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朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 連載インタビュー 「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう! 第3回 :増田由美子さん

最新のお知らせ

連載インタビュー
「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!
第3回 :増田由美子さん

増田 由美子 (ますだ ゆみこ)さん
社会福祉法人 中央区社会福祉協議会 管理部地域ささえあい課 地域福祉コーディネーター 職員
※肩書きはインタビュー当時

栃木県宇都宮市出身。高校生の頃から福祉職を志し、福祉系の大学に進学。介護保険事業関係の会社に就職した後、大学時代に実習やボランティアで体験した社会福祉協議会への仕事を希望し、平成 16 年に現在の法人に転職。これまでに貸付担当をはじめ広報や募金、成年後見支援センターでの業務を経て、平成 31 年4月から現職。保有資格は社会福祉士と精神保健福祉士。プライベートでは、3人の子どもを育児中。

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目次

※質問の横の+マークを押すと全文が表示されます。

1.ますださんは、どんな人?

増田さんのこと、教えてください。

東京都にある中央区社会福祉協議会で働いています。
中央区社会福祉協議会では部署によってさまざまな役割を担っていますが、例えば

  • 就労支援…障がいのある人が働くことをサポートします。
  • 成年後見支援事業…生活するために必要なお金の管理や、誰かと契約を結ぶ際に、一人で判断をすることが難しい人の手助けをします。
  • 地域福祉コーディネート

といった役割を担っています。

また、地域支援といって、子ども食堂や、共通の悩みを持つ当事者の会・親同士の会、高齢者が集まって体操や茶話会といった活動を行う団体の支援もします。団体の活動場所を探したり、新しく始めた活動であれば、その活動が軌道に乗るまでを見守ったりします。

増田さんが担う、地域福祉コーディネーターはどのようなことをするのですか?

ひとことでいうと、「地域住民の困り事に寄り添い、一緒に考えること」をします。例えば、介護保険は65歳から利用することができますが、この年齢に達する前に介護を必要とするケースもあります。そのような場合でも利用できる公的、私的サービスにはどのようなものがあるか、一緒に考えます。

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また、公的サービスではカバーされない、相談者の身の回りの手伝いをすることもありますよ。

2.福祉の仕事に興味をもったきっかけ

この仕事に興味をもったきっかけを教えてください。

高校生の頃、同じクラスに不登校の子がいました。特別に仲が良いというわけではありませんでしたが、なぜか放っておけず、家を訪ねていました。

初めは玄関先で学校のプリントを渡して帰るだけでしたが、だんだんと本人やご家族と距離が近づいていき、家にあげてもらい、不登校の同級生とも話をする仲になりました。学校の先生になれば不登校の生徒本人の支援ができると思いましたが、ご家族とのやり取りのなかで家族の気苦労や大変さにも寄り添いたいと思い、福祉職を志しました。また、自分に弟がいるということもあり、もともとお世話好きな性格なのかもしれません。

増田さんは介護のお仕事経験もあるそうですね。

はい。大学在学中に介護保険制度が始まったこともあり、これからは介護の分野での需要ややりがいがあると考え、介護保険事業所に就職しました。ですが、この就職先が1年ほどで事業を縮小することとなり、退職と転職を決めました。

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新しい職場を探すにあたり、思い出したのは大学時代に経験した社会福祉協議会での実習でした。4週間の実習期間中、先輩職員についてあちこちに出向くのですが、どの事業にも地域住民が関わっていました。人や地域との密なつながりに魅力を感じ、転職するなら社会福祉協議会が良いと心に決め、今に至っています。

つながるくんコラム①

介護保険制度ってなに?

