これまでの活動
視覚障害の大学生のための「聖明・朝日盲大学生奨学金」第50期生が決まる
視覚障害のある大学生のための「聖明・朝日盲大学生奨学金」(聖明福祉協会、朝日新聞厚生文化事業団主催)の第50期貸与式が5月19日、東京都内のグランドヒル市ケ谷(新宿区)で行われました。新奨学生には東京農業大学の池内風香さんと筑波技術大学の菊地かなさんが選ばれました。
はじめに、聖明福祉協会の本間昭雄理事長が「今から50年前、何か新たな事業ができないかと考えていたところ、点字毎日・初代編集長の中村京太郎先生と出会いました。先生が点字毎日に『有能な盲人が社会に出て、活躍できる人材を育成すること、そのためには育英制度を設けよ』(大正12年4月19日号)と書いておられるのを読み、奨学金制度を作りたいと考えました。当時は視覚障害者の大学門戸開放に先輩方が努力されていました。そのような背景もあり、親しくしていた朝日新聞厚生文化事業団の事務局長に相談したところ、財政的なご支援をいただいて、この事業が始まりました。多くの方々のご理解とご支援もあり、今日まで続いたと思います。言葉では言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいであります」
「新奨学生のお二人は新たな分野を切り開いて勉学に励んでください。一生懸命に頑張って、社会に貢献してください」と、50期生を迎えるにあたって感謝の意とお祝いの言葉を述べました。
続いて、朝日新聞厚生文化事業団の是永一好事務局長が審査経過について報告しました。
池内さんについては「明確な目標を持ち、少しでも家計を助けながら勉強したいという前向きな思いが強くうかがわれる」といった意見が相次いだと説明、菊地さんについては高校時代に学業で優秀な成績をおさめ、また東京都障害者スポーツ大会で入賞するなど文武両道を重ねてきたことなども評価され、いずれも全員一致で貸与が決まったと報告しました。
また、50周年を記念してリオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害者柔道・金メダリストの広瀬誠さん(愛知県立名古屋盲学校高等部教諭)が記念講演し、「変えられないことは受け入れる努力をする、変えられるものは変える努力をする。折れない心を持つことが大切」などと体験を交えて話し、新奨学生に励ましの言葉を送りました。
このほか日本盲人福祉委員会の竹下義樹理事長はじめ多くの奨学生OBも駆けつけ、50年の記念の会を盛大に祝いました。
この奨学金は、視覚障害の学生を対象として1969年に日本で初めて設けられ、奨学生OBのみなさんは弁護士や大学教員、社会福祉や行政などさまざまな分野で活躍されています。今年度の奨学生を含め貸与者の総数は212人となりました。池内さんと菊地さんには毎月4万円が奨学金として貸与されます。
新奨学生の紹介
池内 風香さん(東京農業大学)
大学の地域環境科学部地域創成科学科に在籍。自然環境と調和した社会作りに興味があります。同大学での幅広い視点からの学習や実習を通して、地域の維持・発展に貢献するために知識と体験を積みたいです。将来は地方公務員などの立場で地方創生に関わる職業につきたいと考えています。また大学のオーケストラにも所属し、2歳から習っているバイオリンで、年2回のコンサートに参加することが今から楽しみです。
菊地 かなさん(筑波技術大学)
現在、保健科学部情報システム学科で学んでいます。キャンパスでは同級生と交流しながら、勉学や課外活動に励んでいます。夜遅くまで友人に手伝ってもらいながら補習を行っており、それが少し大変です。夢は視覚障害者も含め、皆が楽しめるゲームの開発です。卒業後はシステム開発分野に就職し、社会の一員として働くことを目指しています。視覚障害者は職種が限られているけれど、今後はゲームやシステム開発など新たな道を開拓していきたい。