)
文:勝見文子 編集協力:河井健
野上 美希 (のがみ みき)さん
社会福祉法人風の森 統括、学校法人野上学園 主事、株式会社野上アカデミー 代表取締役、一般社団法人キッズコンサルタント協会 代表理事
シンクタンク、人材会社にて人材紹介事業の立ち上げに従事した後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わる。成長著しい時期である0歳~9歳(シングルエイジ期)においての一貫した教育を提唱し、子育てひろばや学童保育、社会福祉法人風の森を立ち上げ、6つの認可保育園を開設。現在は児童発達支援、病児保育、一時預かり等の多機能化も実現。保育者の働き方改革を業界に先駆け10年前より実践し、全園で国基準の 2 倍以上の保育士確保を実現。採用難の業界の中、中途採用倍率14倍の厳選採用を実現している。

目次
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1. 保育士を増員した方法
- 国の基準の2倍以上の保育士を配置するといった「働き方改革」ですが、経営的に厳しい園も少なくない中、なぜ可能なのでしょう?
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私たちにも打ち出の小槌があるわけではなく、行政の補助金を集める地道な努力を続けています。例えば、保育士の配置を手厚くしたり、職場・育児体験の小中高生を受け入れたりすると、(園がある)杉並区や東京都から補助金が出ます。こうしたいくつもの事業で得られたお金を、保育士の人件費に充てています。
- 保育士の採用についてはどうでしょう?
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ここ数年、風の森では(就職情報誌といった)求人媒体を使わず、代わりに若い女性らになじみの深いインスタグラムなどSNSで採用活動を行っています。私たちがどのような思いで保育園を運営しているか、それらを発信し、共感してくれた保育士の方々に、全国からエントリーしていただいています。
- 保育士不足の一因として、資格があるのに出産や育児で離職し、現場復帰していない「潜在保育士」の存在があるとも指摘されています。
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「夫の仕事の関係でどうしても園に戻れない」という1人の方を除くと、風の森の保育士の育休復帰率は3年連続100%です。
背景としては、私たちが保育士のキャリア形成を重視している点があるかと思います。最早、最遅の時間のシフトは難しくても、8時-18時の間で対応可能なシフトに入ってもらい、担任として保護者対応も行いながらキャリアも積んでもらう。もちろん、時短勤務も利用できます。
2. こども誰でも通園制度
- 国は2026年度の本格実施を目指し、「こども誰でも通園制度」の試行を始めています。保護者の就労の有無に関わらず、一定の時間内であれば誰でも保育園に子どもを預けられるようにする制度です。現場からは賛否の声が上がっているようですが?
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考え方には賛成です。子どもがほかの子や保護者以外の大人と関わるのは望ましいことだからです。
制度の運用は①(制度を利用し通う子どもを)専任の保育士が専用の施設で行う②定員に空きがある保育園で行う――という二つのやり方に大別されます。①であればスムーズにいくと思いますが、「余裕活用型」の②だと保育士の負荷が大きくなるのではないかと危惧しています。
毎日見ている子どもであれば、継続して成長を見続けることができます。しかし、週に1回程度の預かりですと同じようにはいきません。事務量も増えます。
いずれにしても、今の経営支援では、どちらの運用でも事業を継続し続けることは難しいと思います。
3. 保育に携わる方へのメッセージ
- 保育に携わる方へのメッセージをお願いします。
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経営者としては、保育士が「やりがい」を持てる環境づくりに心を砕いています。「経営者は保育士を大事にしている」ことをしっかり伝える。それにより、両者の信頼関係が生まれると思います。
子どもの存在は尊く、周りの大人を幸せにしてくれます。その育ちに伴走する保育士も、また尊い職業です。働きやすさや働きがいが感じられれば、潜在保育士の方々も、現場に戻ってきてくれるかもしれません。
休憩時間(カフェ風休憩室で) パソコンを使う保育士
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