介護保険制度解説
※独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・保健・医療の総合情報サイト「WAMNET」より

3.職場での生活サイクル、職場の様子

増田さんの職場での一日の様子を教えてください。
8時前 職場に出勤
職場内で共有している連絡事項の確認
8:30~ 始業
ミーティング
(外出が多い日は…)
自転車で外出
地域活動団体の見学やお宅訪問など
(事務所で過ごす日の一例)
事務作業や電話相談
…新しい相談事や、不安な気持ちを打ち明ける相談電話など
13:00 職場に帰着、お昼ごはん
(外出が多い日は…)
コミュニティカフェ「おとなりカフェ&ちょこっと相談会」の運営をすることも
…お茶を出したり、参加者の悩み事に対応
(事務所で過ごす日の一例)
住民向けに講座を行ったり、関係機関と会議を行うこともあります。
17:15 終業、子どものお迎えへ
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会議の様子

4.現在の仕事についてからの感想、大切にしていること

念願が叶っての社会福祉協議会でのお仕事。それでも、こうだったら良いな、と思うことはありますか?

たとえば、私が担う地域福祉コーディネーターは、自治体によって配置される人数が異なります。もっと大勢が配置されている自治体もあるので、中央区でも人数が増えると良いなと思います。そうすれば、対応できるお悩みの範囲がもっと広がると考えています。また、私自身も今まで以上に地域に出て、関わる人を増やしていきたいと考えています。

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寄せられる相談や、その対応事例にはどのようなものがありますか?

相談は、区の関係機関や地域包括支援センターを通じて伝わることが多いのですが、ひきこもり、精神疾患がある人がいる家庭が抱える悩み事や、いわゆる「ゴミ屋敷」、「8050」に関する相談事などがあります。

こういったお宅を訪問して、お話や悩みごとに耳を傾けます。例えば、ひきこもりのご本人と意思疎通ができるようになったとして、その人が社会に出たいと望むなら、就職を目指して伴走支援したりもします。

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長く外出していない場合、身なりに注意を払う余裕がないことも多いので、定期的な入浴や洗髪を勧めたり、決まった時間の起床を意識してもらうなど、いろいろな助言をすることもあります。

また、地域福祉コーディネーターになる前の部署では、成年後見制度の利用支援を担当していました。成年後見制度とは、法的な成人年齢に達している人で、誰かと契約を結んだり、自分自身の金銭管理をすることが難しい人の、法律上の代理人として手助けする制度ですが、その前段階の日常生活自立支援事業として公共料金の払い込み手続きを代理で行ったり、月々の生活費を引き渡すといった仕事をしていました。

この業務を全うするには、より専門的な知識が必要だと感じ、精神保健福祉士の資格を取得しました。私の働く職場では、働きながらこの資格を取得する人がたくさんいるんですよ。

いろいろな相談事に対応する中で、増田さんが大切にしていることを教えてください。

相談者や団体の思いを丁寧に聞き取り、気持ちに寄り添えるように心がけています。たとえば、いわゆる「ゴミ屋敷」の案件に関わる際、必ずしも意見やアドバイスを受け入れてもらえない場合もあります。ですが、周りからは不要だと思われるものを集める背景には、何かしらの不安を抱えていたり、実際に本人が必要だと感じて集めたりしている場合もあるので、否定的なことは言わないように心がけています。

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ただ、地震が来た場合に物が崩れて、命にかかわるかも知れないというリスクを伝え、理解を促します。それでも構わない、とご本人がおっしゃる場合などは、時間を置いて改めて訪問します。

また、そのお宅の周囲の人へのサポートも欠かせません。周りの人と連携しながら、ご本人が大事にしているもの、してきたものは何かに目を向けるようにしています。

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相談の様子

つながるくんコラム②

成年後見制度ってなに?

成年後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が十分ではない人で、誰かと契約を結んだり、自分自身の金銭管理をすることが難しい人の、法律上の代理人を立てる制度だって。詳しくは、裁判所のHP成年後見制度について | 裁判所が参考になるよ。

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つながるくんコラム③

精神保健福祉士ってどんな資格?

この資格は、精神保健福祉士法で位置づけられた、精神障がい者に対する相談援助などの業務に携わる人の国家資格だよ。年に1度行われる精神保健福祉士国家試験に合格する必要があるよ。

増田さんの場合、現職に従事することで実務経験を満たしているうえ、社会福祉士の資格があることによって免除される試験科目もあるんだって。どのような資格か、URLをクリックしてみてね。

精神保健福祉士について |厚生労働省
※厚生労働省HPより

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5.社会の「バリア」

さまざまな悩みに寄り添ってくれる増田さんですが、日ごろの活動の中で「バリア」を感じることはありますか?

