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「認知症の人の支援と地域包括ケア」を開催(大阪市)

5月28日、大阪市北区のアサコムホールで、講演会「認知症の人の支援と地域包括ケア」を開催しました。講師は自身も親の介護をしているという関西大学人間健康学部教授の黒田研二さん。100人余りの聴講者が入場し、認知症の人が地域で暮らし続けるために必要な保健予防、医療、介護、生活支援、住まいの地域のネットワーク(地域包括ケア)について学びました。

昔、認知症は回復しないものと考えられていたが、今は早く対処し環境作りをすることにより、認知症の人でもかなりの部分できることが増えてきたと話す黒田さん。地域包括ケアシステムとは、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護だけでなく、福祉サービスを含めた様々なサービスが提供できるような地域の体制とのこと。2012年厚労省の認知症高齢者の統計によると、65歳以上の認知症の有病率の推定は439万人、軽度認知障害(MCI)は380万人。819万人が何らかの認知症を患っていることになります。自宅で過ごす高齢者が圧倒的に多い中、2015年1月に政府が策定した認知症対策の国家戦略「新オレンジプラン」では、団塊の世代が75歳となる2025年を見据えて早急な地域整備が求められています。新オレンジプランの中には、認知症サポーターの養成や医療、介護の提供、認知症初期集中チームの編成、また介護者の支援、認知症カフェの設置などが組み込まれています。

認知症初期集中支援チームとは、家族の訴えなどに初期支援を包括的集中的に行うというもの。またよく耳にする認知症カフェは、認知症の当事者や家族、医療、福祉関係者にとっても大事な啓発の場とのこと。さらに、地域密着型サービスとして、「通い」「訪問」「泊まり」を利用者のニーズに合わせた小規模多機能型居宅介護のことや、緊急に24時間対応するヘルパーの体制なども紹介されました。

さらに地域住民の態度調査を行ったところ、認知症の人に対する地域住民の態度を肯定的に変えていくためには、認知症の人とのかかわりや認知症についての関心、高齢者のイメージの向上が大事ということがわかってきました。

認知症をどのように受け止めるかという問題は、老いや死をどう受け入れるかといったこととも関係しており、これは医療や介護関係者ばかりでなく、個人や社会全体にも問いかけられている問題だと言えます。日本のみならず人類社会が直面している問題ですが、認知症を支えるしくみをつくれば誰もが安心して暮らせる社会が作れるとのこと。長寿社会の達成がもたらした一つの恩恵と積極的に捉えることが大事と黒田さんは結びました。