~支え合う安心社会の実現に向けて~
朝日新聞厚生文化事業団は「福祉を支える地域づくり」「福祉を担う人づくり」「支援の輪づくり」を軸に社会福祉事業に取り組んでいます。

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これまでの活動

子どもの立場全国フォーラム グループ運営者全国研修会を開催しました

朝日新聞厚生文化事業団では、精神障害のある人やその子どもたちが安心して暮らせる地域社会を目指し、2018年1月に発足した、精神疾患の親をもつ子どもの会「こどもぴあ」とともに活動をしています。

こどもぴあの皆さんと活動をする中で、自分や仲間たちのために始めた活動なのに、新しくつながってこられる方々の支援を頑張るほどに、中心メンバーが自身の思いをはきだす機会がなくなったり、これから先のことをゆっくり考える機会が少なくなったりする、という運営者の悩みが見えてきました。

そこで、こどもぴあさんと共同して、全国で活動をしている、障害のある親やきょうだいをもつ当事者、家族の介護を担うヤングケアラーのグループの運営に携わっている方を対象にした研修交流会を企画し、2021年8月と、22年1月の、全2回のプログラムを開催しました。

第1回「心の動きを見つめる」

運営者が自身の心を見つめる機会にするとともに、団体の枠を超えて支え合える関係づくりを目的に、21年8月22日に開催し、北海道や関東、関西などから11人が参加しました。

プログラム前半は、「心の動きを見つめる~あいまいな喪失について」というテーマで、小嶋リベカさん(国立がん研究センター中央病院緩和医療科ホスピタルプレイスタッフ・公認心理師)からお話をいただきました。

最初に、支え合う上で鍵となる、自分にとって大切な人との心理的な交わりが不在となる「あいまいな喪失」の概念と、それに伴う心の変化について説明がありました。
親の病気が引き起こす不確実な状況の中で揺らぎ、混乱や無力感などの反応を示すのは「当然のもの」で、「パーソナリティーでも家族の問題でもなく、あいまいな喪失のせいという理解が大事」といいます。そして「心のバランスを新たにするにはグラグラ揺らいだ方が近道。なかったことにすると、より不安定になる」と話し、伴走者として心がけたい姿勢やかかわり方、運営者側が疲弊しないためのポイントを紹介しました。

「あいまいな喪失」について説明する小嶋リベカさん

後半は参加者全員で小嶋さんの話の感想や、運営者として感じている迷いや悩みを語り合いました。なごやかな雰囲気の中で、それぞれの思いや活動に共感し、刺激をもらった時間となりました。

第2回「活動を継続するための運営のポイント」

「活動を継続するための運営のポイント」をテーマに、22年1月23日に開催。精神障害のある親に育てられた子ども、聴覚障害の親をもつ聞こえる子ども、障害のあるきょうだいを持つ人、ヤングケアラーのグループなど、全国の10団体から15人が参加しました。ボランティアコーディネーターとして経験豊富な早瀬昇さん(大阪ボランティア協会理事長)を講師に、みんなが無理なく楽しく関わっていけるようになる考え方や手段を学びました。

早瀬さんは、当事者活動の特徴の一つとして、メンバーは自分の課題も抱えながら活動するため、リーダーが孤軍奮闘しがちなこと指摘。草創期を過ぎて第二世代が入ってくると、参加にメリットを求める利用主義的なメンバーが増えるのもよくあることで、そのことがまた負担を大きくするとも述べました。

周りの思いに応えようと頑張る人ほど無理をして疲弊してしまう、自発的な活動で陥りがちな「疲労と不信の悪循環」については、一部の人が抱え込んでしまう環境を変えていくことが対策になると話し、そのためには参加のハードルを低くし仲間を広げる、メンバーの意欲を引き出し任せるなど、具体的な方法を説明しました。

「活動を継続するための運営のポイント」について説明する早瀬昇さん

参加者からは

  • 「上手く頼ることで自立する。できたからやる気がでる。」という言葉に、なるほど、そうだなぁと思った。頼ることが苦手だったり、自信が持てなかったりしがちな、子どもの立場では、知っていると、良い言葉だなと思った。
  • 他の団体の運営メンバーの方も運営の悩みを抱えていることを感じられた。日頃から横のつながりを作れたらいいと思う。
  • やりたい人がやれる範囲でやる、やりたい人が活躍できるような仕組み・配慮が大切。
  • 運営側は、3、4年くらい続けると息切れしてくるし、自分の困りごとを話にくくなるので、このような場は重要だと思った。

などの感想が寄せられました。

アフター交流会

第2回目の研修会の感想や気付きを共有し、団体や地域を超えた交流をさらに深め、次の活動につなげていくことを目的に、3月5日にアフター交流会を開催しました。北海道、関東、九州の4団体6人が参加し、近況や研修会をおえて変化があったことなどを報告しあったほか、活動の悩みやその解決策について、情報交換を行いました。

研修会後、メンバーと今後について話したり、グループの中での自身の立ち位置について見つめ直したり、困っている子どもが支援につながるよう啓発のために取り組んだりなど、心の動きを含め、「変化」があったことが語られました。

違う団体だからこそ話せることもある、違う立場の人と交流することで解消される課題や悩みもある、などの意見も寄せられました。

研修会と交流会の様子

朝日新聞厚生文化事業団では、今後も、障害のある親やきょうだいをもつ当事者のグループ、家族の介護を担うヤングケアラーのグループの、団体をこえた緩やかなつながりをつくっていき、ピアサポートグループの継続を応援します。