これまでの活動
「キャンプホクレレ in HAWAII 2017」グリーフキャンプを実施
震災で大切な人を亡くした子どもたちが、自分の内面にあるグリーフ(喪失・悲嘆)に向き合うことに寄り添い、見守り続ける子どもへのグリーフ事業の一環として、2017年3月から4月にかけて、米国ハワイ州で4泊5日(現地3泊4日)のキャンプを実施しました。
ホクレレに込めた思い
「ホクレレ」はハワイの言葉で「流れ星」を意味します。震災で壮絶な体験をし、大切な人を失ってグリーフを抱えながら生きる子どもたちの願いが、このキャンプを通して少しでも叶うようにと、「流れ星に願いを」の思いにちなんで名付けました。
東日本大震災から5年を迎える2016年3月に第一弾を実施した「キャンプホクレレ」。当時、定員30人で募集をしたところ、124人と予想を超える応募があり、年齢(学年)や地域、申し込み時に「流れ星への願い」と題して書いていただいた作文をもとに44人を選び、やむなく他の80人はお断りすることとなりました。1年間という長い期間準備に時間がかかってしまいましたが、前回と同じ場所での第二弾のキャンプを実施することができました。
今回参加をしたのは、震災で親や兄弟・姉妹を亡くした小学校4年生から中学校3年生の20人。3~6人ごとにグループとなり、各地での集合場所(盛岡、一ノ関、仙台)からハワイでのキャンプ終了まで生活を共にしました。
大自然の中でのあそびとグリーフ
現地では昨年に引き続き、グリーフサポートの拠点キッズ・ハート・トゥー・ハワイの全面的な協力のもと、キャンプを行いました。まず、「参加している子どもみんなが大切な人を亡くした共通の経験を持つ」という環境設定(オープニングサークル)を行ったうえでキャンプを始めることによって、自分の中にあるグリーフに気づき、「あそび」そのものが、彼ら彼女らが抱えるグリーフを表現する時間となります。「大人と一緒にいる」「固いものはなげない」などのルールもみんなで一緒に確認することにより、子どもたちにとって安全と思え、安心できる仲間や大人に囲まれて過ごすことによって、はじめて自分自身のグリーフに向き合うことができるのです。
今回も、ハワイの大自然の中で行うプログラムがたくさんあり、海ではスタンドアップパドル(サーフボードの上に立って乗り、パドルで海をこぐスポーツ)やカヌー、シュノーケリングで遊んだり、ウクレレ、フラダンスなどの芸術にふれたり、シーライフパークでイルカと触れあうプログラムに参加をしたり、同じく親などの大切な人を失った現地ハワイの子どもたちと交流したり、日本ではできない盛りだくさんのプログラムを経験しました。中には「初めて海に入った」という子もいて、「最初はいろんなことを思い出して怖かったけど、とても楽しかった」と透き通った青い海に入り、笑顔を見せていました。
多彩なプログラムの合間には、キャンプ場の中で思い思いの自由な時間を過ごすこともできます。自分自身の内面に向き合い、その反応を表す適切な活動を自身で選ぶことができるので、バスケットやサッカーで汗を流す子もいれば、パラシュートの紐を編んでアクセサリーを作る子も、ベンチに座りながら海を眺めてゆっくりと過ごす子もいて、それぞれがハワイの自然に包まれながら特別なひとときを過ごしました。
星空のもとでトーキングタイム
現地に到着をしてから2日目の夜。無数の星が光り輝き、キャンプ場を照らす中、「トーキングタイム」と名付けたグリーフプログラムを行いました。ハワイ在住のグリーフを抱える子どもたちも交えて、生活を共にするグループごとに、大切な人を亡くした時の気持ちや、その人との思い出などを話しました。
子どもへのグリーフサポートの経験を積んだ現地ハワイと日本から同行した専門家スタッフが寄り添う中、「話したくないことはパスをしてもいい(言わなくてもいい)」「ここで聞いた話は外では話さない」などの子どもたちにとっての安全なルールを設けることによって、「トーキングタイム」は、安心して自分自身のグリーフと向き合うことのできる場です。そのときのことを思い出し言葉につまり、涙する子もいましたが、グループの仲間とそれぞれの経験や想いを共有できたことについて「最初は話すことに抵抗があったけど、話終わったらみんなで抱きあって、頑張ったねと言い合って励まし合った」「ずっと前から友達だったみたい」「話をしてすっきりした」などの声を、多くの子どもたちから聞くことができました。
滑らかな石に思い出を込めて
