~支え合う安心社会の実現に向けて~
朝日新聞厚生文化事業団は「福祉を支える地域づくり」「福祉を担う人づくり」「支援の輪づくり」を軸に社会福祉事業に取り組んでいます。

朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 連載インタビュー 「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう! 第4回 :野々山綾乃さん、山本羽奈さん

最新のお知らせ

連載インタビュー
「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!
第4回 :野々山綾乃さん、山本羽奈さん

野々山 綾乃 (ののやま あやの)さん

愛知淑徳大学 文学部教育学科卒業。

27552402

山本 羽奈 (やまもと はな)さん

愛知淑徳大学 交流文化学部交流文化学科在学中。

27552403

大学での授業をきっかけに、NPO法人アジア車いす交流センター(WAFCA)と協働し、子どもたちに向けた「心のバリアフリー」について学べる絵本「こまっているひとがいたらどうする?」を製作。クラウドファンディングで資金を集め、100冊を発行。日本語のほか、3か国語に翻訳されている。絵本中のイラストを野々山さんが、英語、タイ語、インドネシア語への翻訳手配を山本さんが行った。絵本製作の活動は朝日新聞紙面上でも取り上げられ話題に。

朝日新聞紙面の内容はこちら

2021年9月20日付朝日新聞「バリアフリー 絵本で世界に発信」(承認番号23-0938)
※朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。

目次

※質問の横の+マークを押すと全文が表示されます。

1.ののやまさんとやまもとさんは、どんな人?

野々山さんと山本さんのこと、教えてください。

(野々山)愛知淑徳大学を昨春に卒業し、教育関連の会社に勤めています。小さいころから学校の先生や指導者、子どもと関わる仕事に就きたいと考えていましたが、さまざまな働き方を検討するなかで、間接的に教育に携わることを決め、現在の職場を選びました。

(山本)現在も愛知淑徳大学に在学しています。中学時代に父の仕事の都合によりタイで生活したことがあり、この国が大好きになりました。大学生活がコロナ禍とともに始まり、思うようにタイを訪問できず残念に思っていましたが、タイとつながりの強いWAFCAさんというNPO法人がインターンを募集していることを知り、WAFCAさんの活動にも積極的に参加しています。WAFCAさんはアジア諸国での車いす普及活動を行っている団体なんですよ。

2.絵本を製作することになったきっかけ

お二人は学部も学年も違いますが、どのような経緯で絵本をつくることになったのですか?

(野々山)愛知淑徳大学では、「学問」のみならず、地域や社会、世界でおこっている問題に対し、企業や団体と協働して解決策を考える「コミュニティ・コラボレーションセンター」という窓口があります。地域の団体や企業の方に講師となっていただき、社会で生きるスキルや、自ら考え、行動する力を育むことを目的とした講座が設けられており、履修科目の一つに採り入れられています。

私もこの授業を履修しており、NPO法人WAFCAさんが講座を担当していました。

27381697

WAFCAさんから「コロナ禍でもできる障がい者支援とは?」という課題が出され、解決策を考える中で絵本製作の構想が生まれました。

私はもともとイラストを描くことやものづくりが好きだったので、自然と絵本を思い浮かべました。

授業での絵本作りという解決策が好評で、実際に製作することになりました。案を出した際には4人グループでしたが、いざ製作する段では私ともう一人、大野さんという学生の二人になっていました。

(山本)私は、実はこの授業を履修していませんでした。ですが、インターンシップによりWAFCAさんとのつながりがあり、団体のスタッフから同じ大学の学生が世界の子どもに向けた絵本作りをすると聞き、仲間に入れてほしいとお願いしました。

つながるくんコラム① 

コミュニティ・コラボレーションセンターの取り組みをクローズアップ!

愛知淑徳大学 コミュニティ・コラボレーションセンターHP

3.絵本製作時のエピソード

3人で始めた絵本製作。大変だったこと、工夫したことを教えてください。

(野々山)3人とも面識のないままオンライン上での打ち合わせで知り合いましたが、相性が良かったのか、「製作メンバー」としてではなく、「友達」として仲良くなれました。

インタビューに参加していない大野さんが文章を担当してくれ、言葉遣いや表現の仕方を自分なりに工夫したり、本屋の絵本コーナーを視察に行ってくれたり、最終的にはみんなで相談しながら大筋を固めていきました。

27381698

私自身も、絵をどのように描いたらわかりやすいだろうかと悩み、好きな児童書を参考にしたり、自分自身の幼稚園での実習などの経験から絵を考えていきました。

(山本)野々山さんが絵本のイラストを担当していたのに対し、私は絵本を形にする上での印刷会社探しをしたり、翻訳を担ってくれるつてを探したりすることが担当でした。

完成したタイ語への翻訳版を読んだ友人からは「こどもにわかりやすい表現だね」といってもらえたことが嬉しかったです。

また、手に取るのが子どもということを意識し、絵本に使用する紙質は、汚れが目立ちにくそうなものを選びました。

完成した絵本を近隣の幼稚園や保育園で読み聞かせをしたそうですね。子どもたちの反応はどうでしたか?また、読み聞かせの際に工夫したことを教えてください。

(野々山)近隣の刈谷市の子どもたちに読み聞かせの機会がありました。みんな真剣に聞いてくれて、読み終わった後には「良かった」と言ってくれる子どももいました。子どもたちの心に残る絵本になったのではないかな、と感じられる反応でした。

