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これまでの活動

第62回 朝日夏季保育大学を開催しました

保育従事者の技術と教養の向上のために始まり、62回目を迎えた朝日夏季保育大学。7月24日、25日に長野県諏訪市文化センターで開き、保育士をはじめ、幼稚園の先生ら、「乳幼児の健やかな育ち」を願うのべ約900人が参加しました。


オープニングは童話、絵本作家で「魔女の宅急便」の作者の角野栄子さんによる講演「物語を通して子どもたちに伝えたいこと」。学校が苦手だったため、その時ついたウソや想像から物語を作ったことなどご自身の体験を語りました。「物語は人の心に種を植える。いつか芽が出て生きる力が育っていく」と本が子どもにあたえる可能性について説明しました。


続いて川崎医療福祉大学准教授の諏訪利明さんに「気になる子どもへのかかわり」と題し、自閉症など発達障害のある子どもへの支援についてお話しいただきました。障害をどう理解するかという基本的な考え方を確認し、気になる行動は「困った行動」ではないことを説明。子どもの行動だけを見るのではなく、なぜその行動が起きるのか"行動の背景"を探り、本人のつまずきを理解することや、予防措置や周囲にできる様々な対応を考えることなどの重要性を述べました。

初日の最後は、今年で2回目となる、「子どもに学ぶ保育講座」。これは「明日の保育に活かせる質の高い実技」をテーマに、子どもとのかかわりを実践から学ぶ講座です。会場内の講義だけでなく、実際に講師に保育園を訪問していただき、子どもと接する様子を撮影。保育大学当日にそのVTRを上映することで、子どもの反応にこたえながら、好奇心を刺激し、様々な可能性を引き出していくポイントを、参加者に学んでいただくのがねらいです。

今回はミュージシャンでマジシャンの大友剛さんに講師を頼み、6月に山梨県甲府市の2カ所の保育園でマジックと音楽、絵本のコンサートを開催していただきました。講義冒頭でその時の様子を上映。保育園での実際の様子から、子どもとのかかわりを考える機会となりました。その後、大友さんが登場。保育現場でも使える様々なマジックをレクチャーしました。9割の参加者に苦手意識があるというピアノ演奏を、大友さんは3本の指で、少ない音、少ない移動でも十分に弾けることを実演し、「音楽は楽しむものです」とエールを送りました。保育園でも披露された絵本「ねこのピート」を用いたお話では、子どもたちが作ったストーリーも紹介。子どもたちが考えた想像力豊かなアイデアの数々に会場からは感嘆の声があがりました。マジック、絵本に加えて歌や手あそびも交えながら、最後には会場からのリクエスト曲のピアノ生演奏と盛りだくさんのステージとなりました。


2日目の最初は帝京大学教授の清水玲子さんにご登壇いただきました。「子どもの思いをくむことに徹する~新制度を通してあらためて保育を考える~」をテーマに、実際に保育士から相談のあった「抱っこして」の要求をどこまで受け入れるかなど、現場ならではの悩みと、その対応について、より具体的に説明。今年の4月からスタートした「子ども・子育て支援新制度」の概要にも触れながら、どうすれば子どもにとって十分な保育ができるかをしっかり話し合っていく姿勢は変えてはならないことを強調しました。


続いては、保育者同士で子どもの日々の姿を共有し、自らの保育を評価するうえで欠かせない、記録の書き方について元立教女学院短期大学教授の今井和子さんに「保育が伝わる・心がつながる記録の書き方」と題してお話しいただきました。実際の保育園での子どもの様子を映像で紹介したあとに記録の書き方や評価のポイントを解説。「遊びの中でどんな学びが育っているかを書いて伝えることが大切」と述べ、記録を活かし、子どもたちとのかかわり方を考えることが"子育て支援"であることを訴えました。


午後は、児童精神科医、恩賜財団母子愛育会愛育相談所所長の齋藤万比古さんの講演「子どものうつ~多様なストレスの中で生きる子どもたち~」。子どもにどんなストレスや傷付きの種があるかを子どもの心の成長を踏まえて説明しました。後半には子どもの情緒の問題についてどう支援するかを事例をもとに考察。「子どもの安全な基地として養育環境の動揺を改善するための両親へのサポートが重要」と述べました。

第62回保育大学、最後の講座は、「それいけ!アンパンマン」のバタコさんなど子どもが親しんでいるキャラクターの声を演じている佐久間レイさんとピアニストの佐田詠夢さんによる特別ステージ「子どもと生きるあなたの物語~次のセリフは自分で決められます~」。大人へのメッセージを込めた大人バージョンの「アンパンマンマーチ」を熱唱。「いっぱい声を出すことで心の窓が開き、換気されます」と話し、参加者全員で「ふるさと」を歌いました。佐久間さんの経験や近しい人の言葉を書き起こし、佐田さんが音楽をつけた"語り"「魔法の鞄」も披露。「今、この時を大切に」という強い想いが込められた親子の物語は、多くの参加者の涙を誘いました。さらに佐久間さん自身の子育ての経験談や、手あそび「ごんべさんの赤ちゃん」など笑いと涙のあふれる感動のステージとなりました。「セリフを変えるだけで物語(人生)が変わります。セリフを作っていくのは自分です」と締めくくりました。

テーマと講師

スケジュールは次の通り(敬称略)。

7月24日(金)
10:10~10:30 開講式
10:30~12:00 「物語を通して子どもたちに伝えたいこと」 角野栄子/童話、絵本作家
昼食休憩
13:00~14:30 「気になる子どもへのかかわり」 諏訪利明/川崎医療福祉大学准教授、臨床心理士
14:45~16:45 「マジックと音楽と絵本の世界」 ~子どもの世界を彩る3つの魔法~
大友剛/ミュージシャン・マジシャン
7月25日(土)
9:15~10:45 「子どもの思いをくむことに徹する」 ~新制度を通してあらためて保育を考える~
清水玲子/帝京大学教授
11:00~12:30 「保育が伝わる・心がつながる記録の書き方」 今井和子/元立教女学院短期大学教授
昼食休憩
13:30~15:00 「子どものうつ」 ~多様なストレスの中で生きる子どもたち~
齊藤万比古/児童精神科医、恩賜財団母子愛育会愛育相談所長
15:15~16:45 「子どもと生きるあなたの物語」 ~次のセリフは自分で決められます~
佐久間レイ/声優、歌手、脚本家
佐田詠夢/ピアニスト