これまでの活動
南伊豆町「認知症カフェ『あまなつ』」始動
3月12日(木)、南伊豆の小さな集落で「認知症カフェ『あまなつ』」がスタートしました。
できるだけ住み慣れた家、住み慣れたまちで暮らすために、認知症の人やその家族、認知症のことが気になる地域の人、ボランティア、そして医療やケアの専門職、行政担当などの人たちが気軽に集まり、お茶を飲みながら語らい、ひと時を過ごせる場所。そんな「居心地のいい場所」づくりを目指して、伊豆半島の先端のまち南伊豆町に、認知症カフェ「あまなつ」を、地元で活動しているNPO法人風楽(ふうら)とともに開設しました。
NPO法人風楽は、障害があっても、高齢になっても、誰もが安心して生活できる地域作りを目指し、障害のある子どものキャンプや、学童保育などを行っているほか、赤ちゃん、障害のある人、高齢者、誰でも利用できる「共生型デイサービス」を2014年12月に立ち上げるなど、伊豆半島南端、過疎の町の南伊豆町で活躍している団体です。
【南伊豆町での「認知症カフェ」】
南伊豆町はペリー来港で有名な鉄路の終点、下田からさらに車で20分、東京から約3時間、まさに静岡県伊豆半島南端に位置しています。1975年には151人だった出生数は、2013年には37人に減り、高齢化率は40.5%(2014年4月1日現在)に。町民の2.5人に1人が65歳以上で、一人暮らしの高齢者が815人、高齢者だけの世帯が、580世帯もあります。町を支える若い世代が激減し、過疎化が進んでいる町です。
高い高齢化率や過疎の問題は南伊豆町に限ったことではありません。地域コミュニティーを再生することは、日本国中どこの地域でも望まれていることです。高齢者の介護、看護の状況が厳しさを増す中、高齢者の暮らしを支えていくのは、逆に地域でしかなしえません。
このような状況の中、地域での支え合いの一つの取っ掛かりとして、私たちは南伊豆町で「認知症カフェ」を始めます。この認知症カフェ「あまなつ」が、地域コミュニティー再生のきっかけになることも目指しているのです。
【認知症カフェ「あまなつ」】
場所は、廃校となった南伊豆町・三浜小学校。海の見える高台に校舎があり、玄関前からの景色は絶景です。改築してからまだ10年の校舎の中に入ると、広い廊下が続き、天井も高く、床や扉には木が使われていて、とても明るく気持ちの良さが伝わります。
2014年3月に廃校となったこの校舎を有効活用し、南伊豆で「認知症カフェ」を始めたい、というNPO法人風楽と当事業団の声に、南伊豆町役場が賛同し、こたえてくださいました。
その結果、教室や水道、電気を無償で使わせていただくほか、事前の準備や地元集落への周知、当日の運営と、南伊豆町から多くの協力を得ることができました。
「あまなつ」の会場は、玄関を入ってすぐの多目的ホールとして使われていたスペースです。大きな窓からは光がたくさん入ってきて、開放的な気分になります。窓から見える運動場、その向こうには伊豆特有の入江と港、教室に置かれたままのピアノ、壁に掛けられた校歌額が、懐かしさを醸し出しています。
温かい陽の注ぐ、旧三浜小学校の教室。
来てくれた人がほっとできるような空間を目指し、木のぬくもりが感じられるテーブルやカウンターを用意しました。そしてちょっと休憩できるような畳の小あがりのスペースも作りました。
【認知症カフェスタート】
3月12日、いよいよスタートとなる認知症カフェ「あまなつ」には、地元の方々約15人が集まりました。NPO法人風楽のスタッフ(代表の渡邉映子さんら2人)が、南伊豆町地域包括支援センター所長の鈴木康子さんや、「あまなつ」の活動を応援してくれる地元の方に協力をいただきながら運営していく「あまなつ」。コーヒーや紅茶、和菓子などが用意され、参加者はそれぞれ好きなものを召し上がりながら、この日のスタッフ4人と一緒におしゃべりを楽しみました。
コーヒーや紅茶、お菓子などの代金はそれぞれ100円。地域の方なら誰でも「あまなつ」に参加できます。
参加者の中には、地域の皆さんとのおしゃべりを楽しみにしていて「毎日開催して欲しい」という女性も。
この日は、鈴木康子さんが「南伊豆町の医療と介護の現状」についてお話しをする時間も設けられました。65歳以降の平均自立期間を静岡県独自に算出した「お達者度」について、南伊豆町の女性は35市町中第3位と好成績なのに対し、男性は第28位(平成23年)という結果が報告されると、参加した地域の女性からの「女性は男性にこき使われてきたからね」という冗談めかした発言に、会場は笑い声で包まれました。
【地元の人たちや町長も参加しての開所式】
「認知症カフェ」のスタートに先立ち、2月22日(日)には、関係者と地元の方々を招待し、開所式を開催。地元の高齢者の方々をはじめ、南伊豆町の梅本和熙町長、松本恒明副町長など、約20人が参加しました。NPO法人風楽代表の渡邉映子さん、当事業団の高畑芳秋常務理事、梅本南伊豆町長のあいさつに続き、在宅医療に力を注いでいる医療法人社団つくし会の新田国夫さんの記念講演が行われました。新田さんは「認知症だからと施設を作ってそこで収容するという時代は終わった。もっと本人の力を住み慣れた地域で発揮できるように、地域で支えていくという形にしなくてはならない」と述べました。開所式の後には、郷土料理を囲んで参加者同士がゆっくりと語り合いました。
「認知症カフェ『あまなつ』」は毎月第2木曜日午後1時から開催する予定です。
当事業団では、「認知症カフェ『あまなつ』」をモデルのひとつとして、認知症カフェを全国に広める取り組みを行っていきます。
当ホームページ等を通じて、逐次ご報告します。