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朝日新聞厚生文化事業団トップページ 最新のお知らせ 連載インタビュー 「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう! 第1回 :三枝正規さん

最新のお知らせ

連載インタビュー
「障がい」ってなに?もっと身近に、聞いて、感じて、知ってみよう!
第1回 :三枝正規さん

三枝 正規 (さえぐさ まさのり)さん
社会福祉法人 東京都手をつなぐ育成会、中央区立知的障害者支援施設レインボーハウス明石 主任支援員

東京都品川区生まれ。幼少期はおとなしく、人見知りが激しい子どもであった。祖母が老人ホームに入所しており、介護福祉士がどのような仕事をしているのかは知っていたが、実際に自分が福祉業界に就職するとは思ってもみなかった。入職後、仕事を覚えるのに大変なこともあったが利用者支援が楽しく、現在に至る。

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目次

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1.さえぐささんは、どんな人?

三枝さんのこと、教えてください。

レインボーハウス明石という、中央区の知的障害者生活支援施設で主任支援員として働いています。

知的障がいって何ですか?

説明が難しいですね。年齢が大きくなっても、社会での決まり事、ルールなどを理解するのが難しい、という障がいかなと自分では感じています。どう説明したら周りの人にもっと理解してもらえるのか自分でも悩ましいです。

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2.福祉の仕事に興味をもったきっかけ

この仕事に興味をもったきっかけを教えてください。

現在の仕事に就いたのは自然の成り行きでした。理系の大学に進学しましたが、思い描いていた学校生活と異なり中退。フリーターをしていた時期もありました。そこで出会った先輩には夢を追いかけている人が多く、自分も何かやりたい、と思うようになり、資格を取ろうかなと考えました。その頃ちょうど祖母が老人ホームに入所していたため、介護という仕事を身近に感じ、介護の資格が取れる専門学校に入学しました。

私の通う学校では、高齢者の介護関係の資格だけでなく、障がい者分野の資格取得も可能だったため、選択肢を広げ身体障がいや知的障がいのある人たちが暮らす施設にも実習にいきました。どの分野でやっていこうか進路に悩む際、恩師から「三枝くんは知的障がい者の施設が向いているんじゃない」との言葉に背中を押され、知的障がいがある人たちのための施設を運営する現在の法人に就職しました。

つながるくんコラム①

福祉に生かせる資格

三枝さんが取得した資格は介護福祉士と、社会福祉主事任用資格という資格だって!福祉に生かせる資格として、社会福祉士やケアマネジャーなども広く知られているんだって。

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3.福祉の仕事についてからの感想

実際に就職してみて、いかがでしたか?

就職して一番初めに担当したのは、事業所で暮らす利用者(入所者)の部門でした。 就職当初、「こんなに楽しいのにお給料をもらっても良いの?!」と感じたことを覚えています。余暇活動として利用者と一緒にゲームをしたり、外出補助としてドライブや買い物に行ったりすることが楽しかったのです。もちろん、トイレへ行くよう定期的な声掛けをしたり、食事でむせこんだりしないよう、しっかり見守るといった重要な役割もありますが、私には前者の活動が印象的でした。

その後、職場内での異動により、事業所に通ってくる利用者の対応をする、通所部門の担当になりました。私の働く事業所では、開設当初から焼きたてのパンを販売する「アラジン」という喫茶店を営んでおり、日によってはパン製造の担当をすることもあります。軽作業を手伝うのがメインの日や、主任という立場で会議に出席するのがメインとなる日、書類づくりに追われる日などもあります。

4.職場での生活サイクル、職場の様子

三枝さんの職場での生活サイクルの一例を紹介すると…

パン工場担当の日の一例

6:30頃 出勤
7:00~ パンの成形、オーブンへ
15:00~ 事務作業
16:00 帰宅

通所者の対応をする日の一例

7:30頃 出勤
9:00~ 利用者の受け入れ
~16:00 作業の支援
16:00~ 作業の片づけ
17:00 帰宅
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新聞やニュースなどで、介護のお仕事はその責任の重さから辞めてしまう人も多いと聞きますが、三枝さんの職場ではどうですか?

私の個人的な印象ですが、僕のように「成り行き」で介護関係の仕事に就いた人の方が長くこの仕事を続けているように感じます。また、私の職場では出産を経て復職する女性職員もいて、働きやすい職場なのかなと思います。それでも、人手不足の一面もあるので、少しでも興味のある人はぜひ、介護業界の扉を叩いてみてほしいと思います。

5.社会の「バリア」

「バリアフリー」社会の実現を目指しています。お仕事の中で「バリア」を意識することはありますか?

