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連載インタビュー
「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!
第7回 :塩田祐子さん
塩田 祐子 (しおた ゆうこ)さん
プリズンライフアドバイザー、特定非営利活動法人 監獄人権センター相談員
ボランティアスタッフを経て、2014年より監獄人権センター職員。刑務所・拘置所の中の人権(主に刑務官から受刑者への人権侵害)に関する相談に対応している。全国の受刑者から寄せられる手紙相談は年間1200 件。死刑制度、無期懲役、刑務所処遇をテーマに執筆活動も行っている。
目次
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つながるくんコラム
1.しおたさんは、どんな人?
- しおたさんのこと、教えてください。
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小さいころから、自分は少し変わっているのではないかと感じることもあり、「こだわりが強い」と言われる事も多々ありましたが、人との違いを自分自身で楽しんでいたと思います。
田舎から上京して、昔からの夢だった放送作家を目指し作家学校に入学。学校には私のほかにも「変わった人」が多く、すっかり雰囲気になじみました。
放送作家になったら社会問題を扱うドキュメンタリーの台本をつくりたいと考えていましたが、いざペンを持つと、何を書きたいのか、わからなくなりました。
情報収集のために図書館で本を読み漁るなかで、自分の家から歩いて行ける距離に東京拘置所があり、そこで「死刑執行」が行われていると知ったことが、現在の活動に取り組むきっかけになりました。
2.現在の活動に出会うまで
- なるほど!監獄人権センターに出会うまでのことも教えてください!
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これほど身近な場所で死刑が執行されていると知り、とても驚きました。作家学校の友人達に話してみると、みんな「知らなかった」と言うのでさらに驚きました。私が上京したばかりで東京の事を知らなかったのではない。東京に住んでいる人たちも死刑の事を知らないんだ、と思い、死刑制度には調べる意義があると感じ、深く取り組むようになりました。
現在勤める監獄人権センターについても、死刑制度を調べる中で知り、団体が発行する機関誌の発送作業を手伝うようになりました。そのうち、発送作業だけでなく、相談者からの相談に返事を書くボランティアをするようになり、その後5年が経過したころ、現職となりました。
3.活動の内容
- 監獄人権センターはどのように誕生したの?
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私たちの団体がこの活動を始める1995年以前は、受刑者の権利擁護を専門的に扱う団体は日本にはまだ存在せず、日本弁護士連合会が窓口となり、海外の受刑者支援団体と交流していました。
弁護士の人達が、刑事事件の裁判をきっかけに被告人と関わる中で、刑務官から暴力を受けた、重い病気があり治療をしたい等、刑事事件の内容以外の問題を抱えている人が多い事を知り、問題解決のためには専門的に対応する団体が必要だという声が高まり、監獄人権センターが設立されました。
相談が増えるにつれ、ボランティアとして協力してくれる人も増えていきました。
- 活動の内容を教えてください!
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現在受刑している人たちの相談にのること、出所した人の相談にのることが主な活動です。
受刑している相談者とは基本的には会えないので、団体設立当初は手書きの手紙でやりとりしていましたが、1通1通返事を書くのは大変な労力が必要なうえ、投函してしまうと記録が残りません。そのため、相談内容やアドバイスを記録に残る形にしようと、データベース化にも取り組んできました。
データベース化してみると、お悩みはパターンに分けられることがわかり、パターンごとにQ&Aとして冊子にまとめ、それを相談者に送ることで、熟練の相談員でなくても、お悩みの解決に役立つ情報を提供できるようになりました。
受刑者向けの相談対応パンフレットは、インターネットで無料で公開しています。
https://prisonersrights.org/message/prisoner/刑務所を出所した人からの相談では、電話やメールを通じてお金がなくて困っているという人には生活保護の申請について説明をしたり、受刑していたことを誰に、どこまで打ち明けるのが良いか、という相談にのったりしています。
また、例に挙げたようにお金がないから困っている、と困りごとがはっきりしているケースばかりとは限らず、なぜ困っているのか、何に困っているのかがわかりにくいことも多々あります。まだ件数は多くありませんが、実際に相談者に同行することもあります。
役所に行き慣れておらず、一人で行くと質問の趣旨と異なる回答をしてしまったり、相手に誤解を与えるような答え方をしてしまったりすることもあり、そういったコミュニケーションをすれ違いが起きないようにサポートをします。
4.社会の「バリア」
- 受刑者や出所者の支援をする中で、「バリア」を感じることはありますか?
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「就職」に壁があると感じます。受刑歴を履歴書に書きたくないから履歴書不要の求人情報を探す人も多いのですが、そういった求人情報は建設業を始めとする肉体労働に多く、向き不向きがあり、長く働き続けられない場合も多くみられます。
ハローワークには、出所者向けの求人窓口もあるのですが、そういった求人を出す会社は社長さんだけは受刑の過去を知っているけれど、ほかの従業員は知らないというケースもあります。ひょんなことから受刑していた過去が明るみに出て、職場にいづらくなって退職、ということもあるようです。
5.社会に変化をのぞむこと
- しおたさんが感じる「バリア」解消のために、なにが必要だと思いますか?
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一番の望みは、受刑の過去を明かしてもそれを受け止めてくれる社会になることですが、それは現状ではとても難しいと感じます。
罪を償って出所した人が、自分に合った仕事を選べるようになると良いなと思います。その人の収監されるまでの経験として日雇い労働の経験しかなかったり、収監されていた期間が長かったりすると「職業へのイメージ」が乏しい場合も多く、やりたい仕事自体がない、ということもよくあります。
そういった人たちが、例えば、漫画が好きだからアニメーションについて学ぶ専門学校に行くという「チャレンジの機会」を持てるようになると良いなと思います。
今でも、刑務所出所後に職業訓練校に通う人もいるのですが、こういった制度を利用する人がもっと増えてほしいと思います。
- 受刑歴の受け止めが難しい現状は、どうしたら改善すると思いますか?
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X(旧:Twitter)を始めとするSNSの趣味のコミュニティなどでは、仲良くなった人に受刑歴を明かしても逆に興味を持って話を聞いてくれたと言っている人もいました。その後、対面での友人関係が生まれるかどうかは別として、自らの身の上話をするきっかけとして、SNSは役に立っていると感じます。
つながるくんコラム①
監獄人権センターについて
しおたさんの働く監獄人権センターについて、詳しくは団体のホームページを見てみて ね。
つながるくんコラム②
「発達障がい」とともに生きる 豊かな地域生活応援助成について
- 監獄人権センターは、朝日新聞厚生文化事業団が行う「『発達障がい』とともに生きる 豊かな地域生活応援助成」の助成金を受けて発達障がいのある出所者支援も行っているよ。この活動について教えてください。
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さまざま相談対応していると、障がい者手帳を保有しておらず、そもそも医師による診断を受けたか定かでない場合も多いのですが、個別サポートが必要と感じる人の中には、発達障がいの傾向が強いのではないかと感じることもあります。
発達障がいの二次障がいのような形で依存症を発症した人を依存症治療の医療機関につなげても、医師との相性が合わず通えなくなってしまったりしました。一つの資源につなげたからといって、そこでおしまいとならず、問題が次々と見えてくるというケースが多いです。コミュニケーションが苦手な場合には、周囲からも孤立してしまう、困りごとを上手く言語化できないといった特徴もあり、継続した支援を行っています。
「『発達障がい』とともに生きる 豊かな地域生活応援助成」の詳細はこちら。
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