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朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 連載インタビュー 「保育の質」を考える~子どもにとって、より良い保育のために~ 第4回:小崎恭弘さん(後編)

最新のお知らせ

連載インタビュー
「保育の質」を考える~子どもにとって、より良い保育のために~
第4回:小崎恭弘さん(後編)

文:勝見文子 編集協力:河井健

小崎 恭弘 (こざき やすひろ)さん
大阪教育大学健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門 教授
(元)大阪教育大学附属天王寺小学校長

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験を持ち、「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信を行う。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修等で、全国で年間60本程度講演会等を行う。これまで2000回の講演実績を持つ。NHKすくすく子育て、視点・論点、助けて!きわめびと、ビビット等出演。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、神戸新聞等でそれぞれに連載を持つ。父親の育児を支援する団体のNPO法人ファザーリング・ジャパンの顧問を務めている。

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目次

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1. 社会の変化

保育の現場では、大きな声で集団を動かせる保育士が評価されやすいとも耳にします。

研修などで、私はある有名な物語りを例に出すことがあります。舞台は保育園。保育士が、お昼寝の時間にはしゃいでいた男の子2人を怒り、腕を引っ張って押し入れに閉じ込める場面があります。これは今の保育現場ではアウトですが、物語りが世に出された1974(昭和49)年の社会には、それを許容する価値観がありました。

念のために申し添えますが、今の価値観と合わないからといって、この作品が駄目だと言うわけではありません。あくまでも社会の変化について説明しています。

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昭和と比べ、平成や令和は、暴力や暴言に対する社会の目が各段に厳しくなりました。それでも、価値観を更新できないベテランも一部にいます。かつてその物語りのようなやり方で評価されてきたからです。

昔と比較すると、法制度なども整備されてきました。保育施設での保育の基本的な考え方や狙いなどについて国がまとめた「保育所保育指針」は、1965(昭和40)年に策定され、その後何度か改定されました。現在の指針で、保育施設は「子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」と位置付けられています。この「子どもの最善の利益を考慮」という一文は、子どもの人権を尊重することの重要性を意味しています。

脅す、大声を出す、叩くなどは、指針からも逸脱していますね。

はい。幼く未熟だからこそ、子どもには保育が必要なのであり、暴力や暴言は、保育の否定です。

「言うことを聞いてくれず、手がかかるから、不適切な保育をしてしまった」という保育士の声が報じられ、その背景には、保育士不足や過酷な労働環境、配置基準の問題があるとも指摘されています。

とはいえ、ほとんどの保育士は不適切な保育をしていません。保育士を取り巻く状況は、問題の遠因としてありますが、直接の原因ではないと考えます。

2. 保育現場で行うべきこと

不適切な保育を回避するため、現場で何を行うべきですか?

次の六つだと考えます。

①施設では人権に対する意識を育み、尊重する文化を作る

②保育士の人権意識を高める

③保育士の人権が守られる組織にする
(子どもの人権を守る保育施設で、人権侵害にあたるパワハラなどが起きないようにすること)

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④専門職として研修を受け、研鑽する

⑤正しい子ども観と保育観を涵養する
(「子どもは大人と対等な人権がある」と理解し、人権意識や倫理観を持つこと)

⑥管理者は組織マネジメントを重視する

3. 保育に携わる方へのメッセージ

最後に保育に関わる皆さんへのメッセージをお願いします。

少子化が進む一方、女性の就業率は上昇し、保育ニーズが高まるなど、保育を取り巻く状況は厳しくなっています。ですが、今や保育はこの国を支える重要なインフラの一つ。誇りを持って関わっていただきたいと思います。

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小崎先生の研究室のHPです!↓

https://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html

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小崎恭弘さんのインタビュー記事【前編】はこちら