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連載インタビュー
「保育の質」を考える~子どもにとって、より良い保育のために~
第1回 テーマ:子どもとの関わり(後編):福田翔さん
文:河井健
福田 翔 (ふくだ しょう)さん
株式会社ソングブックカフェ・あそびうた作家
都内の保育園に8年間勤務した後、2014年より、あそびうた作家として活動開始。全国でファミリーコンサート、保育者向け講習会等を行っている。 2018年、「おかあさんといっしょ」(NHKEテレ)2月の月の歌『おはよう!』の作詞・作曲を手掛ける。「アンパンマンくらぶ」(BS日テレ)に出演。2020年、『おいで おいで』(赤ちゃんとママ社)で絵本作家デビュー。自身初のオリジナルフルアルバム『ともだちの花』(日本コロムビア)発売。2023年『福田翔の ~音とあそびのワンダフル☆ワールド~』(日本コロムビア)発売。
目次
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1.保育士の待遇改善について
- 官民挙げて女性活躍推進がうたわれる一方、ニュースでもたびたび取り上げられていますが、子どもの受け皿となる保育園で働く保育士さんの待遇については、どう思われますか?
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改善してほしいと感じます。たとえば、20万円だった月給が10万円アップすれば、資格や経験はあるけれど、結婚・出産などで辞めてしまった「潜在保育士」の方が現場に戻ってきてくれるかもしれません。国が待遇をきちんと保証することで、いろいろ回っていくことも多いでしょう。
ただ、給与面以外の問題もあると感じています。職場の人間関係などで心身を病んでしまい、休まれている方も少なくないと聞きます。また、地域差はあると思いますが、少子化で経営が成り立たなくなってしまった保育園や、待機児童が解消されつつある自治体も増えてきたようです。
待遇改善は必要でしょうが、保育士さんの確保ついては、全体的なバランスを考えることが必要な時期に差し掛かっているのではないかと感じています。
2.子ども本人にとっての「保育園」
- 働く女性の数は2012年から2021年までに約340万人増加しました。この間、待機児童は大きな社会問題になり、保育園の定員も急増。結果として保育園に通う児童が増えました。子どもにとって、乳幼児期を保育園で過ごすメリットについて、どのようにお考えでしょう?
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保育園に通っていない子どもは、お母さんやお父さんと自宅で愛情あふれる時間をたっぷり過ごせる良さがあると感じます。一方で、保育士だった経験から言うと、幼いころから集団で生活することの利点もたくさんあると思っています。
僕は保育士1、2年目のとき、0歳児クラスを担任しました。赤ちゃんって、周りをとてもよく見ているんですよ。ほかの子がハイハイしていると、本能なのか、自分もやりたくなるようなんです。もう少し成長すると、歩いている子がそばにいれば、つかまり立ちをしようとする。すごく成長が早く、刺激があるのだろう、と感じていました。
また、同じ園内に異なる年齢の子どもがいるのも良い点だと思います。
たとえば、3歳児が年長さんの遊びを見る。年長さんの部屋に行っておもちゃを使う。こういうのは本人にとって、とてもわくわくする体験ですし、お兄さんやお姉さんから遊びを通していろいろ教えてもらえる機会にもなります。社会性の根っ子というか、ルールを学べ、人間関係も育まれる。保育の5領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)を集団のなかで体験できるのが、保育園の良さだと思います。
3.あそびうた制作のアイデアの源・大切にしている視点
- 福田さんがあそびうたをつくられる際に意識していることがあれば教えてください。
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子どもたちがコミュニケーションを体感できるものにしたいと思っています。ふれあって、気持ちが通じ、笑いあえ、楽しめる。あそびうたが心の架け橋になればいいなと考えて、歌をつくっています。
僕がつくる歌は0~2歳児の乳児が遊べるものが多いのですが、3~5歳の子どもでも楽しんでもらえるように意識しています。また、保育園は四季を大切にしているので、春夏秋冬それぞれの季節に絞り込んだテーマで考えることもあります。
具体的な曲づくりでは、思い浮かんだメロディーをボイスレコーダーに撮っておき、それに歌詞をかけあわせてつくる場合がありますね。
4.コンサート失敗談と改善の仕方
- コンサートなどでの失敗談はありますか?
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最初は児童館の夏祭りや神社のお祭りのステージなどであそびうたを披露していました。ステージには朝からいろんな方が出演していらっしゃる。お祭りの売り物が全部売り切れ、店が閉まるころになって、ようやく僕の出番が回ってきたことがあったんです。そのときの観客は親子2組だけでした(苦笑)。
これも最初のころですが、児童館でコンサートをしたとき、お客さんから「もうちょっと笑顔でやったほうがいい」とアンケートで指摘されました。
また、保育士さん向けの研修会で講師を務めた際には、伝えたいことがうまく伝わらず、曲が終わるごとに、会場がシーンとなってしまうことがよくあったんです。これは遊びのポイントを合わせて説明するなどし、改善していきました。
- 活動を始めた当初は、ステージがなかなか盛り上がらなかったようですね。なにが問題で、どのように変えていったのですか?
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駆け出しのころは、自分自身がドキドキし、「どうやってステージを進めていくか」ということばかり考えていたんです。目の前のお客さんが見えていませんでした。これでは自分もお客さんも楽しめるはずがありません。
そのことに気づき、笑顔を心がけたり、お客さんにステージの前でしゃべっていただいたりしてみたんです。すると、空気が変わりました。それからは、お客さんと一緒に楽しむことを大事にしています。
5.保育に携わる人へのメッセージ
- 最後に、保育に携わる方へのメッセージをお願いします。
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僕の息子も保育園に通っています。
保育士さんは女性も男性も、子どものためにすごく頑張っていらっしゃる印象があります。息子の保育園でも、子どもたち一人ひとりの個性を丁寧に見てくださって、本当にありがたいと感じています。一方で、頑張りすぎないでほしい、とも思うんです。自分のことも、もっと大事に、大切にしていただきたい。すべての保育士さんに、自分らしく日々をすごしてもらえたらな、と感じています。
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福田翔さんのインタビュー記事【前編】はこちら