これは「社会のバリア」とは異なりますが、若い世代と関わるのが大変難しいと感じています。中央区では、ここ数十年の間にタワーマンションの建築ラッシュがあり、ここに住む方々との接触に苦労しています。高層マンションは建物内にいくつもオートロックが設置されていて訪問が難しく、また情報提供のためのチラシを置いてもらうのも一苦労です。ただ、最近では高層マンションの住民の方からもご相談や問い合わせが来るようにもなってきており、「地域意識」が醸成されつつあるのかな、とも感じています。

また、私たち中央区社会福祉協議会は「住んでいる地域で自分らしく生活する」を理想に住民の皆さんの悩み事に寄り添っていますが、例えば、障がい者の施設をつくる構想が出ると、建設反対の声が上がります。そういった点は、まだまだ障がいについての理解を促す働きかけが足りないと反省するところです。

高齢者施設の建設、という場合には反対意見が出ないのに、知的障がいや精神障がいの場合は反応が異なる、ということに偏見があるのかなと感じます。反対派の人にその理由を尋ねると、入所する人がどういう人かわからず、子どもを公園で遊ばせられなくなるのではないか、夜に大きな声を出すのではないか、といった「漠然」とした不安が原因のようでした。

6.「バリア」解消の取り組み、社会に変化をのぞむこと

そのような反対意見が出ることについて、何か取り組みをしていますか?また、これから取り組みたいことはありますか?

今ではすっかり「認知症サポーター養成講座」が一般的になり、あらゆる場所で開催されています。ですが、障がい者に関する理解を深める講座は少ないように感じます。小学生になるかならないかの幼いうちから、心の病気を含めた、あらゆる障がいについて知る機会を提供し、みんな一緒に生活していく人たちなんだよ、と繰り返し伝えていく必要性を感じます。

私たちの法人でも、視覚障がい者体験グッズや点字、手話を学ぶ講習、車いすの試乗体験といった機会はすでに提供しているのですが、知的障がいと精神障がいについては、まだまだ出来ていないことがあると感じます。

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また、社会に変化を望むこととしては、「インクルーシブ教育」の実現です。自分の子どもの話を例にとると、小学校6年生の子どもの友達に、見た目は「女」の子、心は「男」の子がいます。いわゆる「LGBTQの子」ですが、我が子にとっては、ただの「〇〇さん」なんです。「あの子は、絶対にスカートは履きたくないんだって。自分の呼び方も『僕』だよ。それが〇○さんだよ、と」。

偏見を持たず、ありのままを受け入れる一番の近道は、直接的なかかわり合いなのでは、と考えます。学校の授業のなかにインクルーシブ教育の時間を設けたり、また、逆に制度にこだわらず、堅苦しくなくかかわり合えるような機会が作れたりすると良いなと願っています。

つながるくんコラム④

中央区社会福祉協議会のこと、もっと教えて!

社会福祉協議会のこと、名前はきいたことがあったけれど、地域のこまりごとを一緒に考えてもらえることを知らなかったよ。社協は、どういうふうに自分の活動を広報しているのかな。

中央区社協の広報誌「中央区社協だより ちゅうおう」を4、6、9、11、1月の21日に発行、新聞の折り込みチラシとして配布しているよ。
中央区社協だより~かけはし中央~ – 社会福祉法人中央区社会福祉協議会

また、広報誌に掲載していない情報は、中央区社協のHPをチェックしてみてね。
社会福祉法人中央区社会福祉協議会 – 社会福祉法人中央区社会福祉協議会

4月から地域ささえあい課の公式LINEのアカウント「中央区社会福祉協議会つながりかわら版」を開設するから、要チェックだね。
地域ささえあい課の公式LINEのアカウント

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