「バリア」というと、道路での段差や駅のホームにおけるエレベーターのように、設備をはじめとしたハード面を思い描く場合も多いと思うのですが、私が仕事で関わっている知的障がいの場合、「偏見」がそれにあたるかなと感じます。

たとえば、利用者さんと電車で出かけるときのことです。人によっては、利用者さんが電車に乗ると、席を立ってその場を離れていく人や、車両を移動する人がいます。そういう姿を見ると、障がいのある人に慣れていないんだな、いわゆる「健常者」の間に偏見という壁があるな、と感じるときがあります。

同じクラスに、ビックリすると大きな声を出す子がいるんだよ。それほど回数は多くないうえ、ぼくはずっと同じクラスだから驚かないけど、そういうシーンに慣れない人が、たまたまパニックに居合わせて「怖い」って思ってしまったのかな。

確かに、パニックで大きな声を出すケースもあります。でも、パニックはそれほど長く続かないことがほとんどです。声をかけすぎたり、何かしようと手出しをするとかえって落ち着かないことも多いので、私自身は、ご本人が気分を切り替えられるタイミングを待っていることが多いです。なかには、てんかんの発作を起こす人もいるので、そういう場面に居合わせた場合は救急車を呼んでほしいです。

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また、「つながる」くんがいう通り、普段の生活の中で障がいのある人を見かけることは少ないですよね。だからこそ、障がいのある人が地域でありのままいられるよう、積極的に外出するようにしています。

6.「バリア」解消の取り組み

レインボーハウス明石として、「地域でありのままいられる」ための取り組みをしていますか?

いまは新型コロナでお休みしていますが、以前は近隣の小学校の6年生と一緒に陶板制作をしたり、盆ダンスを踊ったりしていました。また、施設をあげてのお祭り「なないろ祭」を開催して地域の人に楽しんでもらったり、逆に地域のお祭りに招いていただき、踊りを披露しに行ったりしていました。最近では、ハロウィンで「トリックオアトリート!」とやってきた近隣の保育園児にお菓子を配りました。

いまは、地域にはたらきかける側になっている三枝さんですが、三枝さんが小さい頃にも障がいのある人と関りがありましたか?

小学校1年生から3年生の間、知的障がいのある子が同じ学年にいました。特に変わった子と感じた記憶もなく、ただ「身近にいた」だけなのですが、あの経験がいまにつながっているのかも知れません。

7.社会に変化をのぞむこと

社会に変わってほしいところはありますか?

私の働く施設では、利用者の定年がありません。いわゆる「健常者」は、定年したら旅行に行きたい、趣味に没頭したい、という次の目的がある人が多いですが、この施設で定年制度を設けると、行く当てがなくなってしまい人も多いです。

また、施設内での医療行為を行えず看取りができないので、せっかくこの施設で長く過ごしてもらっても、最期は他の場所で、となってしまうことが悩ましいです。障がいがある人の老後の過ごし方について、もっと選択肢があると良いなと思います。

三枝さんは、この仕事を始めて17年にもなったそう。今の福祉が昔と大きく変わったことは何でしょうか?

2003年に障がい者自立支援法という法律が施行され、利用者自身が自分で施設を選べるようになりました。また、虐待防止法や個人情報保護法といった様々な法律が施行されたため、法律の内容について、勉強しなくてはいけないことが増えました。

つながるくんコラム②

行ってみたよ!「アラジン」

レインボーハウス明石に隣接する喫茶「アラジン」のほかにも、毎週火曜日、木曜日には中央区役所の売店でもパンが買えるよ!お願いすれば出張販売もしてくれるみたい!連絡してみてね。アラジンでのパンの収益は、利用者さんのお給料になります。美味しく食べて、人の役に立てるなんて嬉しいね。

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レインボーハウス明石について

中央区立知的障害者生活支援施設。施設で生活する入所支援と、主に昼間の時間帯に利用できる通所支援を行っています。

入所部門 定員30人
通所部門 定員 就労移行支援:6人
就労継続支援A型(施設と雇用契約を結んで月給制で働く):10人、利用者の平均年齢:30歳程度
就労継続支援B型(施設との雇用契約は結ばず、作業した時間に応じて工賃を受け取る):10人利用者の平均年齢:40歳程度
生活介護:30人
※生活介護については施設入所支援の方が在籍しています。

つながるくんコラム③

「工賃」ってなに?

「工賃」は、作業所での作業時間に応じて受け取るお給料のようなものだって。月々いくら、という事業所との契約に基づいてお給料を受け取る形態は就労継続支援A型、作業時間に応じて工賃を受け取る形態を就労継続支援B型と分類するよ。工賃は、各都道府県ごとに定められる1時間当たりの最低賃金制度の規制から除外されているため、事業所ごとに受け取れる額が異なるよ。

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