これまでの活動
【開催報告】全国奨学金団体交流会2025
社会的養護の若者と「つながる」支援へ
2025年11月30日、ぴあ応援団が主催し、奨学金検索サイト「Miomus」の運営幹事団体*1の協力のもと、「全国奨学金団体交流会2025~奨学金の先にある支援を考える~」を開催しました。
本交流会は、社会的養護で暮らした経験のある学生が中心となって企画・運営し、当日は15団体から職員24名、学生9名にご参加いただきました。若者が安心して学びを継続するために必要な、「お金だけではない支援」の形について、様々な意見が交わされました。
*1=Miomusネットワーク幹事団体:教育支援グローバル基金、ゼンショーかがやき子ども財団、モバイル・コミュニケーション・ファンド、資生堂子ども財団、東京都社会福祉協議会、朝日新聞厚生文化事業団
1. 早川さんと当事者が語る「18歳の壁」
前半で行われた早川悟司さん(社会福祉法人子供の家本部・理事)と社会的養護を経験した学生あやかさん、あおいさんによるてい談は、若者が施設退所後に直面する構造的な困難についての意見交換から始まりました。
「生活の激変」が最大の困難
早川さんは、施設を退所して進学する若者が直面する最大の困難は、18歳で金銭管理や食事など生活の全てを自己管理しなければならない「生活の激変」であると指摘しました。順調な環境で育ったわけではない若者に、全てをいきなりやらせるのは「相当無理がある」と、多くの子どもと関わった経験から話しました。
自立後の孤独と生活の実際
この早川さんの指摘に対し、学生から具体的な困難が共有されました。
あやかさんは、自身が施設育ちで大学進学を選んだ一人として、進学は目標のひとつが叶う瞬間である一方、「情報不足や孤立感が付きまとった」と語りました。特に、ご自身の施設では自立支援担当職員がいなかったため、奨学金情報について職員からリストを渡されたものの、申し込み時のサポートが不十分だった経験を話しました。
つまづいても戻れる居場所を
早川さんは、若者が社会で失敗しても再チャレンジできる「安全基地」を確保することが、中途退学を減らす上で重要だと強調しました。この激変を緩和するためには、大学卒業の目安である22歳以降も必要に応じて支援を途切れさせず延長すること(措置延長*2などの活用)が不可欠だと語りました。
あやかさんは、18歳から20歳までは措置延長を利用した自身の経験を紹介しました。しかし同時に、施設や里親の職員の間で制度の知識格差が大きく、利用できる支援が十分に使えていない現状があるのではないかと問題提起しました。早川さんは、措置延長が義務的経費*3となった現在でも制度が十分に活用されていない現状を重ねて指摘し、「支援の継続が必要なことを皆さん(奨学金団体)と一緒に発信していければ」とうったえました。
*2「措置延長」=18歳を超えても、引き続き支援が必要な場合に、その期間を延長する仕組み。措置延長は最大20歳までだが、それ以降も支援を継続したり、支援の解除後にあらためて支援が受けられる仕組みなどもある。
*3「義務的経費」=制度上、政府が必ず用意し、支払う義務がある経費。
2. お金だけではない「居場所」と「心のケア」の必要性
次いで行われたグループセッションでは、奨学金運営団体の職員と当事者の学生や社会人らが意見交換を行いました。
「つながり」が大切
多くの奨学金受給学生から、金銭的な余裕以上に、奨学金団体との関わりや支援プログラムが「精神的な支えや安心できる『居場所』」や「心の拠り所」となっていることが語られました。同じ境遇の人たちとの交流や、活動を通じた社会貢献によって、「励みになる」など心理的な安定と成長に重要だという思いが繰り返し語られていました。
メンタル不調への対応も
- コロナ禍以降、休学や中退につながるメンタルヘルスの不調を訴える学生が特に増加しています。
- これに対し、奨学金団体の職員が専門家ではないため、適切な対応が難しいという専門性不足の課題も共有されました。
- 団体によっては、外部の専門家との連携調整、心身の不調による休学時の一時金支給制度の設立など、サポート強化に取り組んでいることが報告されました。
金銭的支援の柔軟化
- 入学前の引っ越し費用など、支給タイミングのズレを埋める必要性が指摘されました。
- アルバイトができず生活費が払えない学生を対象とした緊急支援金制度の重要性が議論されました。
- お米やレトルト食品といった食料品の送付が、生活費の負担軽減に繋がり喜ばれていることも共有されました。
3. さらなる団体間連携を目指して
「奨学金団体間で資金計画表などの応募フォーマットの統一を検討できないか」――。交流会の締めくくりでは、参加団体から今後の連携をより具体的に進める提案がありました。
奨学金の申し込み準備は、特に高校3年生の入試準備と重なるため、学生にとって書類作成が大きな負担となっています。こうした課題にも、団体同士が協力して取り組んでいけたらと考えています。
社会的養護を経験した学生たちの「奨学金団体がつながったら、きっと子どもたちにとってよいことがおこる」という思いをきっかけに、多くの団体のご協力のもと始まった「全国奨学金団体交流会」。この連携がさらに具体的で大きなものになることを願い、今後もぴあ応援団は活動を続けていきます。
≪参加団体≫
公益財団法人資生堂子ども財団、NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド、一般財団法人ゼンショーかがやき子ども財団、ビヨンドトゥモロー、公益財団法人教育支援グローバル基金、社会福祉法人東京都社会福祉協議会、NPO法人ブリッジフォースマイル、早稲田大学学生部奨学課、明星大学、埼玉県社会的養護を考える会、NPO法人キッズドア基金、NPO法人タイガーマスク基金、公益財団法人小林奨学財団、公益財団法人日本フィランソロピック財団、公益財団法人あすのば、朝日新聞厚生文化事業団
≪参加した学生など≫
資生堂子ども財団奨学生、ドコモ奨学金奨学生、ゼンショーかがやき子ども財団奨学生、朝日新聞厚生文化事業団奨学生、ぴあ応援団団員