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連載インタビュー
「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!
第2回 :片平考美さん(後編)
片平 考美 (かたひら ちかみ)さん
日本視覚障害者団体連合・青年協議会会長、静岡県立静岡視覚特別支援学校・小学部教諭
盲学校に通算13年勤務し、小学部を担当している。先天性のロービジョン当事者でもある。全国規模の当事者団体の青年部組織を取りまとめ、視覚障害青年の意見を集約し、社会でもっと活躍できる環境づくりのために理解啓発活動を行なっている。

目次
※質問の横の+マークを押すと全文が表示されます。
1.社会の「バリア」
- 日ごろの生活や仕事を通じて、社会の「バリア」を感じることはありますか?
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催しの打ち上げなどで、当事者団体のメンバーと食事に行くことがあります。そのお店での注文方式がタッチパネル式ということがあります。
そこで「私たちはうまく使えない」と言ったときに「ではどうしましょうか」と一緒に考えてくれる場合にはバリアは感じません。ですが、「ではほかのお店に行ってください」と言われてしまうと、それが「バリア」だと感じます。
2.「バリア」解消の取り組み
- バリアを感じたときに、かたひらさんはどうしますか?
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「バリア」を前面に出した対応をされると、本当はカチンとくることがあります。ですが、イラっとしても何も生まれず、喧嘩しても意味がないので、気持ちを落ち着かせて「交渉」に臨みます。
また、個人のSNSで不平不満を投稿する風潮もありますが、マイナスの攻撃をすると視覚障害者に対して身構えてしまう人が増えてしまうのではと懸念しますし、発信をするならプラスの賞賛の方が相手や企業の心に響くと考えています。
たまたま視覚に障害があるために、ほかの人にできることが自分にはできないのは残念です。できないことを、どうしたらできるようになるか、一緒に考えてくれる人が多ければバリアは薄くなったり軽くなったりするのでは、と考えています。
- 「バリア」解消の取り組みをほかにも教えていただけますか。
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「発信」は、「見えている人」が見る媒体で広報しないと誰も見てくれないため、インスタグラムをやっている盲学校もあります。
広島県立広島中央特別支援学校(旧校名:広島県立盲学校)がYoutubeで「ミニ先生」という名称では子どもの学習の様子を配信したり、福井県立盲学校がホームページで「盲学校ってどんな学校?」という項目を設け、学校紹介をしています。
保護者の年齢が若くなっているので、その世代のアンテナに引っかかるよう意識しています。
私の勤務する学校でも、駅に音声案内の機械を設置し、駅を歩く人に向けて盲学校の紹介をしています。音声案内機の下にポスターを掲示し、興味のある人に見てもらえるようにしています。アナウンスの内容は、学校で指導しているマッサージの施術を低価格で体験しませんか、と呼びかけるものです。駅のアナウンス効果かどうかはわかりませんが、学校近隣の人にはリピーターもいて、予約でいっぱいです。
つながるくんコラム
盲学校が発信する学校紹介
3.社会に変化をのぞむこと、変化したこと
- 今と昔で変わったことはありますか?
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私が小さい頃、地域の学校に交流学習に行くと「パンダが来た」かのように物珍しい存在として扱われたり、自分の横を通り過ぎる親子に「言うことを聞かないとあなたも目が見えなくなるよ」といった発言を耳にすることがありましたが、今ではそういったことはなくなりました。
それは、テレビや新聞を通じて障害者の存在が頻繁に報じられるようになり、障害のある人の生活について、ベールに包まれていた部分がオープンになってきたことが大きいのではないでしょうか。偏見を持つのは、ただ「知らない」ということが原因になる場合もあると思います。
また、障害のある人が日常で困っていることを伝えるうちに、高齢者の介護に携わる人が、立場は違えど、介護における困りごととも共通点があると共感してくれるようになったりしたことが、現在に至るまでの変化をもたらしているように感じます。
さらに変わったことといえば、「セルフアドボカシー」という概念が広がりつつあることです。この言葉は「合理的配慮」と対になる考え方で、障害者権利条約が批准された頃から徐々に意識されるようになってきました。
意味は、支援を待つばかりでなく、どのような支援を必要としているか、自ら発信していく力をつけていく、という考え方です。私の勤める学校でも、助けが必要な場合には自ら声を上げるように教えています。
- 今後、社会がどう変わると良いと思いますか?
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社会全体のこととは異なりますが、令和8年に私たちの学校は、盲学校と知的障害のある子どもが通う特別支援学校との併置が決まっています。学校の受け入れ人数が多くなる分、教員も増えるので分担する業務が減り働き方改革にはなります。しかし、生徒数の多い知的障害教育と視覚障害教育では、先生方のもつ専門性は似て非なるものです。また、知的障害のある生徒より、視覚障害のある生徒の方が少ないため、視覚障害教育に携わる教員の数も限られます。
また令和8年に向け、すでに建物の建築工事の準備に入っていますが、建物全体、教室のレイアウトなど、どこをどう工夫するべき障害の種別によっても異なります。併置するにあたっては、より専門性が重要になってくると考えていますが、果たして専門性を磨く機会をどう確保するのか、もっと多くの人に考えてもらいたいです。
一方、合併のメリットを感じる部分もあります。知的障害の分野では、就労支援に力を入れている印象があり、そのノウハウを学べるのは大きな魅力です。かつては見えない人はあんまマッサージの仕事に就くことが多かったですが、年々資格取得の試験が難しくなっており、ほかの選択肢を増やしていきたいと考えています。整形外科や企業のヘルスキーパーの職に就いた子、特別養護老人ホームでの就職を果たした例もありますが、モデルケースは非常に限られています。自活していける働き口を得た例を見たことのない先生もいるのではないでしょうか。
就労支援の分野で、見えない人の特性に配慮しながら、学べるところを吸収していきたいと思います。
つながるくん編集後記
この連載のテーマである「障がいってなに?」について、片平さんから以下のようなお申し出がありました。
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「障害の字を、『障碍』と書いたり、平仮名にしたりするようになりましたが、私のコラムは『障害』で統一してください。
漢字を変えたところで、それでよしとされたくないですし、そもそも障害は障害当事者にあるのではなく、そもそも社会の方に障害を感じているということなのです。漢字を変えてしまったら無かったことになってしまいそうで、怖いです。だからあえて、障害としてほしいです。」
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「障がい」をどう捉えるか、参考になるURLを片平さんに教えてもらいました。
ぜひ読んでみてね!
https://co-coco.jp/series/study/socialmodel_hoshika/
※株式会社マガジンハウス 福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉「“障害”ってそもそも何だろう? 困難の原因を『社会モデル』から考える—」より
https://www.citylift.jp/blog/3233
※シティーリフトかわさき株式会社 お役立ちブログ「障害の社会モデルとは?社会的障壁解消のためにできることを考える」より
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片平考美さんのインタビュー記事【前編】はこちら