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~当事者の声から学ぶ、これからの里親家庭~

これまでの活動

ぴあ応援団 浜松市児童相談所 里親研修会
~当事者の声から学ぶ、これからの里親家庭~

2026年2月28日、浜松市児童相談所が主催する「里親研修会」に、里親13名が参加、ぴあ応援団からみどりさん(大学1年生・仮名)とめぐみさん(社会人3年目・仮名)の2名がゲストとして登壇しました。

開設からまもなく19年目を迎える浜松市児童相談所では、里親制度を通じてお預かりした赤ちゃんが成人を迎える年月が経過しています。

里親の皆さんが日々さまざまな想いや悩みを抱えながら子どもたちと生活を共にする中で、今回は社会的養護を経験した当事者の「生の声」をお届けし、これからの養育のあり方を共に考える貴重な機会をいただきました。

プログラム概要

冒頭では、児童養護施設や里親家庭などで育った約60人の若者が中心となり情報発信を行う「ぴあ応援団」の活動を紹介しました。奨学金情報サイト「Miomus」や、先輩たちのメッセージ集「すだちず」など、同じ境遇で育った仲間だからこそできるサポートについてお話しさせていただきました。

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ぴあ応援団の活動を紹介する登壇者の二人

対談ハイライト:子どもたちの本音と里親家庭のこれから

対談セッションでは、高校生からファミリーホームで暮らしたみどりさんと、9歳から里親家庭で育っためぐみさんが、自身の経験を振り返りました。

日々の暮らしの中で嬉しかったこと、そして子どもながらに抱えていた葛藤など、今後の里親養育のヒントとなる印象的なエピソードをピックアップします。

「お母さんはお母さんの人生、あなたはあなたの人生」

実親への想いについて、みどりさんは里親さんが1対1で外食に連れ出してくれ、実親について話す時間を作ってくれたことが嬉しかったと振り返りました。

実母が子どもに依存しがちな部分があり、「自分が働き出したらお母さんの面倒を見るのかな」と不安を抱えていたみどりさんに対し、里親さんは「お母さんはお母さんの人生で、あなたはあなたの人生なのだから、気にしすぎないで自分の好きなことをして生きていいんだよ」と声をかけてくれました。この言葉は、子どもが背負い込んでいた荷物をそっと下ろしてくれる、大きな救いとなったことが語られました。

「いい子でいなきゃ」のプレッシャーと「頼っていいんだよ」

めぐみさんは、9歳から里親家庭で暮らす中で「いい子でいないといけない」「しっかりしないといけない」と気を遣い、悩みを一人で抱え込んでしまう時期がありました。

そんな時、里親さんから「頼っていいんだよ。話だけでもいいんだから」と言われたことで、「頼った方がいいんだ」と腑に落ち、気楽に相談できるようになったと語りました。

また、「家族なんだから」という言葉に戸惑った時期もあったものの、大人になるにつれて「自分には頼れる先がいっぱいあるんだ」と肯定的に捉えられるようになった経験を共有しました。

「否定されない、安心できる環境づくり」

「自分らしくいられる里親家庭とは?」というテーマで、めぐみさんは「否定をされないこと」の重要性を強調しました。たとえ要求に応えられない場面であっても、「そう思ったんだね」とまずは気持ちを受け止め、理解を示す姿勢が、子どもの安心感に直結します。

「周囲への伝え方は人それぞれ。だからこそ『気持ちの確認』を」

学校の友人などに「自分が里親家庭で育っていること」をどう伝えるか。これには当事者間でも違いがあります。

みどりさんはなかなか言い出せず、友人に気を遣わせてしまったことに苦労した一方、めぐみさんは隠さず周囲に知ってほしいと思っていたにもかかわらず、隠すように言われたことに葛藤がありました。

めぐみさんは、「里子が自分の家庭環境を周囲にどう伝えたいと思っているか、里親さんの方から気持ちを確認してもらえると嬉しい」と提案し、子ども一人ひとりの意思を尊重することの大切さを呼びかけました。

里親さんとの交流で見えた、里親家庭の現状と温かい想い

後半の質疑応答では、参加された里親さんから、現在の子育ての様子や率直な悩みが次々と共有され、会場全体で思いを分かち合う時間となりました。

「毎日が可愛くて、来てくれてありがとうと思っている」

赤ちゃんや小さな子どもを育てている多くの里親さんから、「想像以上に大変だけれど、それ以上に可愛くて幸せ」「うちに来てくれてありがとうと毎日伝えている」という、溢れんばかりの愛情が語られました。

思春期のぶつかり合いと、「本当の親じゃないくせに」

ある里親さんからは、ゲームのルールを巡って子どもから「本当の親じゃないくせに」と言われたエピソードが共有されました。その際、里親さんは「本当の親じゃないし産んだわけじゃないけれど、体への影響があるからダメなものはダメ」と真剣に向き合って返したそうです。その後、子どもが「言い過ぎた」と反省して普通に話しかけてきたというお話から、ぶつかり合って本音を出せる関係性が築かれていることが伝わってきました。

実親を知りたいという想いに寄り添う

成長した里子が「実母の顔が見たい、どんな人だったか知りたい」と望んだ際、関係機関と連携して実母のエピソードを伝えたところ、子どもがとても喜んだというお話もありました。子どものルーツを知りたいというニーズに対し、大人がどう寄り添い、サポートしていくかの重要性が浮き彫りになりました。

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参加した里親さんと活発な意見交換が行われた質疑応答

登壇者からのメッセージ:これからの里親家庭へ

研修の最後に、みどりさんとめぐみさんから里親さんへメッセージをお伝えしました。

みどりさん:「実子と同じように、それ以上に愛情を注いでくださっていると思います。思春期で喧嘩をして『実の親じゃないのに』と言われたとしても、距離を取らずにそのまま接してほしいなと思います。」

めぐみさん:「子どもが何を必要としているか、そのニーズや想いは里子本人の中にあります。本音を言うのはお互いに勇気がいりますが、意見を聞く、気持ちを確認する機会をぜひ作っていただきたいです。今日ここに来て真剣に話を聞いてくださる皆様のもとで暮らしている里子さんは、本当に幸せだと思います。」

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会場全体が温かい雰囲気に包まれた研修会の様子

里親さんからの感想

研修終了後に里親さんからいただいたご感想を一部紹介します。

  • お二人の里子さんの正直な気持ちを聞く事が出来てとても良かったです。その事によってこれから成長していく里子の為にとにかく良く話を聞いて、決して、気持ちがおさえられて何も言えない、かかえこむ、などが、ないように、のびのび育ってほしい。
  • とても参考になりました。我が家の里子たちと同じ思い、考えだと思うところがたくさんありました。また、このような会をお願いしたいです。次回は里子たちと一緒に参加したいと思います。
  • お二人の話はお二人が思っていたことで、全ての子どもが同じことを考えているわけではないため、その子その子をちゃんと見てあげることがとても大切だと再確認しました。

おわりに

今回の研修会は、ぴあ応援団にとっても、里親さんの愛情や日々の奮闘に直接触れることができた時間となりました。真剣に耳を傾け、温かい言葉をかけてくださった参加者の皆様、そしてこのような素晴らしい場をご用意いただいた浜松市児童相談所の皆様に心より感謝申し上げます。

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