~支え合う安心社会の実現に向けて~
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朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ オンラインフォーラム 「『障がい』ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!」 ~気づいていますか?私が見ている社会≠あなたが見ている社会~ 

これまでの活動

オンラインフォーラム
「『障がい』ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!」
~気づいていますか?私が見ている社会≠あなたが見ている社会~ 

8月24日(土)にオンラインフォーラム「『障がい』ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!」~気づいていますか?私が見ている社会≠あなたが見ている社会~を、オンラインで開催。約100人が参加しました。

2部構成で行われたこのセミナーは、第1部では、東京大学大学院教育学研究科バリアフリー教育開発研究センター教授の星加良司さんによる基調講演、第2部では、今まで10回にわたり当事業団のホームページに掲載してきた連載インタビュー「『障がい』ってなに?」にゲストとして登場した4人の障がいのある当事者、支援者によるトークセッションを行いました。

星加良司さん基調講演
「障がい」ってなに?多数派が作り出す社会のバリア

星加さんは、障がいのある人が経験する困難は、周りの環境や制度、ルールなどが、障がいのない人の都合に合わせて作られていることによって生じている、という「障がいの社会モデル」について紹介。これをわかりやすく実感してもらうために、「車いすユーザーが多数派を占める社会」の寓話を披露しました。

寓話の中の社会では、すべての建物の高さが「低い」と紹介。この社会では車いすを使用せず、2本足で立って歩く生活をする人が少数派であり、さまざまな不便を強いられています。たとえば天井に頭をぶつけないよう、いつも腰をかがめて歩くので慢性的な腰痛があり、うっかり頭をぶつけてしまうことも多いので頭は傷やコブだらけです。

そんな中、少数派の「かわいそう」な人たちのため、車いすユーザーの偉い人たちが対策会議を開きます。腰痛緩和のためのコルセット、頭を守るためのヘルメットの購入費用を公費負担しよう、そもそも足があるから邪魔なので、足を切断してしまおう、といった案が考え出されています…

寓話の内容はこのようなものでしたが、この話を聞いて、違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。2本足で立って歩く人に対策会議に参加してもらうべきなのではないか、そもそも建物の高さを高くすれば良いのではないか。

車いすユーザーが多数派を占める世界では、悪意をもって低い建物ばかりを建てたわけではありません。しかし、社会のあり方を考える際、多数派の人だけで意思決定をすることで少数派の人への弊害は考慮されず、結果的にその不便さを少数派の人が背負わなければいけなくなっている、ということがわかりやすく伝わってきます。

転じて現実の社会では、心身の機能に制約がある、いわゆる障がいのある人が少数派の立場に置かれています。「かわいそうだから」という感情論ではなく、障がいの有無にかかわらず、誰もが同じスタートラインに立って社会で活躍できるよう、社会の制度設計、意思決定から排除されている少数派の人の存在に気付き、そのあり方を変えていかなくてはいけないと、多数派の人の意識転換の必要性を認識させられる講演でした。

教育関係者も多く参加する中、アンケートでは「障がいのある人への配慮について、学生たちにどのように伝えようか迷っていたが、この寓話をそのまま話して聞いてもらおうと思った」「自分の立場が少数派に置き換わっていて、少数派の不便さ、対策の見当違いな様子がよく伝わってきた」などの意見が見られました。

トークセッション
「学ぶこと、働くことに際しての障がい、社会の障壁(バリア)とは」

第2部のトークセッションでは、日本視覚障害者団体連合理事で同青年協議会相談役であり、盲学校教諭でもある片平考美さん(視覚障がい)を進行役に、西澤陽一郎さん(リコージャパン株式会社、車いすユーザー)、藤川心花さん(聾学校高等部、聴覚障がい)、増田由美子さん(社会福祉法人中央区社会福祉協議会職員)の4人によるトークセッションを行いました。

それぞれの自己紹介では、片平さんは、視覚障がいといっても全く見えない人ばかりでなく、穴から覗くように物の中心部だけ見える人、その穴の大きさは竹輪の穴サイズの人もいれば針の穴サイズの人もいること、視界の全体がもやがかかったように、ぼんやりして見える人など、十人十様の見え方があることを紹介しました。

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片平さん

藤川さんは大学受験を控える高校3年生で、在籍しているろう学校では手話が通じるので生活に大きな支障はないものの、希望の大学では「聞こえる人」の多い環境となり、楽しみでもある一方、自分が聞こえないということを周囲に伝える大切さを感じているという話や、日常的に愛用している音声の即時文字おこしアプリのUDトークや、映画館で活躍する「字幕メガネ」などを紹介。

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字幕メガネを紹介する藤川さん

西澤さんは事故をきっかけに車いすユーザーとなり、自立した生活を求める中で出会った介助犬と一緒に暮らしていること、現在はリコージャパン株式会社で障がいのある人の雇用担当者として働いていることを話しました。

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西澤さん

増田さんは社会福祉協議会の職員として、知的障がいのある人が活躍する就労継続支援B型事業所での様子や、障がいのある人の日常生活を支える「市民成年後見人制度」について紹介しました。

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増田さん

それぞれの自己紹介や申し込み時に受け付けた質問に答える中で、4人が共通して話していたのは、障がいのある人自身が自分の障がいについて理解し、ほかの人に説明できることは非常に大切、ということ。障がいの特性や、得意なこと、苦手なことなど、より詳細に周囲の人たちに説明できることが適正な合理的配慮につながるのでは、と話しました。

終了後のアンケートでは、「特定の障がい種別の人とは関わる機会があっても、そのほかの障がい種別の人と関わる機会は少ない。いろいろな障がい種別の人が意見を交わすフォーラムは貴重だった」という感想が寄せられました。

「障がい」があることを理由に、地域社会から隔てられることなく、ともに学び、能力を生かして働くためには、私たちはどのように社会を整えていくべきか。今後もみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

「障がいってなに?」連載インタビューはコチラ