最終日の夜、キャンプファイヤーを行う前に1人1つ、表面がつるつるした石が配られました。その石は最初から滑らかな表面だったわけではありません。ゴツゴツとした石が川の流れで他の石とぶつかり合っていくうちに角がとれ、次第に滑らか(スムーズ)になったものです。子どもたちも今回のキャンプでは知り合いがいない中、最初は不安や緊張でカチコチな気持ちだったかもしれません。でもキャンプを仲間と共に過ごし経験を分かち合うことで、次第に心が穏やか(スムーズ)になっていきました。その経験を象徴するその石に、好きな色のペンを使いながら、キャンプで経験をしたことを描き、楽しかった思い出をその石に詰め込みます。そして、キャンプファイヤーを囲みながら参加者全員で1つの大きな円を作り、それぞれの石に込めた想いをみんなで共有しあい、自身のグリーフに向き合うキャンプを締めくくりました。
ハワイの人のたくさんの思い
今回も昨年同様、ハワイの多くの人たちが心から歓迎してくれました。まずは、ハワイ受け入れの中心となり、現地受け入れのための準備に奔走し、さらに子どものグリーフに関する長年の経験に裏打ちされた理論と実践によって精神的な支柱となってくださったのが東日本大震災の後すぐに被災地に入り、各地で子どもだけでなくさまざまな人にグリーフサポートを実施していたキッズ・ハート・トゥー・ハワイ創設者のシンシア・ホワイトさんとキッズ・ハート・トゥー・ハワイのプログラムディレクター伊藤ヒロさんです。
そして、日本の子どもたちとともに3泊4日を過ごしたハワイの子どもたちをはじめ、キッズ・ハート・トゥー・ハワイのファシリテーター、子どもたちの日本語と英語の垣根をなくすために奮闘したハワイ在住の日本人スタッフ、安全でとびきり楽しいプログラムを準備し提供してくれた海に関わるプロ集団「ナカマカイ(ハワイのコトバで「海の子どもたち」の意)」の人たち、素晴らしい演奏を聴かせてくれたプロのウクレレミュージシャン、フラダンス教師など、キャンプ中に協力をしてくださった人たちのほか、海でのランチを提供してくれたり、キャンプに必要なさまざまな物品を提供してくれたり、そのための経費を寄付してくださったりした方々の、たくさんの思いが詰まったキャンプでした。
子どもたちからは、「ハワイの人たちがとても温かかった」「ハワイの子どもたちと仲良くなれた。遠いけどこれからも繋がっていると思える」「今度は日本に招待して恩返しがしたい」「ハワイの人と話すことで、自分の意見を積極的に話すことが重要だと気づけた」など、ハワイの人たちへのお礼の言葉がたくさん寄せられました。
キャンプの主な日程
日にち | 内容 | ||
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1 | 3月31日(金) | 午後 | ・盛岡、一ノ関、仙台集合、出発 ・成田国際空港発 |
3月31日(金) | 午前 | ・ホノルル空港着 ・歓迎会(キッズ・ハート・トゥー・ハワイのオフィス) |
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午後 | ・キャンプ場へ ・ビーズアクセサリー作り |
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夜 | ・自由時間 (アクセサリー作り、バスケットなど) |
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2 | 4月1日(土) | 午前 | ・ポーカーベイビーチ シュノーケリング、カヌー、 パドルサーフィンなどの海のプログラム |
午後 | ・キャンプ場へ ・自由時間 (ヨガ、クラフト、ウクレレレッスン、バレーなど) |
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夜 | ・トーキングタイム | ||
3 | 4月2日(日) | 午前 | ・シーライフパーク イルカと触れ合うプログラム イルカのショー、買い物 |
午後 | ・ウクレレコンサート ・フラダンス ・海水浴 |
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夜 | ・キャンプファイヤー | ||
4 | 4月3日(月) | 午前 | ・バスでホノルル空港へ移動 ・ホノルル空港発 |
5 | 4月4日(火) | 午後 | ・成田空港着 |
夜 | ・仙台、一ノ関、盛岡着、解散 |