(山本)どのように読み上げたら内容が伝わるか、とても悩みました。どうしたら困っている人を助けられるか、子ども自身にも考えてほしいので呼びかけるように読んだり、問いかけから少し間を置いてページをめくったりすることを心がけました。

27381697

4.絵本製作で変わったこと

絵本製作の経験がきっかけで、変わったことはありますか?

(野々山)絵本を作り始めた時期は、ちょうど就職活動の時期と重なっていました。活動が大変で「自分の長所って何だろう」と悩んでいた時に、自分のアイデアを評価してくれる人がいて、またアイデアを実現する実行力があることがわかり、自分の強みを認識するきっかけになりました。

現在の仕事でも、自分が考えた企画が世に出ると思うとワクワクします。

(山本)私の場合、絵本を通じてタイでのバリアフリー意識の広がりを実感しました。

私がまだ中学生だったころは、タイの田舎に暮らす足の不自由な人は、移動のための車いすがなく、おむつをはいて日中、天井を見て過ごすという人を見かけましたが、6~7年経った今では駅にもエレベーターといったハード面での整備が進み、出歩いている人を見かけることも多くなりました。

絵本に出てくる車いすの人も、自然と受け入れてもらえる環境になってきたのかなと感じました。

5.社会の「バリア」を感じること、「バリア」解消の取り組み

世界のこどもたちに向けて「バリアフリー」を意識してもらうきっかけを作ったお二人ですが、日ごろの生活で「バリア」を感じることはありますか?

(野々山)私の働く会社にも、障がい者雇用枠で働いている方がいらっしゃいます。仕事の内容が決まったものが多いように感じられ、この内容に納得、満足して従事していれば良いのですが、「自分はもっとやれる」と感じている従業員もいるのではと感じるときがあります。障がい者雇用枠をもっと広げ、それに伴って仕事の幅を増やす、「任せられるシステム」を体系化する、といった取り組みが必要なのかなと感じています。

(山本)私自身は、タイでの経験から「バリア」が低くなりつつある状況を目の当たりにしています。この調子で「バリアフリー」化が進むよう、それを望む気持ちを伝染させていく必要があると感じます。 そのためには、お互いを知るための簡単な交流を始めるのが第一歩かなと感じます。

私がインターンシップを行っているWAFCAさんでも、協力者を集める際、福祉や国際協力に興味のある方々だけでなく、企業に勤める会社員の方や、会社を退職された方、事務所近隣の地域の方など、幅広い層の方にまずはWAFCAを知り、関わっていただけるようにイベントやさまざまな取り組みを行っているんですよ。

つながるくんコラム② 

WAFCAさんの活動について教えて!

特定非営利活動法人 アジア車いす交流センターHP

野々山さん、山本さんの絵本製作についても、このページで紹介されているよ!
特定非営利活動法人 アジア車いす交流センター「国内でできる交流活動」・絵本プロジェクト

6.バリアフリーの理解を深めるために取り組みたいこと

では、その「バリア」を解消するためにご自身が取り組んでいること、今後取り組みたいことはありますか?

(野々山)日ごろの生活の中で、健常者と障がいのある人とが分断されていると感じることがあります。障がいがあっても、ちょっとした手助けで発揮できる能力が広がると思うので、どのような手助けが役に立つか、もっと社会で考えていければ良いなと思います。

また、絵本製作の経験から、周りにわかってもらうためには自分から動かないといけないと感じました。今は「こまっているひとがいたらどうする?」以降の新しい製作活動をしていませんが、また機会を見つけて自分の考えを発信していきたいと考えています。

(山本)私は日本とタイを行き来する生活を通じて、「違い」を楽しめる人間だと感じています。例えば、タイではトイレの水を流すためにはバケツで汲んだ水を便器に向かって流し込まなくてはいけませんが、そういった日本のスタイルとの違いを不便とは思わず、楽しんでいます。また、言葉が通じなくても、相手に興味を持って会話をしているので「その場」を楽しく感じます。

そういった経験から、相手に興味を持って理解したいという気持ちを持ちながら、相手の困っていることを聞き、自分が出来ることを伝えるという関係を作れることが心のバリアを解くことにつながるのでは、と思います。

つながるくんおススメ!

絵本「こまっているひとがいたらどうする?」

日本語版
英語版
インドネシア語版
タイ語版

この記事を読んでの感想はこちら
※アンケートフォームに遷移します。